2016年度 研究事業成果集 ジカ熱対策研究

ジカ熱の世界的な流行に対処するため研究を加速

戦略推進部 感染症研究課

ジカウイルスのワクチン・迅速診断キットを開発

ジカ熱(ジカウイルス感染症)は、ヤブカ属のネッタイシマカやヒトスジシマカによって媒介されるジカウイルスによる感染症で、南米で感染患者が多数確認され、妊娠時のジカウイルス感染と小頭症児出生の関連性が報告されています。国内でもヒトスジシマカが生息し、AMEDでは総合的なジカ熱対策研究を推進しています。世界に先駆けたワクチン開発・迅速診断キットの実用化に向けて研究開発を進めています。

総合的なジカ熱対策研究

取り組み

WHOによると、平成27~28年第2週までに中南米、アフリカ、アジアなど各国でジカ熱患者発生の報告があり、国内でも現在までに16例の輸入症例が報告されました。ジカ熱は、一般的にデング熱に比べ軽症であることが多いですが、母子感染による小頭症先天異常の原因になると結論付けられています。AMEDでは、世界的な流行に対処するため、国立感染症研究所(NIID)、長崎大学、東京大学で行っている、総合的なジカ熱対策研究への支援を加速しています。

① ジカ熱に対するワクチン開発(NIID)
国内ワクチンメーカー2社と共に、候補ウイルス株の確立を進め、非臨床試験を目指して研究開発を進めています。
② ジカウイルスの迅速診断法の実用化(NIID、長崎大学)
ブラジルのペルナンブコ連邦大学アサミ・ケイゾー熱帯免疫病理学研究所(UFPE-LIKA)との共同研究で、国内メーカー2社とともに10~ 40分でウイルスを検出できるRT-LAMP法*1・イムノクロマト法を応用した、簡便な迅速診断キットの実用化に向けて研究開発を進めています。
③ 診療ガイドラインの確立(東京大学、AMED成育疾患克服等総合研究事業として)
NIIDの「蚊媒介感染症の診療ガイドライン第4版」、「ジカウイルス感染症診療Q&A」を作成し平成28年7月に公開、妊婦への対応や母児に対する検査手順、海外渡航歴で感染が疑われる妊婦の相談窓口、新生児の評価診断などを示しました。

今後

以上の取り組みを発展させるとともに、その他にも、NIIDが中心となり、地理情報システム(GIS)を利用した感染リスクの「見える化」による蚊対策のリスク評価ツールの開発も進めていきます。

*1 RT-LAMP法:
Real-time Loop-mediated Isothermal Amplification法
*2 調整費:
内閣府の科学技術イノベーション創造推進費500億円のうち、35%に当たる175億円が、医療分野の研究開発関連の調整費としてAMEDに充当されるものです。「医療分野の研究開発関連の調整費に関する配分方針」(健康・医療戦略推進本部決定)に基づき、現場の状況・ニーズに対応した①研究開発の加速(スケジュールの前倒しや内容の充実)、また②新規事業の開始(健康・医療戦略等の取り組みを一層推進する観点から望ましいと判断した新規事業や新規研究課題の開始)等に対し、原則年2回配分を行います

最終更新日 平成30年10月5日