AMEDシンポジウム2017開催レポート AMEDシンポジウム2017開催レポート:招待講演③ 抗感染薬の発見に向けて(2)

(抄録)

AMEDシンポジウム2日目(5月30日)招待講演➂ 抗感染薬の発見に向けて

大村 智氏(北里大学特別栄誉教授)

微生物分離手法を工夫して新たな微生物を発見

(説明は本文中に記載) 図2 寒天培地から発生する活性酸素種の除去による
新分類群放線菌の分離
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微生物創薬研究は、多様な微生物を用意する基盤整備から始まります。現在、人類が手に入れている微生物は、地球上に存在する微生物の1%程度だという研究者もいますが、工夫次第で新しい微生物を見つけることができます。

土中から分離した微生物の中でも、ノカルディアなどの放線菌は希少放線菌といわれるもので、滅多に見つかることはありません。ところが、私の研究室の博士課程の学生が採取してきた植物の根の土をきれいに取り除き、すりつぶした根から、希少放線菌を多数分離することができました。こうした菌のいくつかは、新しい抗生物質などを作ります。また、寒天培地が酸素ラジカルを発生しており、このラジカルを除去することによって多くの新しい放線菌とそれらが作る新しい化合物を発見することができました(図2)。このように微生物を分離する手法を工夫、改良することで、新しい薬の元となる新しい微生物を用意することが可能になります。

微生物の遺伝子操作により化合物を合成

次に、微生物がどのようにして対象物質を作っているか、遺伝子レベルで調べていきました。私たちが行ったエバーメクチンの生産菌の全ゲノム解析は、工業的に有用な微生物のゲノム解析として世界初の例となりました。

微生物のゲノム情報をもとに、新しい物質を合成することも可能です。私と英国のホップウッド教授の共同研究では、ホップウッド教授が持っていたStreptomyces coelicolorという菌が作り出すアクチノロジンという化合物と、私たちが持っていた放線菌が作り出すメデルマイシンという抗生物質を使いました。私たちは生産菌の遺伝子を操作して、アクチノロジンが持つ水酸基をメデルマイシンに導入することに成功し、メデルロジンという化合物を作りました。この研究成果は世界で初めて遺伝子操作により化合物を作り出した例で、1985年に「ネイチャー」に掲載されました。

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最終更新日 平成29年10月17日