成果情報 鈴木和男博士、河内正治博士、中島典子博士がベトナムのMedal For People’s Healthを受賞

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AMEDが支援中の研究者、鈴木和男博士、河内正治博士、中島典子博士が、平成28年11月3日、ベトナムの医療発展に多大な貢献をした専門家にベトナム保健省から授与される栄誉ある賞「Medal For People’s Health」を受賞しました。
写真授賞式の様子(写真左から4人目:鈴木博士、6人目:中島博士、7人目:河内博士)

3氏は平成18年から始まった高病原性鳥インフルエンザとその死因となる急性呼吸速迫症候群(ARDS)に関するベトナム国立小児病院との連携研究※1の歴代研究グループの代表者で、10年以上にわたる研究開発活動がベトナム政府から高く評価されました。現在、この活動はAMED「医療分野国際科学技術共同研究開発推進事業(e-ASIA共同研究プログラム)」及び「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業」で支援しています。

鈴木和男博士(帝京大学 アジア国際感染症制御研究所 所長・教授)は、ベトナム国立小児病院病理部に保管してあった病理標本ブロックを使ったインフルエンザの重症化の病態解明を進めるとともに、インフルエンザの重症化にかかわるサイトカイン・ケモカインの微量免疫学的測定法を検査室に導入・指導し、病院の免疫学・生化学及び分子生物学的検査の高度技術化を推進しました。その後、ベトナム国立小児病院Thuy研究員を千葉大学大学院医学研究院に迎え「病態にかかわるサイトカインの役割」を明らかにすることで、博士号取得にむけて指導しました。Thuy博士は、現在AMED=e-ASIAのベトナム側プロジェクトリーダーとして活躍しています。

河内正治博士(帝京大学医学部 麻酔科学講座 教授)は、高病原性インフルエンザの臨床的特徴を明らかにし、その主な死因が重症ARDSであることを明らかにしました。また、大量γグロブリン療法、体外式膜型人工肺(ECMO: Extracorporeal membrane oxygenation)などの新しい治療法をいち早く導入し、ベトナム国立小児病院の治療技術の向上を支援してきました。

中島典子博士(国立感染症研究所 感染病理部 室長)は、高病原性インフルエンザ及び重症呼吸器感染症の病因・病態解明に必要な分子生物学的・病理学的手法をベトナム国立小児病院に導入し、現地で不明感染症の分子病理診断ができるような体制を整えてきました。

国際医療連携には言葉や風習の違いなどの大きな壁があり、特に臨床研究の分野で良好な関係を築くことは困難とされています。これらの研究グループでは、臨床医と研究者が連携して現地研究に参加し、ベトナム国立小児病院と非常に良好な関係を10年以上にわたって継続してきました。現在も引き続き連携研究を遂行中であり、今後もさらなる成果が得られることが期待されます。

※1:平成18年度 厚生労働科学特別研究事業「インフルエンザ(H5N1)の死因となる急性肺障害(ARDS)の病態解析とモデル動物の作成に関する研究」

受賞コメント

顔写真「2005年H5N1鳥インフルエンザの調査でベトナム訪問後、11年間にわたり国立小児病院と厚生労働省:厚生労働科学研究費、文部科学省・日本学術振興会(JSPS)、科学技術振興機構(JST)・AMED:e-ASIA=インフルエンザおよび肺感染症研究での国際研究の支援により進めてきたことで評価され、ベトナム国民の健康に役立ったことをうれしく思います。同時に、Liem前院長、Hai現院長、Dien現副院長及びThuy研究部長に感謝します。今後も、ベトナムから帝京大学大学院医学研究科に、AMEDと連携した文部科学省・国費留学生として迎えている大学院生の博士号取得に尽力するとともに、ベトナム国民の健康に寄与したいと考えております。(鈴木和男)」

顔写真「2006年の特別研究から数えますと、今年で11年目となる高病原性鳥インフルエンザの研究班ですが、ベトナム国立小児病院との共同研究がベトナム政府にも評価されて、歴代班長に対してこのような名誉ある賞をいただけたのだと思います。継続は力なり、でしょうか。これを励みに、今後もさらなる連携研究を推進していきたいと考えます。日本国政府の研究援助に感謝いたします。(河内正治)」

顔写真「初めてベトナムを訪問した際、ベトナムの小児医療に貢献できればと強く感じたことが思い出されます。このたびベトナム保健省から名誉ある賞をいただき、長年に渡り分担研究者らと遂行してきたことが、ベトナム国に認められたことを大変嬉しく思います。班員の先生方、研究班を支援してくださった厚生労働省ならびにAMED関係者の方々に感謝申し上げます。ますます精進してまいりたいと気持ちを新たにしております。(中島典子)」

最終更新日 平成28年12月7日