医薬品研究開発課 AMED-FLuX 用語集
安全性マージン(Safety margin)
動物実験などの結果から得られる無毒性量(曝露量)に対するヒトの臨床用量(曝露量)との比で示されるヒトにおけるリスク評価の指標。無毒性量/ヒト臨床用量または無毒性量における曝露量/ヒト臨床用量における曝露量により算出される。
アンチセンスオリゴヌクレオチド(Antisense oligonucleotides: ASO)
ASO は、標的と相補的な配列を有する一本鎖DNA やRNA のことで、核酸医薬の代表的な形態の一つである。 タンパク質への発現を抑制する機能を持ち、様々な化学修飾により安定性や機能などが向上できる。
アンメットメディカルニーズ(Unmet Medical Needs)
満足できる治療法がない医療ニーズ。
オーファンドラッグ(Orphan Drug)
希少疾病用医薬品とも呼ばれ、難病といわれるような、患者さんの数が少なく治療法も確立されていない病気のためのくすりのこと。
オフターゲット
オフターゲットとは、創薬において、薬物が意図した標的(オンターゲット)以外の分子や受容体に作用してしまう現象を指す。これは、薬剤が本来の目的とは異なる場所で効果を示すことを意味し、通常は好ましくない副作用の原因となることが多い。
オルガノイド
オルガノイドとは、試験管の中で幹細胞から作る3 次元培養可能なヘテロな細胞塊で、あたかも臓器のミニチュアのように幹細胞のもつ自己複製能と分化能を利用して増殖・分化を再現できる細胞組織構造体のことである。一般的な細胞株と比べて生体に近い特徴を保持しており、薬剤スクリーニング等において生体と同様の結果を得られやすく、疾患研究をするうえで有用な前臨床モデルとして利用される。
オンターゲット
オンターゲットとは、創薬において、薬物が意図した生物学的標的に対して効果を発揮することを指す。具体的には、薬剤が特定の受容体や酵素に結合し、期待される治療効果をもたらす状態である。ターゲット自体への作用が副作用の原因となる場合もある。
化合物ライブラリ
HTS やpheynotype screening に供する化合物群。 目的に応じて作製されたfocused library や、既知の化合物・市販医薬品からなるlibrary (LOPAC、Library of Pharmacologically Active Compounds)などもある。
家族性
特定の病気が家族内で多く見られる現象。具体的には、血縁関係にある家族メンバーが同じ疾患を発症することがあり、これは遺伝的要因が大きく影響していると考えられている。
家族歴
患者の親族の健康状態や病歴に関する情報。特定の病気(がん、心疾患、糖尿病など)が家族内で多い場合、遺伝的要因が関与している可能性が高まる。家族歴を知ることで、未発症の段階で、早期のスクリーニングや予防措置を講じることが可能になる。また、個々の患者に最適な治療計画を立てることができるようになる。
がん細胞パネル
米国国立がん研究所(NCI)が最初に開発した抗がん剤が有効ながん種を効率的にスクリーニングするために用いられる多種類のがん細胞株からなるセット。各細胞株に対する抗がん活性(有効濃度)を測定し、細胞株毎に異なる有効濃度のパターン(フィンガープリント)としてデータベース化することにより、新規物質の抗がんメカニズムをフィンガープリントの類似性により予測することができる。
患者層
特定の疾患や治療において、異なるサブグループに分類された患者群を指す。この分類は、疾患の機序や患者の反応、遺伝的要因などに基づいて行われる。層別化により、各サブグループに最適な治療法を選択することが可能になる。
がんパネル試験
次世代シークエンサーを使って、がんの発生に関わる複数の「がん関連遺伝子」の変化を一度に調べる試験のこと。対象となる遺伝子のセットのことを「パネル」と呼ぶ。パネルには複数の遺伝子が含まれ、使用するパネルにより調べる遺伝子の数や種類が異なる。
規格設定
医薬品の規格設定は、医薬品の品質を確保するために必要な基準や試験方法を定めるプロセスで、医薬品が安全で効果的であることを保証するために重要である。主な要素として品質基準、試験方法があり、国際基準との調和も求められる。
キナーゼパネル
キナーゼは非常に沢山の種類が存在することから、キナーゼ阻害剤の研究では、標的とするキナーゼ以外に、どのようなキナーゼを阻害するかを明らかにすることが重要で、阻害出来るキナーゼ群を簡便にアッセイできるように、多様なキナーゼを目的別に種類分けしたものをキナーゼパネルという。
クリニカルベネフィット
