2016年度 研究事業成果集 ICGC(国際がんゲノムコンソーシアム)
国際協力によるがんゲノム解析の成果 ICGC(International Cancer Genome Consortium)
戦略推進部 がん研究課
がんゲノムビッグデータ解析により喫煙のがんへの影響を明らかに
国立がん研究センター 柴田龍弘分野長らの国際共同研究グループは、喫煙との関連が報告されている17種類のがん5243例のがんゲノムデータを基に喫煙と突然変異との関連を解析しました。生涯喫煙量と突然変異数の相関や、臓器がん別の喫煙の影響など、がんと喫煙の影響を具体的に数値化しました。
取り組み
国際共同研究による取り組み
ICGC(国際がんゲノムコンソーシアム)は、がんにおける遺伝子異常(変異)の解明を目的とした国際研究プロジェクトで、日本やアメリカを含む17カ国が参加しています。ICGCのホームページ(https://dcc.icgc.org/)では78種類のがんについて、1万6000を超えるがんサンプルにおける遺伝子異常のビッグデータを蓄積・公開し、世界のがん研究に活用されています。日本からは、国立がん研究センター、理化学研究所、東京大学など6大学・4研究機関が連携し、肝臓がん、胆道がん、胃がんに関する大規模ながんゲノム解析を行い、データを公表しています。これらのプロジェクトで、AMEDはバイオバンクやデータシェアリングなど、研究環境整備等の多方面での研究支援を行っています。
喫煙と遺伝子異常の関連を調査
国立がん研究センター研究所 がんゲノミクス研究分野 柴田龍弘分野長を中心とする国際共同研究グループは、喫煙との関連が報告されている17種類のがんについて、喫煙による遺伝子異常(変異)がどれくらい影響しているか、合計5243例のがん細胞のゲノムデータを解読しました。
成果
さまざまながんの原因とされている喫煙が、DNAの突然変異を実際に誘発していることを明らかにしました。中でも肺がんは突然変異が最も多く、1年間毎日1箱のタバコを吸うと肺に150個の突然変異が蓄積することも分かりました。咽頭がん、口腔がん、膀胱がん、肝臓がんでも、統計的に突然変異の増加が見られました。
喫煙により突然変異の増加が認められるがん
喫煙と強く相関する変異パターン
展望
この研究成果により、がん予防としての禁煙の重要性が強調されるとともに、変異が起きる仕組みを解明することにより喫煙に関連したがんの予防や治療法などへの活用が期待されます。このチームは、日本人300例の肝臓がんの全ゲノム解読などでも成果を上げており、他の臓器がんについてもゲノム解析を進め、ゲノム以外の医療情報とマッチングさせた、さらに大規模な医療データベースの構築を目指します。
最終更新日 平成30年10月5日