AMEDシンポジウム2017開催レポート AMEDシンポジウム2017開催レポート:パネルディスカッション「AMEDに期待すること」(2)

「AMEDに期待すること」

モデレータ
泉 陽子(AMED 統括役)
パネリスト
畑中 好彦氏(日本製薬工業協会会長)
昌子 久仁子氏(テルモ株式会社取締役顧問)
小林 信秋氏(認定NPO法人難病のこども支援全国ネットワーク会長)
東嶋 和子氏(科学ジャーナリスト)

ディスカッション

写真(泉統括役)
写真(ディスカッションの様子)

 それではここからは、今の4人の方々のお話をもとに、AMEDに期待される役割のポイントを幾つか抽出して、議論を深めていきたいと思います。

まず一つ目、各省庁、アカデミア、企業、国民、患者、こうしたさまざまな関係者の対話の促進のかぎとして、AMEDが存在できるか。あるいは国民の皆様方に、このAMEDの活動あるいは医療研究開発について、どのように啓発を行っていくべきかについてお話を伺います。

例えばがんなどの疾病に着目すると、AMED設立前は複数の省庁から予算配分されていたために、全体としてどのような研究が進められているのか、分かりづらいところがございました。また、アカデミアと企業、あるいは企業同士の連携についても、AMEDが核となって、より実際的な展開ができるのではないかと考えているところでございます。

こうした各層の関係者の方々との対話、連携の促進におけるAMEDの役割について、さらにもう一歩、御意見をいただきたいと思います。

畑中 先ほどオープンイノベーションの重要性についてお話しましたが、AMEDには個別企業ではできないようなチャレンジングな研究事業がありますので、閉鎖的になりがちな医薬品、医療機器の研究開発活動のハブとなってもらうことで、より高いレベルでのイノベーションの効率的な創出を一層進めていただきたいと期待しています。

昌子 AMEDは、「この指止まれ」といって研究開発の方向性を示すことが役割ではないかと思います。どんな領域でどんな開発をやるかを明確にして、異なる専門性を持ったいろいろな企業などを集めて開発を進めるということです。また研究課題には定期的にレビューを行ってPDCAをきちんと回していただきたいです。成果を上げるということに執着していただけるといいと思います。

小林 私たちは、ある日突然患者になります。当然、医療や保健のことについて何も知りません。最近、患者の家族が病院の倫理委員会や監査に患者側の立場として参加することが多くなりましたので、そういう場できちんとした発言ができるように研修会を始めていますが、そういうことにも御協力をいただきたいです。また患者と皆さんとの間の距離を縮めるための方法について、日本はまだ垣根が高いと思いますので、AMEDには仲介役、リーダー役をお願いしたいです。

東嶋 小林さんがおっしゃったように、ある日突然患者になった時、情報を調べようとしてインターネットを見ても、でたらめな情報が氾濫していて、どの情報を信頼したらよいか分からないという状況になっています。AMEDには、突然当事者になった方々に、自分の病気の道筋はどうなるのか、治療の可能性はどうなのかなど、正しい情報を伝えて希望を持っていただけるように、灯台としての役割をしていただきたいと思います。

もう一つ、研究していらっしゃる方々は患者さんのお顔が見えにくいのではないかと思います。大きな飛躍は異分野の出会いから生まれるといいますが、ぜひとも顔と顔が出会える場所と機会を提供していただきたいですね。

 画期的な新薬、あるいは医療技術、機器の開発を進める上で、研究現場を活性化させるようなデータシェアリングや、イノベーションを進めるような情報やインフラの共有について、AMEDが果たすべき役割についてはいかがでしょうか。

畑中 医療データの利活用の点からお話を申し上げます。医療データがますます重要になっている一方で、個人情報保護の観点から企業にとっては患者さんのデータにアクセスしにくい状況もあります。SCRUM-Japanという取り組みでは、患者さんから情報をいただく代わりに治療方針をお返しする、またIRUDでは患者さんからサンプルをもらう代わりに解析データをフィードバックするなど、双方向の利活用の形が作られてきました。これらのような取り組みをさらに促進することで、今まで不十分であった医療データの利活用を進め次の患者さんに価値あるイノベーションの成果を届けることが可能になるのではないかと考えています。

昌子 データシェアリングはまさに効率的・効果的な開発をしていく上での有用な手段になるのではないかと思います。会社同士だけではうまくいかないところもあるので、ぜひAMEDに入っていただいて、調整などの役割を果たしていただければと思います。

また医療機器は、いろいろな部品を組み合わせて作りますが、その部品を製造する会社が開発や医療機器への使用にリスクを感じると、提供までに時間がかかる場合があります。AMEDと一緒に取り組みを進めていくことができれば、開発が加速されるのではないかと思います。

小林 データシェアリングについて、患者は総じて研究に協力したいと思っていますので、どんどん声をかけていただきたいと思います。また、鑑別診断され治療法が確定している病気なのに、そのことを知らないために診断がつかないということも地方などでは多いようです。確定した診断等の情報も、裾野まで広げてもらいたいと思います。

東嶋 医療データのシェアリングに関して、国民の側も協力して予防医療や先制医療、セルフヘルスケア、あるいは地域の包括ケアに役立つのだという意識を持てるようになるといいと思います。

 ありがとうございました。

それでは、時間も迫ってまいりましたので、最後に、お一人ずつ、AMEDへの叱咤激励も込めて、期待を一言いただければと思います。

写真(会場の様子)東嶋 このシンポジウムに、ジャーナリストと患者の団体の代表といった他の分野の人間を呼んで話を聞いていただいていること自体に、国のファンディングも変わってきたと感じました。今日ここに来ていただいた皆様、お一人おひとりと一緒に協働しながら、良い医療に向かって、手を携えていけたらと思います。

小林 シンポジウムに患者会ブースをつくってほしいとご相談したら、すぐその場でやろうと言っていただきました。国の機関がオープンな形で、医療情報等などをみんなで共有できるというのが、大事ではないかと思います。

難病の子供や家族たちの立場からは、たくさんある病気の治療法を1日でも早く開発していただきたく、そのためには私たちは喜んで協力したいと思っておりますので、ぜひよろしくお願いします。

昌子 研究開発は一朝一夕に進むようなものではなく、非常に時間も費用もかかる大変なものです。そして、それを取り巻く患者さん、医療者、政策決定者、企業などとも共同して難しい事業にも取り組んでいければと思っています。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

畑中 製薬業界はAMEDに大きな期待をしておりますが、AMEDに頼るばかりではなく、それぞれの企業が個別に、自分たちの特徴と強みと役割を理解して、何をやらなければならないのか、どの部分のリスクを負うのかということを考えて進めていかなければならないと思っています。そしてサイエンスの進歩を、最終的に患者さんや社会の価値に変えて、日本国民だけでなく、世界に届けていけると信じています。

 どうもありがとうございました。

【前ページ】産学官連携の大きな取り組み

「AMEDシンポジウム開催レポート」トップページに戻る

最終更新日 平成29年10月16日