AMEDシンポジウム2017開催レポート AMEDシンポジウム2017開催レポート:ワークショップ⑥ 使って進めよう、あなたの研究(1)

(抄録)

ワークショップ⑥使って進めよう、あなたの研究

―創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業―

中村 春木氏(大阪大学蛋白質研究所 所長/PS兼PO)v
井上 豪氏(大阪大学大学院工学研究科 教授/PO)
中島 元夫氏(SBIファーマ株式会社 取締役執行役員専務/PO)
上村 みどり氏(帝人ファーマ株式会社 上席研究員/PO)
近藤 裕郷氏(医薬基盤・健康・栄養研究所 創薬デザイン研究センター センター長/PO)
田中 成典氏(神戸大学大学院システム情報学研究科 教授/PO)

 

今年(2017年)4月から開始した「創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業」は、AMEDの中でも特殊な事業の一つで、優れたライフサイエンス研究の成果を医薬品等の実用化につなげることを目的として、放射光施設(SPring-8, Photon Factoryなど)、クライオ電子顕微鏡、化合物ライブラリー、次世代シーケンサーなどの大型の研究設備を整備・維持し、これらの設備を使って研究を進めたい研究者に原則無料で開放します。研究者は、構造解析、タンパク質生産、ケミカルシーズ・リード探索、構造展開、ゲノミクス解析、インシリコスクリーニングなどの技術を有する最先端の各課題実施者の支援も同時に受けることができます。

この事業は2016年度まで5年間行い、年間450件ほどの利用があった「創薬等支援技術基盤プラットフォーム事業」の後継で、さらに使い勝手のよいものにしています。この事業について知っていただき、最先端のファシリティを使って研究を加速していただくために、各PO(プログラム・オフィサー)からその詳細と利用によるメリットをご紹介します。

事業の概要

写真(中村 春木氏)
説明図・1枚目(説明は本文中に記載)
図1 事業実施体制
※画像をクリックするとPDFファイルが表示されます

中村 春木氏

「創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業」は、基礎生物学から創薬に至るまでの幅広いライフサイエンス研究の成果をAMEDが支援し、医薬品等の実用化につなげることを目的に、研究者のバックアップを行う事業です。

SPring-8などの放射光施設、クライオ電子顕微鏡、化合物ライブラリー、NMR、次世代シーケンサーなどの大型研究設備を、使用を希望する研究者に開放するだけでなく、最先端の各課題実施者が直接、研究の支援をします。本事業に従事する課題実施者は本事業に割く研究時間(エフォート)の半分以上を外部研究者の支援に向けることになっています。研究支援が連携した形で行なわれるのも一つの特徴です。最初はここの部分だけを支援してほしいという形で始めた場合でも、必要な支援が展開して共同研究につながる場合もあります。

具体的な事業の内容は調整役としての「プラットフォーム機能最適化ユニット」と、それぞれの研究設備の支援を行う「構造解析ユニット」「ケミカルシーズ・リード探索ユニット」「バイオロジカルシーズ探索ユニット」「インシリコユニット」という4つのユニットで構成され、プログラムスーパーバイザー(PS)と6人のプログラムオフィサー(PO)がヘッドクオーター機能を担い、課題間・ユニット内外の連携を図りながら、ワンストップでの研究支援の効率的な活用と成果創出を目指します。

今年度は予算総額29億円で進められます。8月からウェブで支援受付を開始しますので、支援を受けたい方は申請をお願いします。申請後、コンサルティング技術審査でPSとPOが確認し妥当と判断されればすぐに実施に入る予定です。うまく利用していただくための講習会も頻繁に開催を予定しています。

全体の調整役となる「プラットフォーム機能最適化ユニット」

説明図・2枚目(説明は本文中に記載)
図2 「最適化ユニット」の構成と技術
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中村 春木氏

「プラットフォーム機能最適化ユニット」は、AMEDとの協力のもと、各課題でどういう技術の高度化が行われたか、情報を収集し、支援がうまくいくような仕組み作りをすることをミッションとしています。全体の支援の中間に位置し、ユニットリーダーの早稲田大学の由良敬氏を中心に、東京大学の田之倉優氏、長浜バイオ大学の白井剛氏、東北大学の木下賢吾氏、大阪大学の栗栖源嗣氏がプレーヤーとなって5つのグループでサイエンスのデータと事業運営のデータを取り扱っていきます。

さらに各課題実施者がどういった支援をするか分かりにくい部分が多いので、学会やパンフレットを通じて広報活動を行うことも予定しているほか、最適化ユニット自身もデータベースやツールを開発し高度化していくことを考えています。

創薬候補物質の構造解析と生産を支援する「構造解析ユニット」

写真(井上 豪氏)

説明図・3枚目(説明は本文中に記載)
図3 構造解析ユニットのタンパク質生産領域
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井上 豪氏

「構造解析ユニット」は、「構造解析」と「タンパク質生産」という2つの領域で構成されています。構造解析領域では4つのグループが支援、タンパク質生産領域では10グループが支援します。通常、物質を結晶化させないと解析が難しいとされている構造解析ですが、SACLA(X線自由電子レーザー)を使うことによって、溶液構造のままでも、常温でも解析できるようになりました。放射光ビームライン、クライオ電子顕微鏡、NMRなども含めて相関解析も可能で、ワンストップで利用していただき、効率よくデータが取れるように支援していきたいと考えています。またタンパク質の生産においても、匠と呼ばれるような研究者のサジェスチョンが得られるような支援をとれる体制もとっています。

化合物のスクーリングを行う「ケミカルシーズ・リード検索ユニット(ライブラリー・スクリーニング領域)」

写真(中島 元夫氏)
説明図・4枚目(説明は本文中に記載)
図4 ケミカルシーズ・リード検索ユニットの
ライブラリー・スクリーニング領域
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中島 元夫氏

化合物のスクリーニングについて、アカデミアの研究者は、見つけたシーズや標的分子に対し、インヒビター、活性化剤などを取りたいとき、自分の施設で行うことができません。これを合理的かつ大々的に進めるためにできたのが、このユニットです。

「ケミカルシーズ・リード検索ユニット」のライブラリー・スクリーニング領域には11のグループがあります。化合物サンプル提供支援、総合スクリーニング技術支援、専門的スクリーニング技術支援の3つに分けられ、各グループの持っているユニークな化合物ライブラリーを活用し、スクリーニング支援を行います。アカデミアが持っている多くのシーズをいち早く世の中に出せるようにするのがこのユニットの役割です。前臨床や臨床試験までワンストップで支援するケースも場合によってはあります。

【次ページ】時間をかけられない部分を支援する

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最終更新日 平成29年10月17日