プレスリリース 細胞に生えている「毛」の先端が千切れる現象を発見

平成29年1月13日プレスリリース

国立大学法人浜松医科大学
国立研究開発法人日本医療研究開発機構

概要

浜松医科大学細胞分子解剖学講座の池上浩司准教授、米国ジョンズ・ホプキンス大学細胞生物学部の井上尊生准教授らの研究グループは、からだの中の細胞に生えている「一次繊毛」と呼ばれるミクロの毛を解析し、毛の先端が千切れて細胞の外に放出される現象を発見しました。また、細胞の外に放出された毛の先端部分に含まれているタンパク質を高精度に検出する方法を確立しました。さらに、毛の先端が千切れる現象の役割も明らかにしました。今後、一次繊毛の異常が原因で起きる病気の理解や、千切れて細胞の外に放出された一次繊毛の先端部分の利用に関する新しい技術開発につながることが期待されます。

これらの成果は、米国科学雑誌「Cell(セル)」に、日本時間1月13日(金)午前2時に公表されました。

研究の背景

私たちヒトのからだを作っている細胞には「一次繊毛」と呼ばれる長さ数ミクロンの非常に小さな毛が生えています(参考図1)。細胞に生えているこのミクロの毛はからだの形(からだの右左や指の数)を決めたり、からだの中のさまざまな臓器の働きを正常に保ったりする重要な働きを持っています。一次繊毛の形や働きがおかしくなると、からだの中の様々な臓器に異常が出ます。これまで一次繊毛が何をしているかについては世界中の研究者が盛んに研究してきましたが、細胞を長時間観察した時に起こる一次繊毛の形の変化、そのメカニズムや意義については不明な点が残っていました。

研究の成果

今回研究グループは、細胞を生きたまま観察するタイムラプスイメージング技術を用い、細胞の分裂を引き起こす刺激により細胞の表面に生えている一次繊毛の先端が脂質膜でできた小さな粒として千切れる現象を発見しました(参考図2)。また、近年目覚ましく発展しているゲノム編集技術と質量分析技術を駆使し、一次繊毛から千切れて細胞の外に放出された小さな脂質膜の粒に含まれているタンパク質を検出し同定することに成功しました。さらに、一次繊毛の先端が千切れるメカニズムの一部を明らかにし、先端が千切れる現象を阻害する方法を開発し、一次繊毛の先端が千切れることが一次繊毛の縮小と細胞の分裂をオンにするきっかけになっていることを明らかにしました。

今後の展開

今後、今回同定された一次繊毛から千切れて放出された脂質膜の粒に含まれるタンパク質の働きを解析することで、放出された脂質膜の粒が担う役割も明らかになると期待しています。その結果、一次繊毛の形や機能の異常によって起きている一部の病気の理解が進むことも期待されます。さらに、薬や光で細胞を操作して粒に特定のタンパク質や物質を集めたり、同じく薬や光で一次繊毛の先端が千切れる現象を操作したりして、放出された脂質膜の粒をマイクロカプセルとして利用するなどの新しい技術開発につながることが期待されます。

発表雑誌

Cell(セル)

論文タイトル

Dynamic Remodeling of Membrane Composition Drives Cell Cycle through Primary Cilia Excision

著者

Siew Cheng Phua*, Shuhei Chiba, Masako Suzuki, Emily Su, Elle Roberson, Ganesh V. Pusapati, Mitsutoshi Setou, Rajat Rohatgi, Jeremy Reiter, Koji Ikegami*, Takanari Inoue*

研究グループ

本研究は、浜松医科大学と米国ジョンズ・ホプキンス大学が主たる研究機関となり、大阪大学、米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校、米国スタンフォード大学との国際共同研究であり、新学術領域研究「シリア・中心体系」(領域代表:濱田博司)における研究課題「CRISPRシステムを用いた一次シリア情報発信の実証と分子基盤解析」(研究代表者:池上 浩司)および国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の革新的先端研究開発支援事業(AMED-CREST)「画期的医薬品等の創出をめざす脂質の生理活性と機能の解明」研究開発領域(研究開発総括:横山 信治)における研究開発課題「光による脂質の同定制御観察技術すなわちオプトリピドミクスの創生」(研究開発代表者:瀬藤 光利)の一環として行われました。

お問い合わせ先

研究に関すること

浜松医科大学 細胞分子解剖学講座(〒431-3192 浜松市東区半田山1-20-1)
准教授 池上浩司
Tel:053-435-2471/Fax:053-435-2468
E-mail:kikegami“AT”hama-med.ac.jp

Johns Hopkins University, Department of Cell Biology
855 N. Wolfe St., 453 Rangos, Baltimore, MD 21205, USA
准教授 井上尊生
Tel:1-443-298-7668/Fax:1-443-287-8375
E-mail:jctinoue“AT”jhmi.edu

事業に関すること

国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)
戦略推進部 研究企画課
Tel:03-6870-2224/Fax:03-6870-2243
E-mail:kenkyuk-ask“AT”amed.go.jp

※E-mailは上記アドレス“AT”の部分を@に変えてください。

参考図

説明図・1枚目(説明は本文中に記載)
図1:細胞に生えている一次繊毛(赤)(水色は細胞の核を示しています)

説明図・2枚目(説明は本文中に記載)
図2:一次繊毛の先端が千切れる瞬間(時間表記は「分:秒」)

最終更新日 平成29年1月13日