2018年度 研究事業成果集 画像関連データベースおよび共通プラットフォーム構築の研究を推進

多様な臨床画像を用いた人工知能(AI)プロトタイプを開発

AMEDでは、情報通信技術(ICT)を臨床の現場で利活用するための基盤の構築や、人工知能(AI)を開発する研究開発事業を支援しています。その中で、診療画像に関係する学会と国立情報学研究所の共同研究で、診療画像の大規模データベース構築、AI開発のための共通プラットフォーム構築など、持続可能なAI開発へ向けた研究が行われています。診療画像を用いた診断支援は、厚生労働省で2017年に開催された「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」においても、AI開発を進めるべき重点領域に選定されており、日本の医療技術の強みが発揮できる領域として期待されています。

取り組み

ディープラーニングを用いたAI開発については医療分野において注目度が高まっています。特に診療画像を用いた診断支援AIについては、海外の大手企業がその開発に乗り出し、2018年度には日本でも初めて医療機器としての承認を得るなど、世界中で激しい競争が繰り広げられています。

本研究では6学会(日本医学放射線学会、日本消化器内視鏡学会、日本病理学会、日本眼科学会、日本超音波医学会、日本皮膚科学会)のデータベースを基盤とし、国立情報学研究所の技術を用いて「AI開発のための共通プラットフォーム構築」を目指しています。これまでに多くのAIプロトタイプが開発され、2018年度より実用化へ向け一層の促進が期待されています。

また、この共通プラットフォームにおいては、AI開発のための情報・技術の共有だけでなく、複数の医療機関による情報共有、地域医療支援のための社会実装研究、プロトコールの標準化など、学会横断的な共通課題についても共同で取り組む体制も構築されつつあります(図1)。

今後データシェアリングや産官学連携・医工連携についても本プラットフォームが促進的な役割を果たすことで、AMEDが目指す“研究成果を一刻も早く患者さんへ還元”を達成できると考えています。

図1 AI等を活用した先制医療・予防医療への取り組み

成果

①各学会のデータベース基盤の構築

AI等開発基盤の利活用を見据え、デジタル化された画像データを一定の標準形式で大規模に収集するために、「データベース間の情報連携を可能にするためのデータ収集方法の標準化」「将来的にも継続して質の担保されたデータを収集する体制の構築」「匿名化や倫理に関する課題抽出と解決法の提示」の研究を進めてきました。6学会それぞれにデータベース基盤が構築され、集積された画像データを用いたさまざまなAIプロトタイプの開発を進めています(図2)。

図2 臨床画像情報基盤の全体像

②AI開発基盤の構築

専門医とAI専門家が開発すべきAIについて「対象疾患とその特徴」「AIのタスク(診断補助・治療方針の提案・鑑別等)」「必要な付帯情報(診断名・検査値・他画像データ等)」「症例の抽出方法」の点について密なコミュニケーションを行うことで、現場のニーズに即したAI開発が進められています。また、AI開発に必要な教師データについて、将来的にも継続して質の担保されたデータを収集する体制作づくりやアプリケーションの開発を進めています。具体的
なAIプロトタイプとしては、胃生検病理診断AIエンジン(日本病理学会)、胃内の部位認識による診療逸脱監視AIプロトタイプ(日本消化器内視鏡学会)、眼底写真を用いた緑内障鑑別AIプロトタイプ(日本眼科学会)などが開発されています。

展望

これまでに構築したデータベース基盤および共通プラットフォームを用いて、学会として取り組むべきさまざまなAI関連研究を推進します。

また、上記の成果に基づき企業等へのデータの有償提供や医療機関の業務を効率化する取り組みなどを通して、将来的な現場へのインセンティブを付与するなど、継続性のあるエコシステムを構築することが望まれ各学会において検討が進められます。

最終更新日 令和2年6月23日