AMEDシンポジウム2017開催レポート AMEDシンポジウム2017開催レポート:ワークショップ⑤ 医療を創るICT(1)
ワークショップ➄ 医療を創るICTAMEDが支援するICT関連事業について
臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究事業
- 座長
- 酒巻 哲夫氏(群馬大学名誉教授/PS[プログラム・スーパーバイザー])
- 高林 克日己氏(千葉大学名誉教授/PO[プログラム・オフィサー])
- 講演者
- 大江 和彦氏(東京大学大学院医学系研究科医療情報学分野 教授)
- 阪本 雄一郎氏(佐賀大学医学部救急医学講座 教授)
- 藤井 進氏(佐賀大学医学部附属病院医療情報部 講師)
- 森川 和彦氏(東京都立小児総合医療センター臨床研究支援センター)
- 今村 知明氏(奈良県立医科大学公衆衛生学講座 教授)
- 小川 久雄氏(国⽴循環器病研究センター理事⻑)
事業の概要

酒巻 哲夫氏(群馬大学名誉教授/PS)
AMEDのICT関連事業(臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究事業)は、横断的で幅広い取り組みがなされ、平成27年度から開始されました。大きく、「AI(人工知能)開発」、「PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)の利活用」、「データベースの利活用」、「MedicalArts」という4領域で、27の研究が採択されています。本日は、4つの領域についてそれぞれの先生方から研究を説明していいただきます。
1. AI(人工知能)開発「AI医療のための臨床データベースとICT基盤技術の開発」

大江 和彦氏(東京大学大学院医学系研究科医療情報学分野 教授)
「診療って何だろうか?」。診療は、➀問診 ➁考える ➂検査戦略をたてて検査 ➃考える ➄治療計画をたてて治療という過程でさまざまな知識を使いますが、その知識の適用はとても難しいです。AIを医療に応用するためには、かなりの総合的能力が必要とされるといわれています。膨大で広範な医学知識は集めきれない、覚えきれない、利用しきれない。
また、医学知識は10年で古くなるともいわれており、膨大な知識をコンピューターが扱える形にして医療を支援していくことは必要不可欠です。医療画像も見落としをなくすために支援していくことも重要です。
AI時代の医療
AIには質の高い構造化された医療データが大量に必要だということが実際の研究から分かります。けれども、AIに使えるデータベースは現状ではほとんどありません。AIのアルゴリズムは開発されていますが、データベースがないため、研究が行き詰まる可能性があるのです。
AMEDは、医用知能情報システムのインフラ開発に注力しています。
- データベースを作り高速に計算する
- そのデータベースから知識を獲得する
- その知識とカルテをマッピングする
- 胸部X線データの画像自動所見抽出
という4つのコア技術の開発を試み、そこから得たICT基盤を提供したいと考えています。
1については、4大学病院の「SS-MIX2」規格の電子カルテデータを匿名化して統合構築したデータベース「AIM-DB」をベースに高速症例解析システムを使って、診察中に類似の症例を照会し説明することが可能になりました。
3については、6000以上の疾患の病態推移(オントロジー)のデータベースとカルテの情報を自然言語処理し、機械学習の手法で、患者の状態を知識とマッピングしています。
4については、胸部X線画像を対象に特徴表現を抽出し異常値を検出しようと考えています。異常値検出のためにラベル付けされた大規模データが必要ですが、そのために「正解所見」を容易に付けられるシステムを開発しました。構造化されたラベルが診療の中で自然に付けられるような、新しいタイプの電子カルテを作っていく必要があります。
今後は、「AIM-DB」を8大学病院規模に拡大し、得られる結果と実際の電子カルテとの連結を図り、電子カルテに記入すると類似症例が瞬時に出てくるシステムを作ろうと考えています。
最終更新日 平成29年10月18日