2017年度 研究事業成果集 東北メディカル・メガバンク計画

東北メディカル・メガバンク計画

基盤研究事業部 バイオバンク課

バイオバンク活用で個別化医療・予防の推進と東北の創造的復興を

東日本大震災からの復興事業で2012年に、東北大学東北メディカル・メガバンク機構、岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構が発足、次世代医療の構築に取り組んでいます。被災地での大規模で長期的な健康調査の結果を基に、自治体での保健指導を実施するなど被災地域住民の健康維持・増進につなげ、さらに調査情報と生体試料・ゲノムを収集したバイオバンクを構築、遺伝子情報の解析を進め、個別化医療・予防の基盤作りを目指しています。

取り組み

東北大学東北メディカル・メガバンク機構(機構長:山本雅之)、岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構(機構長:佐々木真理)は、被災地域の健康管理に貢献する長期健康調査(コホート調査*1)や太平洋沿岸部への医師支援活動を継続しています。すでに15万人の協力者を得ているコホート調査ではさらに追跡調査を進め、構築したバイオバンクの利活用によってゲノム医療の発展に大きく貢献しています。

成果

地域住民コホート調査

これまで宮城県と岩手県の各地で実施してきた血液検査やアンケート、脳MRI検査の結果を分析し、家屋被害の生活習慣病への影響などを明らかにしました。早急な医療対応が必要な約540人に対しては急ぎの結果回付を行い、医療機関へつなげる取り組みも行っています。

■一般住民を対象とした大規模なMRI調査
成人を対象にMRI検査の参加を促し、2017年度末までに7000人以上の撮像が完了しました

三世代コホート調査

7万3000人超による「三世代コホート」の調査結果から、自宅被害と肥満状況、喫煙習慣との関連を明らかにしました。妊婦向けの禁煙指導などに結びつけるとともに、2017年度からは妊娠中や出産前後に発生する疾患について臨床情報の収集も開始し、ゲノム情報と合わせて分譲する準備を進めています。

■世界初の出生からの三世代コホート調査
参加している子供が5歳を迎えると、各地域支援センターへ来所を促し各種調査が行われます

ゲノム・オミックス解析

コホート調査に参加した3500人分の全ゲノム解析と5000人分のオミックス解析を行い、一塩基多型や血漿中の代謝物などの頻度情報をホームページで公開しています。本事業で製品化した「ジャポニカアレイ®*2」などにより2万3000人分のアレイ解析を実施、インピュテーション技術により復元した全ゲノムデータの制限公開が始まっています。

バイオバンクの構築と統合データベースの開発

参加者の生体試料、アンケート調査、生理学検査の結果、ゲノム・オミックスの解析データを収集した複合バイオバンクでは、約306万検体(2017年度末まで)を保管・管理しています。これらの試料・情報は外部研究機関に分譲しており、2017年度末までの実績は16件です。調査で得られた情報を横断的に検索できるデータベースを構築し、遠隔地からも検索可能な環境を整備しました。

遺伝情報の回付に関するパイロット研究

個別化医療・予防に向けて、コホート調査での遺伝情報解析の結果、参加者の健康にとって重要で、有効な治療法がある情報が得られた場合には参加者に知らせる取り組みを始めました。回付に伴う影響を慎重に検討するために、人数を限定したパイロット研究を実施しています。

展望

収集した試料と情報が速やかにデータシェアリングされ、国内の研究者に幅広く研究利用されるよう、試料情報の収集・保管・分譲までの一体化を進めます。特に認知症の発症解明を目指した脳MRIデータ、三世代の家族歴を含めた個人ゲノム配列情報、妊娠・出生から発育までの長期にわたる健康調査データは有用性が高く、これらの情報を活用した疾患研究の進展が期待されます。

各取り組みの目的や詳しい内容については、前年度の研究事業成果集に詳しく記載されています(HPからもご確認いただけます)。

*1 コホート調査:
特定の集団を一定期間追跡し、環境や遺伝的要因と発病の関係を調べる調査
*2 ジャポニカアレイ®:
日本人のゲノム配列に最適化されたDNAアレイで、東北大学で開発されて株式会社東芝から製品化されています

最終更新日 平成30年11月15日