広報活動 AMEDシンポジウム2017開催レポート:招待講演③ 抗感染薬の発見に向けて(1)

(抄録)

5月30日(2日目)講演招待講演➂ 抗感染薬の発見に向けて
大村 智氏(北里大学特別栄誉教授)

2015年、英国政府は抗生物質使用における危険についての報告を発表。大村智氏も1999年の学会誌で同様の危険性を指摘し、抗感染症薬の在り方を示していました。それ以降の具体的な取り組みとして、新しい薬の元となる微生物を発見すること、遺伝子操作による化合物合成などを挙げ、自身が発見した化合物の実例とともに紹介します。これまでとは違うアプローチ法として、病原菌そのものを殺そうとするのではなく、毒素が入り込んで感染する仕組みを阻害する方法も研究中とした上で、人類の将来のためにも新しい概念による取り組みが重要だと締めくりました。
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はじめに

説明図・1枚目(説明は本文中に記載)図1 自然界微生物からの生物活性物質の探索
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自然界のあらゆる場所・環境から試料を採取し、そこに住む微生物を分離することが微生物創薬の基本です。私はそうして分離した微生物や菌を培養し、培養液中におもしろそうな物質があれば構造を決め、生物活性を調べる、ということを繰り返してきました。これまでに見つけた化合物の種類は約200種類、化合物の成分によって分類したものでは500種類にも上ります。その化合物のうち、医薬品や農薬、動物薬、研究用試薬として使われているものが26種類あり、それらを見つけるプロセスで新たな微生物も多数発見することができました。

耐性菌による人類の危機を予想

そのような中、2015年に英国政府が、抗生物質の使用方法について警鐘を打ち鳴らす報告を発表しました。「2050年までに抗生物質の効かない伝染病が流行し、3秒に1人が死亡することになる。結果年間1,000万人を死に至らしめ、世界経済に100兆ドル、日本円にして1京1000兆円のダメージを与えるかもしれない」という大変ショッキングな内容でした。

そこには抗生物質や抗菌剤の乱用を抑制することと併せて、新薬開発を加速させていくことの重要性が記され、世の中にも周知していくべきだと書かれていました。

その報告が出される前の1999年、私は日本細菌学会誌に「抗感染症薬の21世紀の展望」と題した総説を寄せました。抗生物質開発の歴史では、新しい薬を見つけては耐性菌があらわれるということの繰り返しでしたから、単に菌を殺すというやり方ではない、別の方法を考えて感染症に対処していくべきではないかという主旨の文章です。

この総説の中で、私は抗感染症薬という新しい概念のもとで研究される5つの研究{(1)新規な標的を有する化学療法剤、(2)細菌毒素の毒性軽減物質、(3)毒素分泌機構に作用する薬剤、(4)病原細菌の感染機序から発想された標的、(5)宿主の感染防御機構に学ぶ抗感染症薬の開発}について述べました。当時はこれら5つのうちどれも存在しませんでしたが、その後の研究により発見できたものもありますので、本日そのいくつかをご紹介します。

 

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最終更新日 平成29年10月17日