AMEDシンポジウム2017開催レポート AMEDシンポジウム2017開催レポート:ワークショップ② 再生医療分野の知財戦略の現状と今後(2)

(抄録)

AMEDシンポジウム2日目(5月30日)ワークショップ再生医療分野の知財戦略の現状と今後

モデレータ
東崎 賢治氏(長島・大野・常松法律事務所 パートナー弁護士)
パネリスト
浅見 正弘氏(富士フイルム株式会社 執行役員 知的財産戦略担当 知的財産本部管掌)
石埜 正穂氏(札幌医科大学医学部医科先端医療知財学 教授)
内山 務氏(内山務知財戦略事務所所長)
高須 直子氏(京都大学 iPS細胞研究所 副所長 教授)

パネルディスカッション

講演の様子

―再生医療製品開発のための活性化された連携の場の整備とは

浅見 活性化された連携の場の整備とは、開発段階であっても健全な経済サイクルが確立されるような仕組みを整備することを言っています。再生医療では投資が回収できるまで大変時間がかかりますが、それまでの期間、多くのプレイヤーが参加して、生き生きと活動するための資金をどう確保していくかが重要です。保有している技術をオープン化したときに得られる適正なライセンス収入や、グローバルの場で広く集めたライセンス料を日本での研究開発に投資することなど含め、幅広く議論していくことが必要だと考えます。

─再生医療分野における標準化とは

浅見 再生医療の事業化においては、装置の標準化だけでなく、品質の標準化も大切です。最重要ポイントはやはり安全性の確保です。遺伝子操作や滅菌、ウイルス除去など含めて、それぞれのプロセスに一定の基準をクリアする標準を定めた上で認証を行なうことで安全性は確保できます。装置の場合は多岐にわたるプレイヤーが参加してくるので、安全性と品質を保つために、異なるプレイヤーをつなぐインターフェイスのところで規格を設けることも必要です。

―大学の中に知財・薬事・ビジネスの目利き人材が必要だというが

石埜 サイエンスを分かっている人が知財の勉強をすればいいのであって、人材育成自体は難しいことではありません。しかし、その先に大学医学部に知財の専門家のポジションがないのが問題で、キャリアパスやインセンティブが用意されていれば勉強する人も出てくるはずです。

高須 山中先生が知財に力を入れていることもあり、CiRAでは研究所内に知財部を設置していますが、常に研究者と同じ空間にいて共に仕事をしていますから、あまり知識がない人でも1年ほどでiPS細胞についても知財についても分かるようになります。

高須 直子氏

─報告書を見ても再生医療研究では米国がリードしているようだが

石埜 米国は研究費が圧倒的に多いのでかなわないところはありますが、日本でもAMEDの充実した臨床研究支援制度などを介して大学内で治験レベルの臨床試験ができるようになったことの影響は大きく、再生医療の実用化に向けた大きな原動力になっています。

高須 今回の調査で、細胞のオリジンや培養方法、分化細胞の作成法などで京都大学がかなり上位にいるのを知り、アカデミアとしての出願の多さに改めて驚きました。CiRAは寄付金を知的財産費用に充てており、寄付者の皆さんのご理解を得て出願を維持している状況ですが、たくさん取得した特許については、競合との競争に活用したいという日本企業などにはクロスライセンス(相互ライセンス)としてどんどん活用してほしいと考えています。

内山 日本国内でも多くの大学やベンチャーが参入してきているので、連携が大切だと思っています。企業間の連携はパテントプールのためのコンソーシアムなどが重要ですし、日本のために一丸となって産学官連携を進めないとさらにアメリカに遅れを取ってしまいます。

─日米での特許戦略の違いは?

高須 日本は発明を発掘して出願することに注力してきましたが、こと再生医療に関しては軌道に乗っていないところもあり、出願よりもライセンスアウトやクロスライセンス、アライアンスといった活用のほうを一刻も早くやらなければいけないと感じています。おそらくアメリカはそういったライセンスに注力しているのはないかと思います。

浅見 アメリカではアカデミアであっても知財活動の規模が大きく、システマティックで、知財の専門家の数も多い。TLOに相当する組織が自立して動けている印象です。知財の活用ということでは、アライアンスを組むにしても、将来的なビジョンを具体的に描いた上で枠組を作っていくことが大事で、その中で自らのポジションを決め、ビジネスを考え、それぞれの立場から出し合えるものを具体的に出していく。アメリカでは最初からビジネスのことを考えて、具体的な取り組みを進めています。

 

─再生医療における医療方法特許の的確性の問題

内山 従来の医薬品でも治療方法の特許は認められてきませんでした。再生医療については治療そのものを直接保護するようにならないといけないのではないかと思っています。

高須 iPS細胞にとっては治療イコール移植ですから、治療法の特許が取得できれば、権利化できる発明も格段に増えると思います。しかし、数年前にも治療方法の特許かを巡って問題が発生したことがありますし、特許化は取得するほうにとってありがたい一方、海外を含む多様な人が出願するでしょうから慎重に進めることが必要です。


パネルディスカッションでは、登壇者からAMEDに対して「アライアンスを広げるための取り組みをAMED主導で進めてほしい」といった提案があるなど、将来に向けた具体的な話題も展開され、聴衆も熱い議論に引き込まれていました。

【前ページ】「平成28年度再生医療分野における知的財産戦略に関する調査」についての報告

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最終更新日 平成29年10月17日