AMEDシンポジウム2017開催レポート AMEDシンポジウム2017開催レポート:成果報告⑤ コミュニケーションロボットの効果(1)
成果報告➄ コミュニケーションロボットの効果
大川 弥生氏(産業技術総合研究所 招聘研究員)
AMEDは2016年度、コミュニケーションロボットの介護現場における有用性について1000台規模を介護現場に導入して実証調査研究を行いました。この実証実験は、これまで「笑顔が増えた」「会話が増えた」など主観的な尺度でしか測られていなかったコミュニケーションロボットの介護現場への導入について、客観的に評価する取り組みです。
この調査は2016年9月に開始され、3月末に終了しました。今回のシンポジウムでは、検証された効果について速報という形で、調査を行なった産業技術総合研究所招聘研究員の大川先生から初めて発表がありました。

今回の調査の概要について
森田 弘一氏・AMED産学連携部長(当時)
この報告はやや他の発表と趣が異なりますので、私から少し説明をさせていただきます。
AMEDが実施している事業の一つに、「ロボット介護機器開発導入促進事業」があります。ロボット介護機器というと、介助者の作業負荷を軽減するための機械的サポートをするものが多いのですが、今日のテーマであるコミュニケーションロボットはちょっと異なります。
今日は「コミュニケーションロボットを介護の現場で使うとどういう効果があるか」ということについて、被介護者の活動度を維持するためにロボットがどのような効果を持ち得るか、科学的にデータを集めて実証した結果の報告です。また今日、その結果を初めて発表いたします。3月末に調査が終わったばかりで、詳細な分析にはまだまだ時間がかかりますが、このシンポジウムでご報告するために速報としてまとめてきたという状況でございますので、御理解ください。
これからご講演いただく大川氏は、国立長寿医療研究センターで高齢者に関するご研究を長くされて来られました。ご専門は生活機能学、リハビリテーション医学、介護学等々で、悪くなるだけが介護ではない、状態を良くする、自立度を高めるということについて、もっと介護がいろいろな役割を担うべきではないかということを主張しておられます。
それでは、大川先生、よろしくお願いいたします。
ロボット介護機器開発導入促進事業の基本的な考え方
経済産業省の「ロボット介護機器開発導入促進事業」に基づくコミュニケーションロボットについての実証試験とその効果、効果を生む要因について報告させていただきます。
まず、今回の実証試験とも密接に関わってきますので、ロボット介護機器開発・導入促進事業での介護ロボットについて基本としている考え方をご説明します。
まず1つ目は、介護ロボットの目的と効果を「人」に対する影響として見ることです。その際の基本的な概念として、WHOによる国際生活機能分類ICF(2001年)を用いています。2つ目は、介護について不自由さを補う「補完的介護」の手段としてだけではなく、被介護者の生きる状態を向上させる「よくする介護」を実践するための「物的介護手段」として、ロボットを位置づけるということです。
今回のコミュニケーションロボットに関する調査も、この観点から分析をしました。
2005年の介護保険法改正で、介護予防という概念が重要視されるようになりました。介護予防には大きく2つあり、要介護状態にならないことについての取り組みは地方行政も含めてかなりなされるようになっています。しかし要介護状態になってから改善する取り組みについては、なかなか効果的な取り組みは実行されていません。
今回の調査の結論から申し上げると、コミュニケーションロボットは、2つ目の要介護状態の改善に関して大きな効果を得ることができました。
最終更新日 平成29年10月17日