2017年度 研究事業成果集 スマート治療室、2019年度の事業化を目指した「スタンダード版」が完成

スマート治療室、2019年度の事業化を目指した「スタンダード版」が完成

産学連携部 医療機器研究課

信州大学医学部附属病院で2018年7月から臨床研究を開始

AMEDが支援する次世代の手術室「スマート治療室」は、事業化に向けて研究開発が進んでいます。2018年3月、信州大学にスマート治療室スタンダード版が完成、7月から臨床研究を開始しました。IoTにより、手術室内のさまざまな医療機器をネットワークでつなぐことで、術中に必要な医療データの質を高め、手術がより効率的・安全に行えるようになることが期待されます。

■信州大学のスマート治療室(スタンダード版)

取り組み

手術室ではさまざまな医療機器・設備が使用されていますが、機器によってメーカーや仕様が異なるため、機器同士のデータ連携はほとんど行われていません。現場では、膨大な医療データを医師やスタッフが限られた時間内に判断し治療を行っています。AMEDはこのような治療の現場でIoTを活用して各種医療機器・設備をネットワークで接続・連携させ、手術の進行や患者さんの状況などの情報を瞬時に時系列をそろえて整理統合し、医師やスタッフ間で共有する「スマート治療室」の開発を世界に先駆けて進めています。東京女子医科大学の村垣善浩教授を中心に広島大学、信州大学など5大学、デンソー、パイオニア、日立製作所など企業11社が参加した産学連携プロジェクトです。2014年度からの5年間で要素技術や機器のパッケージ化、ネットワーク化、新規ロボット医療機器などの開発を進めています。2016年度に完成した広島大学のベーシック版、信州大学のスタンダード版、東京女子医科大学のハイパー版へとステップアップしながら事業化を目指しています。

成果

2018年3月、信州大学医学部附属病院にスタンダード版が完成しました。2016年度に完成した広島大学のベーシック版をベースにネットワーク機能を強化。術中MRIやMRI対応手術台、手術ナビゲーションシステムなど17種類の医療・非医療機器を、独自に開発した治療室インターフェースOPeLiNK®に接続、各種医療情報を「時系列の治療記録」として収集・表示します。医療スタッフはモニターで情報を共有でき、手術の効率化や安全性の向上が期待できます。また、治療室の外から手術中の様子やデータを共有することも可能なため、離れた場所にいるベテラン医師のアドバイスをリアルタイムで得ることもできます。2019年度の事業化を目指し、これらを実際に検証するため、脳腫瘍に関する臨床研究が7月からスタートしました。

展望

広島大学のスマート治療室では、整形外科の骨腫瘍手術が行われるなど脳外科以外の領域にも活用が広がっています。
2019年度中に臨床試験をスタートする計画の東京女子医科大学のハイパー版は、従来のスマート治療室の機能に加え、ロボット医療機器、新規精密誘導治療などの新しい技術を導入します。血管造影撮影が可能なアンギオ装置を導入し、ロボット手術台で術中MRIとの座標情報の統合を行うなど、腫瘍治療と血管治療を融合させた新しい治療法の開発にも取り組んでいきます。

最終更新日 平成30年11月15日