クリニカルベネフィットとは、医療や治療における「臨床的な利益」を指す。具体的には、治療や介入が患者に与える有益な効果と、それに伴うリスクや副作用を総合的に評価したものである。
構造活性相関(Structure Activity Relationship: SAR)
基本骨格が同じ化合物群の生理活性(受容体や酵素への結合活性、毒性など)は、その基本骨格に結合する置換基により強弱が変化する。 それらの置換基構造や物理化学的性質の違いと生理活性の強弱の間に認められる関係を構造活性相関という。 リード化合物獲得のための合成展開に重要な情報を与える。
構造最適化(リード最適化)
ターゲットとなる創薬標的への活性を示す化合物(リード化合物)を、より薬に適した化合物にする過程を指す。結晶構造解析やシミュレーションなどを駆使して、官能基を修飾するなどしてリード化合物の構造を変換し、活性や安全性、薬物動態を改善する。
疾患モデル動物
人間の病気に類似した疾患を呈するように人為的に操作された実験動物。 自然発症性、人工的疾患モデル(原因遺伝子の導入又は欠損、疾患を誘発する薬剤の投与、外科的手術、病原菌・微生物の接種)など種々のものがあるが、高い精度、再現性、ヒトへの外挿性を有する疾患モデル動物への期待が大きい。 近年、transgenic, knockout mice など遺伝子改変動物がしばしば用いられる。。
脂質ナノ粒子
脂質ナノ粒子(Lipid Nanoparticle, LNP)とは、主に脂質から構成されるナノサイズのカプセルで、特に薬物送達システム(DDS)として利用される。これらの粒子は、直径が約100nm程度で、脂肪酸やグリセリドなどの生体適合性の高い脂質を主成分としている。LNPは、特に不安定な核酸(mRNAやsiRNAなど)を保護し、細胞内に効率的に導入するために設計されている。これにより、治療効果を高めることができる。
シード(化合物)
医薬の種、即ち、ヒット化合物群の中から、物性、合成展開の可能性などを考慮して選抜した化合物(群)のこと。 公開された他者の特許などから化合物情報を得て、これをシード化合物とする場合もある。
ゼノグラフト(Xenograft)
異種移植と訳され、異なる種由来の組織を移植すること。がん研究では, ヒト由来のがん細胞・組織を免疫不全マウスに移植したxenograft モデルを,生体内の環境を再現した実験系として生物評価に用いる。移植部位も皮下以外に腹腔内や同所が選択される場合もある。皮下異種移植腫瘍モデルは、抗がん治療薬の生体内活性を決定する最も一般的なモデルになっており、担がんマウスの腫瘍体積を計測・算出することにより被験物質の抗腫瘍効果を評価する。
セラピュティックウィンドウ
セラピューティックウィンドウ(therapeutic window)とは、医療や薬理学において、特定の治療が効果を発揮するための「安全な用量範囲」を指す。この概念は、薬物が有効な効果を示す一方で、副作用や毒性が現れない範囲を示すものである。
治療効果
治療効果とは、ある化合物が特定の病気や症状に対してどれだけ効果的に作用するかを示す指標である。特に創薬では、発症済みの動物モデルに化合物を投与した時、疾患の程度が未治療動物に比べ軽減している現象を指す。
投与レジメン
レジメンとはがん薬物療法における抗がん薬の投与量、投与スケジュール、治療期間等や、抗がん薬、輸液、支持療法薬等を組み合わせた時系列的な治療計画が記載された治療計画書のこと。
抗がん剤を実際投与する場合に、各抗がん剤の特性に合わせて薬を溶かしたり希釈したりする溶液の組成や量、投与速度、投与順などが決められ、時系列で計画書が作られる。
ドラッガビリティ(Druggability)
一般にターゲットにおいて低分子化合物により機能を調節できる可能性が高いことを意味する。近年、抗体医薬、中分子医薬、核酸医薬のような形態で最先端の技術を活用して、開発候補物質を得る見込みがある場合、Druggable target とみなす。
ドラッグデリバリーシステム(DDS)
薬剤効果の増強や、副作用の低減、使用性の改善によるQOL 向上などを目的に、体内の薬物分布を量的・空間的・時間的にコントロールし、必要な時間・場所に必要最小限の薬剤を届けることを目指した制御技術の総称で、「薬物送達技術」とも呼ばれている。
ドラッグリポジショニング(Drug repositioning)
既存の、ある疾患に有効な治療薬または臨床開発段階で中断した薬剤から、別の疾患に有効な薬効を見つけ出すこと。 Drug repurposing、Drug reprofiling という用語も使われる。
バイオマーカー
