プレスリリース 肝臓内の細胞間接着・接触が糖代謝異常を引き起こすメカニズムを発見―肥満を原因とする糖尿病に対する新しい治療標的の可能性―
プレスリリース
国立大学法人東京医科歯科大学
国立大学法人九州大学
国立研究開発法人日本医療研究開発機構
ポイント
- 肥満になると、肝臓には好中球や単球などの白血球が集まり、血糖値の上昇に関与することが報告されていましたが、その詳細なメカニズムは不明でした。
- 本研究では、肥満マウスの肝臓で好中球や単球がVLA-4を介して肝類洞内皮細胞に接着して肝臓内に浸潤すること、浸潤した白血球が肝細胞と接触することにより、肝細胞のNotchシグナルを介して糖代謝異常を惹起することを明らかにしました。
- この成果は、肥満が原因となる糖代謝異常において肝臓内の細胞間接着・接触が重要な役割を果たしていることを示すものであり、新しい糖尿病治療法の開発へとつながる可能性があります。
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子内分泌代謝学分野および九州大学大学院医学研究院病態制御内科学分野(第三内科)の小川佳宏教授と東京医科歯科大学医学部附属病院の土屋恭一郎助教、宮地康高大学院生らの研究グループは、同大学院医歯学総合研究科先進倫理医科学開発学分野、大阪大学、鶴見大学との共同研究で、肝臓における新たな糖代謝制御機構を発見しました。本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構 革新的先端研究開発支援事業(AMED-CREST)の研究開発領域「生体恒常性維持・変容・破綻機構のネットワーク的理解に基づく最適医療実現のための技術創出」(研究開発総括:永井 良三)※における研究開発課題「細胞間相互作用と臓器代謝ネットワークの破綻による組織線維化の制御機構の解明と医学応用」(研究開発代表者:小川 佳宏)の一環で行われました。また、文部科学省科学研究費補助金ならびに上原生命科学財団、MSD生命科学財団、日本応用酵素協会、日本糖尿病協会、日本糖尿病学会の支援も受けており、その研究成果は、国際科学誌Cell Reports(セル リポーツ)に、2017年3月14日午後0時(米国東部時間)にオンライン版で発表されます。
※本研究開発領域は、平成27年4月の日本医療研究開発機構の発足に伴い、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)より移管されています。
研究の背景
研究成果の概要

肥満マウスと比較して肝類洞(赤)の壁には顆粒球(緑)が多数接着している。
研究成果の意義

白血球とLSECの接着、白血球と肝細胞の接触を介した全く新しい肝臓の糖代謝制御機構が明らかとなった。
用語解説
- (注1)インスリン抵抗性:
- 血糖値を下げるホルモンであるインスリン対する感受性が低下し、インスリンの作用が十分に発揮できない状態
- (注2)顆粒球:
- 白血球の分画のひとつ。主に好中球や好酸球などを含む。
- (注3)EGFP:
- 緑色を発する蛍光タンパクのひとつ。
- (注4)生体イメージング:
- 生きた状態のまま組織・臓器中の細胞の動態をリアルタイムに解析する技術。
- (注5)ケモカイン:
- 白血球の遊走を促進するタンパクの総称。
- (注6)接着因子:
- 細胞同士などの接着を担う分子の総称。特定のリガンドとの結合により結合が促進する。
お問い合わせ先
研究に関すること
分子内分泌代謝学分野 小川 佳宏(おがわ よしひろ)
TEL:03-5803-5966/FAX:03-5803-0261
E-mail:ogawa.mem“AT”tmd.ac.jp
九州大学大学院 医学研究院病態制御内科学分野(第三内科)
TEL: 092-642-5275/FAX: 092-642-5297
E-mail:yogawa“AT”intmed3.med.kyushu-u.ac.jp
東京医科歯科大学医学部附属病院
糖尿病・内分泌・代謝内科 土屋 恭一郎(つちや きょういちろう)
TEL:03-5803-5216/FAX:03-5803-0172
E-mail:ktsuchiya.mem“AT”tmd.ac.jp
報道に関すること
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※E-mailは上記アドレス“AT”の部分を@に変えてください。
掲載日 平成29年3月15日
最終更新日 平成29年3月15日