AMEDシンポジウム2019開催レポート AMEDシンポジウム2019開催レポート(2日目):講演

(抄録)

AMEDの5年間の歩み

梶尾 雅宏(AMED 理事)

AMED 5年の取り組み

講演の様子

図1 日本医療研究開発機構(AMED)を活用した医療分野の研究開発等の推進体制
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世界に先駆け、超高齢化社会を迎えた我が国は、世界最先端の医療技術・サービスの早期実現を図り、国民がさらに健康な生活と長寿を享受できる社会の構築が重要な課題となっています。世界最先端の医療を受けられる社会を実現するために、健康・医療戦略推進本部の下で各府省の関連予算を一元化して、戦略的かつ重点的に配分を行うため、日本医療研究開発機構法が制定され、平成27年にAMEDが発足しました。医療研究開発関連予算の集約と一体的な実行、基礎から実用化までの一貫した研究管理を推進しています(図1)。

機構の取組の一つに若手研究者支援があります。若手研究者の人材育成を目的に、事業や課題に若手育成枠を設けており、事業数では平成27年度の7事業から平成30年度は24事業に設定し、課題数では、平成27年度の39件から平成30年度には214件と5.5倍にまで増加させました。

次にAMED研究開発マネジメントシステム(AMS)について紹介します。これは、さまざまなファンディング情報とその成果を蓄積した内部データベースであり、採択された研究活動に関するデータを蓄積しつつ、適宜カスタマイズをしてきています。公開情報の部分を整理して、AMEDのホームページからアクセス可能なデータベース、AMEDfindを整備しており、ぜひ使ってみていただければと思います。(図2)

AMED 5年の成果


図2 AMED研究開発マネジメントシステム(AMS)の整備と運用
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図3 各プロジェクトにおける成果目標(KPI)の達成状況(医薬品開発)
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AMEDの第一期中長期目標期間においては、9つの統合プロジェクト(5つの横断型、4つの疾患領域対応型)ごとに成果目標(KPI)が設定されている中で、事業を推進してきました。

例えば、医薬品開発に関しては、企業への導出件数を2020年までに5件という達成目標がありましたが、政府の創薬支援ネットワークに関する支援基盤の構築や強化を図ったことなどにより、2019年度末の時点で162件という大幅な企業への導出に成功しました(図3)。

医療機器開発に関しては、産学官の協力体制のもと、画像診断、低侵襲治療、手術支援ロボット、人工組織臓器などの研究開発の実用化に取り組み、4件が医師主導治験に移行または終了し、実用化に近づいています。また、医工連携により343件の課題を進め、国内64製品、海外15製品の計79製品が市場導入されています。

再生医療プロジェクトからは、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの難病に対してiPS細胞を用いた医師主導治験の開始や、ヒトiPS細胞由来の角膜移植手術が実施されるなど、顕著な成果が生まれ、全体のKPI 35件に対して42件が臨床研究または治験段階に移行しています。

こうした研究開発の成果を最大化させるためには、実用化に向けた支援体制の構築が不可欠です。そこで、AMEDの知的財産コンサルタントや全国8ブロックに配置した知財リエゾンが一体となって、全国で相談窓口を設けたり、アカデミア発のシーズと企業のニーズの早期マッチングシステム「AMEDぷらっと」を開設したりするなど、実用化に向けた支援を行っています。

医療分野の研究開発を進める上では、国際連携も重要な課題であり、AMEDでは国際的な共同研究開発を展開するために設立以降、米国、英国、シンガポール、オーストラリア、スペイン、リトアニアの6カ国と研究協力に関する覚書(MOC)に署名し、11の国際コンソーシアムに参加をしています。さらに、25カ国で共同研究等の研究開発を推進し、8事業で52課題が進行中です。

おわりに

AMEDの発足から5年間の取り組みについて紹介してきましたが、まだ5年目にすぎません。これからさらに機能発揮をして、成果の最大化、ミッションの達成に向けて強化していきたいと考えています。

AMEDに求められている役割は、集約化された医療分野の研究開発予算を効果的・効率的に配分し、基礎から実用化まで切れ目のない研究開発を実施することです。そして、得られた成果を一刻も早く、患者さんやご家族のもとにお届けすることにあると考えています。

これからの超高齢化社会、人生100年時代を見据え、2040年には老年人口がピークを迎えるといわれる人口構成へと大きく遷移していく中で、21世紀型の人口構成に対応した医療研究開発を推進していくことが、AMEDの使命であると考えています。

講演動画

当日行われた講演の様子を公開しました。以下のリンクをクリックすると、動画ページへ移動します。
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AMEDシンポジウム開催レポート2019
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最終更新日 令和3年1月13日