2019年度 研究事業成果集 バイオバンクジャパン及び東北メディカル・メガバンク計画における研究利活用向上の取り組み

バイオバンク生体試料・情報の更なる充実化

国内3大バイオバンクと位置付けられているバイオバンク・ジャパン(以下BBJ)と東北メディカル・メガバンク計画(以下TMM)において更なる研究利活用向上を目指し、バイオバンク生体試料・情報の充実を図る活動を進めました。BBJではコントロールやスクリーニング目的としても利用可能な少量の血清パネル試料(100μL単位)の分譲を開始しました。TMMでは長期健康調査によって得られた約6万7千人分の生体試料・情報の分譲を開始しました。

取り組み

BBJの分譲対象試料(DNA・血清)の中で、血清提供数はそれほど多い状況ではありませんでした。血清の研究利用を促進するために1検体最大10本に分注した試料(血清パネル)について、これまでより、安価に少量ずつの試料分譲を開始することで更なる利活用向上を目指しました。

TMMは、長期健康調査によって得られた約6万7千人分の生体試料・情報を始め多くの試料・情報の分譲を2015年から開始しています。分譲対象となるのは、当計画の地域住民コホート調査に特定健診共同参加型で参加された方全員のベースライン調査の生体試料とデータになります。

成果

BBJは少量分譲の血清パネルとして、がん19疾患、肝4疾患、循環器10疾患、呼吸器4疾患、内分泌・アレルギー7疾患、婦人科6疾患、全4疾患などを分譲開始しました(図1)。費用も通常に比べ安価に設定しました(通常一万円/本に対し三千円、学術機関は半額)。

図1 BBJ血清パネルの分譲開始(55疾患)2019.4より

また、BBJ分譲対象のゲノムデータは、第1コホート18.2万人分、約90万箇所のSNP情報、全ゲノムシークエンス1,000人分、遺伝性乳がん関連遺伝子シークエンス30,000人分をNBDCで公開し、さらに心筋梗塞1,800人、認知症200人の全ゲノムシークエンスデータをNBDC制限共有サーバーに登録をしました。公開データはNBDCでの審査手続きの上、利用が可能で、ゲノムデータ利用を促進させています。

TMMは、地域住民コホートのベースライン調査のうち、2013年度から2015年度に主に特定健康診査会場で調査にご協力いただいた方の試料(DNA、血漿、血清、尿)・調査票情報・検体(血液・尿)検査情報・特定健康診査情報の分譲を開始しました(図2)。喫煙・飲酒・身体活動等の基本情報に加え、こころの健康、睡眠、被災の影響、特定健康診査項目、血液・尿のデータが含まれています。この情報は国内の疫学研究としても最大規模であり、これらの大規模データを広く活用いただくことは我が国の疫学研究の発展に貢献すると考えています。また、TMMは長期健康調査によって得られた約6.7万人分の生体試料・情報に加え、以下の生体試料・情報も2019年に分譲開始しました。

図2 TMM地域住民コホート分譲内容
  • MRI解析対象者(約4,300人)の脳画像情報を含む生体試料・情報
  • AMED先端ゲノム研究開発(GRIFIN)の研究開発課題によるジャポニカアレイおよびメタボローム解析情報(約9,600人分)
  • 岩手県内設置の5会場で生理機能検査を含む健康調査参加者の試料(DNA、血漿、血清、尿)と情報、102人の全ゲノム・エピゲノム・トランスクリプトーム情報(約8,300人)
  • 約2.3万人のSNPアレイ解析済の対象者の試料(DNA、血漿、血清、尿)および情報(約2.3万人)
  • 日本人ヒト全ゲノム解析に基づく高精度の住民ゲノムパネル(3.5KJPNv2)の対象者の試料(DNA、血漿、血清、尿)および情報(約3,300人)
  • コホート調査で得られた家系等を含む情報(日本初)。分譲対象は、三世代コホート調査によって得られたもので、7人家族を形成する三世代(児を中心にみた父母・祖父母の7人により構成される家系)、158組家系(1,107人)になり、家系、調査票(生活)、検体(血液・尿)検査、全ゲノム解析に関する情報

展望

今後もBBJ及びTMMは我が国を代表するバイオバンクとして生体試料・情報を充実させるとともに、利活用向上に向けた取組みを加速させることにより、我が国の医学研究の発展に貢献することが期待されます。

最終更新日 令和3年8月13日