2016年度 研究事業成果集 感染症研究国際展開戦略プログラム J-GRID

感染症の制圧を目指し、感染症流行地で患者と病原体を直接解析する

戦略推進部 感染症研究課

感染症研究国際展開戦略プログラム J-GRID(ジェー・グリッド;Japan Initiative for Global Research Network on Infectious Diseases)

現在、感染症はヒト・モノの高速輸送によって、流行地から世界各地へ瞬く間に拡散する状況にあります。J-GRID事業では、感染症がまん延するアジア・アフリカ地域に日本の大学などが研究拠点を設置し、日本人研究者が常駐して現地の大学や研究機関と共同で感染症の理解と制御に向けた研究を進めています。また、拠点と国内の研究機関との連携を推進しています。

生鳥市場の現場

取り組み

感染症の研究では、患者、病原体、媒介昆虫などの感染症に関わる全ての要因を解析して、発症に至る過程と病原体が環境中で維持される機構の全体像を把握することが重要です。J-GRID拠点では、インフルエンザ、デング熱、薬剤耐性菌、下痢性感染症を主な研究対象として、疫学研究によって感染源と感染経路を突き止め、そこに介入して流行を抑制する方法を明らかにするとともに、得られた情報や分離した病原体を国内研究機関と共有し、診断系、予防ワクチン、治療薬シーズの開発、国内感染症対策への応用と国際貢献を目指しています。

J-GRID事業

世界地図上における海外拠点と採択機関の位置

成果例

高病原性鳥インフルエンザH5N1ウイルスのヒト感染は高率で死に至ると恐れられてきました。インドネシアではH5N1ウイルスが家禽・野鳥に流行しており、散発的にヒトの感染・発症例が報告されています。神戸大学・インドネシア拠点ではアイルランガ大学熱帯病研究所と共同で、H5N1ウイルスに極めて濃厚に暴露している生鳥市場従業員の血清を調べ、インフルエンザ発症歴の無い従業員101人のうち84%に抗H5N1ウイルス抗体を検出しました。この成績は、多数のH5N1ウイルスヒト不顕性感染例を示した世界初のデータで、H5N1ウイルスのヒトへの感染と病原性を再検証する必要を示しています。

ウイルス検査の様子

展開

拠点設置国の関係者との間に培ってきた強固な信頼関係を基盤に、感染症に関わる全ての要因に直接アクセスできる拠点の強みを活かし、感染症の発症に至る過程と病原体が環境中で維持される機構の理解を進めます。また病原体や情報を国内の研究機関とも共有して感染症の制圧に向けた研究を強力に推進し、感染症研究者の育成にも貢献します。

最終更新日 平成30年10月5日