AMEDシンポジウム2019開催レポート AMEDシンポジウム2019開催レポート(1日目):基調講演

(抄録)

第2期健康・医療戦略に向けて

城 克文氏(内閣官房健康・医療戦略室 次長)

はじめに―健康寿命延伸の意義と課題―

基調講演の様子

日本の総人口を見ると、2010年でピークを迎え100年後には2010年の半分くらいになると考えられているほか、高齢化率については40%を超えると推計されています。

また、我が国の2016年(平成28年)の平均寿命と健康寿命の間、つまり日常生活に支障を来す期間は、男性で8.84年、女性で12.35年となっています。この生活に支障を来す期間をいかに減らすかということが大きな課題となっています。

第1期 健康・医療戦略の進捗と課題


図1 第1期医療分野研究開発推進計画の概要
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2013年(平成25年)、日本再興戦略において「「健康寿命」の延伸」が謳われ、医療分野の研究開発の司令塔機能を創設することとされました。これは、例えば、米国の国立衛生研究所(NIH)のように自ら資金配分と研究を行うような機関を目指すという議論もありましたが、わが国では大学、国立の研究機関、民間企業などさまざまな主体が研究を行っているという状況の中で、オールジャパンとして大きな機能を発揮できる体制は何かということが考えられてきました。

2014年(平成26年)に健康・医療戦略推進法が成立し、同法に基づく第1期健康・医療戦略が5年前にスタートしました。

この戦略ですが、世界に先駆けて超高齢社会を迎える我が国において、健康長寿社会を形成していくことが重要であるとしています。そのためには、医療分野の研究開発について基礎から実用化まで一貫した環境整備や成果を普及していくことと、健康長寿社会の形成に資する新たな産業活動の創出および活性化を進めていくこと、海外展開を促進していくことを2つの大きな柱としています。

医療分野の研究開発は幅の広い取組になりますが、実用化の方向性が見えている研究をいかに政府が支援し、民間における商業化につなげていくかということを考えて、現在の仕組みが出来上がっています。

具体的には、これまで文部科学省、厚生労働省、経済産業省がそれぞれの観点から実施してきた研究費を、医療の分野では一度司令塔となる日本医療研究開発機構(AMED)を創設して一元化し、研究費のワンストップサービス化や基礎から実用化まで一貫した研究管理といった、求められる役割を果たされてきたということです(図1)。

第2期 健康・医療戦略の方向性


図2 第2期 健康・医療戦略(案)
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第1期では9つのプロジェクト(5つの横断型と4つの疾患領域対応型)を推進してきました。しかしながら、横断的なプロジェクトと疾患別のプロジェクトが併存している中で、類似の研究課題の重複やプロジェクト間の情報共有が十分でないといった課題が出てきました。これを踏まえて、治療手段の分類としてモダリティを位置づけ、医薬品、医療機器・ヘルスケア、再生・細胞治療・遺伝子治療、ゲノム・データ基盤などといった疾患横断的な形でプロジェクトをたてていくという方向性を第2期に向けて検討しているという状況です。

第2期健康・医療戦略は2020年4月に開始されます。これはまだ「(案)」としていますが、我々の考えるポイントを紹介します(図2)。

まず、基本方針としてAMEDを核として基礎研究から実用化まで一貫した研究開発ができるようにすることが一つの柱だと考えています。二つ目の柱として、新産業創出及び国際展開の促進を進めていくことが挙げられます。

その中で研究開発の推進については、6つの統合プロジェクト(医薬品、医療機器・ヘルスケア、再生・細胞医療・遺伝子治療、ゲノム・データ基盤、疾患基礎研究、シーズ開発・研究基盤)を推進していきます。そして、医療分野の実用化に向けた研究開発では、健康寿命延伸を意識し、予防、診断、治療、予後・QOLの向上を開発目的として明確にした研究を重視していきたいと考えています。

このほか政府全体で取り組むべき分野として、認知症の対策の推進や薬剤耐性対策の推進を三つ目の柱として位置付けています。

特に、第一の柱となる研究開発については、医療分野研究開発推進計画として取りまとめていくこととしています。

講演動画

当日行われた講演の様子を公開しました。以下のリンクをクリックすると、動画ページへ移動します。
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最終更新日 令和3年1月13日