AMEDシンポジウム2017開催レポート AMEDシンポジウム2017開催レポート:成果報告⑤ コミュニケーションロボットの効果(2)
成果報告➄ コミュニケーションロボットの効果
大川 弥生氏(産業技術総合研究所 招聘研究員)
実証試験の評価指標と進め方
まず、この調査で使用するコミュニケーションロボットの定義ですが、コミュニケーションを「目的」としてだけではなく「手段」としても用いるということが特徴です。結果的に、「目的もしくは手段として用いる」というのを最初から定義づけていたことは正解だったと考えております。また「コミュニケーション」には、言語だけではなく非言語的なものも含むことにしました。
実証対象は、認知症・失語症の方は除外し、介護を受けている65歳以上でコミュニケーションを目的もしくは手段として活用するためには十分な理解能力がある人です。実証試験先は29代表機関計95施設で、試験に使うロボットは現時点で入手可能な市販されているものとし17種類でした。実証試験の施設及びロボットは公募を行い採択しました。
今回の実証試験の特徴は、同一の評価プロトコルを使ったこと、多数例で検証を行ったこと、提供する介護だけではなく、介護プログラムの内容も重視して試験デザインを作ったこと、評価指標にはICFを使用したことです。
ICFの基本概念である生活機能モデルを示しました(図1)。ICFの特徴を一言で言えば、「『生きることの全体像』についての『共通言語』です。人の生きることが生活機能であり、図の中央の高さの、右から「参加」、「活動」、「心身機能」を包括的した概念です。「参加」は、社会的レベルでの生きることの側面で、または家庭を含む社会のさまざまな状況に関与しそこにおける役割です。真ん中の「活動」は個人レベルでADL(日常生活行為)だけではなく、ありとあらゆる生活行為です。「心身機能」は生物レベルである心身機能です。このように生きることを3つのレベルに区別をして考え、今回は特に「参加」と「活動」という、これまであまりきちんとした検討がされてこなかったものを主な対象としました。
では、この生活機能に影響するものとして、上にあります「健康状態」、これは病気やけがだけではなく、老化や妊娠のような正常な経過や、ストレスのような一過性のものも含みます。また、下左側の「環境因子」という外的な因子、下右側の「個人因子」という内的な因子も生活機能に影響します。そしてこれらの6つの要素が影響し合っているとは人を捉えるというのが、この生活機能モデルの大きな特徴です。
次に、今回の実証試験では、「活動」項目については、実生活の中で実際に行っている「している活動」と、指導・工夫をしたり本人が頑張ればできる(診察・訓練・評価)「能力」を明確に区別して評価を行いました。
そして「環境因子」であるロボット、そしてそれをどのように介護プログラムの中で使うか、その他の物的環境や人的環境が、どう「参加」、「活動」へ影響するかを重視してコミュニケーションロボットの効果を分析しました。
実証試験の具体的な進め方としては、(1)使用目的が同一のロボットが複数ある場合と、(2)同じ使用目的のロボットがない場合で分け、2通りの方法で行いました。
(1)、(2)ともロボット使用前の状態を評価し、その後、(1)では2種類の類似ロボットを間に4週間のwash out(調査を休む)の期間を挟んで8週間ずつ使う「クロスオーバー試験」を行い、(2)は一台のロボットを連続して8週単位で3クール使い続ける「単一ロボット使用前後比較試験」を行いました。本日は開始5日前と開始8週後(56日)の変化の経過をご報告します。
最終更新日 平成29年10月17日