バイオマーカーは「正常なプロセスや病的プロセス、あるいは治療に対する薬理学的な反応の指標として客観的に測定・評価される項目」である。 疾患の状態や変化、治癒の程度を特徴づけるバイオマーカーは、新薬の臨床試験での有効性を確認するためのサロゲートマーカー( 代用マーカー) として使われる。 また、臨床試験の際、バイオマーカーの陽性・陰性が、患者の層別化因子として用いられる。
ハイスループットスクリーニング(High Throughput Screening: HTS)
機械制御により自動化されたシステムを用いて短期間に大量の(数十万から数百万)化合物を評価して目的に合致する
活性化合物を見出す方法。
非侵襲的
非侵襲的とは、医療において「身体を傷つけない」または「負担をかけない」手法を指す。具体的には、皮膚を切開したり、体内に器具を挿入したりすることなく、検査や治療を行う方法である。
ヒット(化合物)
化合物スクリーニングで発見された活性化合物のことで、HTS など一次スクリーニングのヒットから再現性評価や高次アッセイ系において活性確認された化合物もヒットと呼ぶこともある。
非臨床POC
非臨床POC(Proof of Concept)とは、主に動物モデルなどの非臨床試験を通じて新薬候補の有効性や安全性を確認することである。臨床試験に進むための重要なステップとなる。
非臨床POM
非臨床POM(Proof of Mechanism)とは、非臨床試験を通じて新薬候補が特定のターゲットに対してどのように作用するかを示す証拠を提供することを指す。POCが新薬の有効性や安全性の確認であることに対し、POMは作用機序の確認に焦点を当てている。
服薬コンプライアンス
服薬コンプライアンスとは、医師の指示に従って患者が処方された薬を正しく服用することを指す。「服薬コンプライアンスが良い」とは、患者が指示通りに薬を服用している状態を意味し、「悪い」とは飲み忘れや飲み間違いがあることを示す。
ベンチャーキャピタル(Venture Capital: VC)
将来性のあるベンチャー企業に対して出資を行うことで将来のリターンを狙う投資組織。Venture Capital の頭文字をとって「VC」とも呼ばれる。
創業間もないベンチャー企業は、知名度のある企業に比べて出資を受けることが難しいことがあるが、そのような場合に助けとなるのが、ベンチャーキャピタル。
ベンチャーキャピタルは、資金調達先として有用なだけでなく、経営観点での専門的な助言や提携先の紹介など、事業を共に進める良きパートナーと成り得る存在である。
フェノタイプスクリーニング(Phenotypic screening)
細胞や臓器の表現型 ( フェノタイプ) 即ち、細胞増殖や細胞死、特定のタンパク質の生産量等を指標に、それを変化させる化合物を探索する手法。 ある標的分子に対するHTS に比べ、スループットが劣り、後に化合物の標的分子探索に困難を要するが、実際の細胞反応・生体反応を指標とする利点がある。
ポジショニング
特定の医薬品が市場でどのように位置づけられるかを決定するプロセスで、製品の特性や利点を明確にし、競合製品と差別化するための戦略的なアプローチである。
マウス同所移植モデル
マウスがん細胞を用いた移植モデルの一つで、マウスがん細胞を、同系マウスの癌細胞由来組織へ移植したモデル。例えば、マウスの肝がんを同系マウスの肝臓へ、マウスの肺がんを同系マウスの肺へ移植したモデルなどが挙げられる。
モダリティ
「モダリティ」とは、医薬品がどのような材料、フォーマットで作られているか、その分類を指す。具体的には、低分子医薬、抗体医薬、核酸医薬、遺伝子治療薬、細胞治療薬などがある。近年では新しい技術の進展によりモダリティの多様化が進んでいる。
薬効スペクトラム
薬効の作用範囲
薬物相互作用(Drug Drug Interaction: DDI)
複数の薬の飲み合わせによって効果が増強したり、薬の持つ効果が打ち消されてしまうことを指す。 また、薬物相互作用によって新たな副作用が生じることもある。
有害事象(Adverse Event: AE)
薬物との因果関係がはっきりしないものを含め、薬物を投与された患者に生じたあらゆる好ましくない、 意図しない徴候・症状、または病気を有害事象という。 この中で、死亡に至るもの、生命を脅かすもの、治療のため入院又は入院/加療期間の延長が必要なもの、永続的又は重大な障害/機能不能に陥るもの、先天異常を来すものを重篤な有害事象という。 薬物との因果関係がある場合、有害反応[Adverse Reaction]、副作用と呼ぶ。
