AMEDシンポジウム2017開催レポート AMEDシンポジウム2017開催レポート:ワークショップ⑥ 使って進めよう、あなたの研究(2)

(抄録)

ワークショップ⑥使って進めよう、あなたの研究

―創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業―

中村 春木氏(大阪大学蛋白質研究所 所長/PS兼PO)
井上 豪氏(大阪大学大学院工学研究科 教授/PO)
中島 元夫氏(SBIファーマ株式会社 取締役執行役員専務/PO)
上村 みどり氏(帝人ファーマ株式会社 上席研究員/PO)
近藤 裕郷氏(医薬基盤・健康・栄養研究所 創薬デザイン研究センター センター長/PO)
田中 成典氏(神戸大学大学院システム情報学研究科 教授/PO)

時間をかけられない部分を支援する「ケミカルシーズ・リード検索ユニット(構造展開領域)」

写真(上村 みどり氏)
説明図・5枚目(説明は本文中に記載)
図5 ケミカルシーズ・リード検索ユニットの
構造展開領域
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上村 みどり氏

ケミカルシーズの中の構造展開領域は、アカデミア創薬と製薬会社との最も異なる部分です。製薬会社では日常的にツールの連携活用が行われているため、アカデミア創薬は、製薬会社が時間をかけてできないところを支援することが大事だと考えています。プロテインターゲットが分からないものが多いため、リガンド(特定の受容体に特異的に結合する物質)をベースにしたアプローチを「構造解析ユニット」と連携して行います。

「ケミカルシーズ・リード検索ユニット(構造展開領域)」に参加している7グループはADMET/物性評価などを製薬企業からの出向研究者が行っているところや、iPS細胞を使った心毒性の評価を行っているところなど、どこもユニークな特徴があります。

ヒット化合物からリード化合物に構造展開していく中で、製薬会社が行っているデザイン・合成・in vitro薬理評価・ADMET/物性評価のサイクルを、アカデミア創薬に適用するなど、新しいテクノロジーも開発しながらやっていきたいと考えています。

ターゲット分子を確率よく見つけるための「バイオロジカルシーズ探索ユニット」

写真(近藤 裕郷氏)
説明図・6枚目(説明は本文中に記載)
図6 バイオロジカルシーズ探索ユニット
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近藤 裕郷氏

以前の創薬の流れは、スクリーニングに合うような化合物をヒットで見つけ、そこから最適化して、薬にしていました。例えばアスピリンの真のターゲット分子は、アスピリンができて70年後にメカニズムが解明されました。2000年になりゲノム創薬がスタートして以降は流れが大きく変わり、ターゲットをある程度決めて、それをベースに化合物を見つけていくことが重要となり、製薬産業ではそれがほぼ一般化されています。

「バイオロジカルシーズ探索ユニット」の4つのグループでは、創薬研究の重要なポイントの一つで、分子ターゲットをできるだけ高い確率で見つけるための支援を行っています。

計算科学や情報科学の側面から支援する「インシリコユニット」

写真(田中 成典氏)
説明図・7枚目(説明は本文中に記載)
図7 インシリコユニット
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田中 成典氏

「インシリコユニット」は、「in silico」(インシリコ:コンピューターを用いて)ですので、創薬を計算科学や情報科学の側面から支援します。タンパク質の立体構造、タンパクと生体分子・低分子化合物などとの相互作用様式の推定、構造インフォマティクス技術、ケモインフォマティクス技術を用いた各課題実施者が、複数の構造解析手法から得られる情報を多面的に集め統合することで、構造ダイナミクス研究をシミュレーションの側面から支援します。

支援する9つのグループは、大きく「シミュレーション」「複合技術」「インフォマティクス」と3種類に大きく分類されたアプローチを取ります。


今年の4月に立ち上がった「創薬等ライフサイエンス研究支援基盤事業」は、研究者が滅多に利用することができないSPring-8のような放射光施設や今はやりのクライオ電子顕微鏡を原則無料で使えるだけでなく、役立つ技術を持った各課題実施者の支援を受けることができる“おいしい”事業です。AMEDでは多くに研究者にこの事業を利用していただき、創薬研究の加速を支援します。

客席はほぼ満席で、女性の参加者も多く見られました。講演後も質疑応答が活発に行われ、関心の高さを物語っていました。

8月からは、支援窓口(ウェブサイト)を開設する予定です。

【前ページ】事業の概要

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最終更新日 平成29年10月17日