2019年度 研究事業成果集 臨床研究中核病院の機能を活用した若手研究者によるプロトコール作成研究

ARO部門の支援で、いち早く実用化へ

革新的医療シーズ実用化研究事業では、革新的医療技術創出拠点プロジェクトにおいて発掘・育成されたシーズ等を、臨床研究中核病院の機能を最大限に活用していち早く実用化に繋げる事により、基礎から実用化までシームレスに一貫した研究開発を推進しています。特に臨床研究中核病院の機能を活用した若手研究者によるプロトコール作成研究では、若手研究者が臨床試験実施までの手順やスキル等を習得することで、革新的なアカデミア発のシーズをいち早く国民に還元できるよう支援しています。

取り組み

革新的医療シーズ実用化研究事業では、「アカデミア発シーズの基礎から臨床への一気通貫の支援スキーム」を活用した研究開発を推進しています。

革新的医療技術創出拠点*1等において発掘・育成されたシーズを対象として、臨床研究中核病院*2の機能を最大限に活用することで、効率的かつ効果的な研究開発を推進し、革新的な医療シーズをいち早く実用化に繋げることを目指しています。

そのために、それらを担う人材育成も重要な取り組みと位置付けています。そこで、若手研究者*3が臨床研究中核病院の医薬品開発等を支援する組織(Academic Research Organization:ARO)の支援を受けて臨床研究実施計画書(以下、プロトコール)を作成する研究開発課題を実施しています(図1、2)。プロトコール作成の過程を通じて、若手研究者自らが臨床試験実施までの手順、スキル等を習得することを目指しています。

図1 臨床研究中核病院ARO部門の様々な支援
図2 臨床研究中核病院のARO部門から受けた具体的支援(例)
*1 革新的医療技術創出拠点
橋渡し研究支援拠点10機関及び下記に示す臨床研究中核病院12病院
*2 臨床研究中核病院
国立がん研究センター中央病院、東北大学病院、大阪大学医学部附属病院、国立がん研究センター東病院、名古屋大学医学部附属病院、九州大学病院、東京大学医学部附属病院、慶應義塾大学病院、千葉大学医学部附属病院、京都大学医学部附属病院、岡山大学病院、北海道大学病院
*3 若手研究者
博士等の学位を有する者又はこれと同等以上の研究能力があると認められる者。ただし、医師については、博士の学位の有無に関わらず医学部卒業後2年以上を経過した者年齢が、男性の場合は満40歳未満の者、女性の場合は満43歳未満の者、又は博士号取得後10年未満の者。ただし、産前・産後休業又は育児休業をとった者は、満40歳未満又は満43歳未満の制限に、その日数を加算することができる。

成果

本事業は2018年度から実施しており、初年度は7課題採択されました。また翌年の2019年度には6課題採択されました。採択された13課題のうち3課題(23%)は臨床研究中核病院以外の施設に所属する研究者であり、臨床研究中核病院以外の研究者も、臨床研究中核病院ARO部門の支援を受ける機会を得ています。

また、採択された課題のうち、2018年度では4課題、2019年度では3課題が作成したプロトコールを用いた臨床試験実施を目指し、AMEDの橋渡し研究戦略的推進プログラムや他事業で採択されています。若手研究者が臨床研究中核病院ARO部門の支援を受け作成したプロトコールが、実用化に向けた次のステップに進むきっかけとなっています(図3)。

図3 革新的医療シーズ実用化研究事業の成果

展望

臨床研究中核病院の機能を最大限活用し若手研究者を支援することで、将来の医療・医学に貢献する優れた研究者を育成、臨床研究の質の向上が期待されます。本事業では、革新的なアカデミア発のシーズを国民への利益として広く還元することができるよう目指していきます。

最終更新日 令和3年8月13日