用量反応関係、用量反応性(Dose-response relationship)
化合物の投与量と反応(薬効・毒性)の関係を表す。 化合物によっては用量が高くなると作用が頭打ち、或いは減弱するものもあるため、十分な用量域で反応との関係を調べることが望ましい。 有効用量、臨床有効血中濃度予測、安全域を求める指標となる。
予防効果
予防効果とは、ある化合物が病気や健康問題の発生を防ぐ能力のことである。特に創薬では、未発症の動物モデルに化合物を投与した時、疾患の程度が未治療動物に比べ軽減している現象を指す。
リード核酸
創薬において、HTSやin silico screeningによって見いだされた端緒となる化合物をヒット化合物と言う。このヒット化合物を合成展開することにより、薬理活性を上げ、安全性をある程度確保した化合物をリード化合物と言う。リード核酸とはリード化合物の核酸版となる。
リード(化合物)
ヒット化合物(シード化合物)をもとに合成展開・評価を繰り返し、得られた高薬理活性で、安全性をある程度確保した化合物をリード化合物という。
類縁タンパク質
種差等によりその遺伝子が全く同一ではないながら、それらの祖先遺伝子をたどると同一である遺伝子の情報からそれぞれ生体内で作られたタンパク質のこと。よって、アミノ酸配列が類似しており、ホモログ、パラログ、オーソローグが含まれる。3者の違いは以下の通り。
ホモログ(homologue):遺伝子や形態が共通の祖先に由来すること
パラログ(paralog):遺伝子重複によって生じたホモログ
オーソログ(ortholog): 種分化の際に分岐したホモログ
ADME(Absorption, Distribution, Metabolism and Excretion)
生体に投与された薬物が、吸収されて体循環血液中に入り、生体内に分布し、肝臓などで代謝され、尿中などに排泄されて生体内から消失する過程。吸収(absorption)、分布(distribution)、代謝(metabolism)、排泄(excretion)の頭文字。
CYPs 阻害
チトクロム P -450(CYP)による代謝反応は、薬物の体内からの消失に主要な役割を果たしている。薬物動態学的な相互作用の多くは代謝に関連したものであり、その大半はチトクロム P-450(CYP)の酵素阻害に基づくものである。CYP には複数の分子種が存在し、薬物代謝に関わる分子種の基質特異性は低い。このため複数の基質が同時に存在する場合には代謝反応の競合が起こり、お互いの代謝が阻害されて薬物-薬物間あるいは薬物-食品間などで相互作用と呼ばれる現象が起こる。薬物相互作用は、薬物の血中ならびに組織内濃度の変動、ひいては治療効果の変化や重篤な副作用の発現を引き起こす原因となる。従って、より安全な医薬品の開発には、代謝に関わるCYP 分子種の同定とCYP 阻害作用が欠かすことのできない評価項目となっている。
DepMap (the Cancer Dependency Map)
米国ブロード研究所(Broad Institute)と英国サンガー研究所 (Wellcome Sanger Institute)が中心となって提供する、がん細胞の持っている遺伝子変異や発現量変化などの特徴と、がんが生存し成長するために依存している遺伝子の情報を関連付け、治療の標的を発見するのを助け治療法の開発を促すことを目的としたデータベース。
hERG
hERG は、human ether-a-go-go related gene の略語で、ヒト心臓の心筋に発現しているhERG から発現するタンパク質のことで、心筋活動電位の再分極を担うカリウムイオンチャネルである。hERG に対するIC50 値が10μM 以下の薬物は,心不全につながるQT 延長のリスクが高いとされる。
ICH M3
ICH(医薬品規制調和国際会議)による「臨床試験のための非臨床試験の実施時期」に関するガイドライン。
KOL
Key Opinion Leader(KOL)とは、特定の分野や業界で影響力を持つ専門家や権威者を指す。彼らは、その専門知識や経験を基に、他者に対して意見や情報を提供し、特にマーケティングや医療分野で重要な役割を果たす。
NCE/NME(New Chemical Entity/New Molecular Entity)
今までに開発・承認されていない新規化合物、新規の構造を有する化合物成分のこと。
Passive targeting
利用薬物運搬体(キャリアー)の粒子径や親水性などの物理化学的性質や、生体の異物処理機構、解剖学的・生理学的特性など生体が自然な状態で備えている機能を受身に利用して薬物の体内動態を制御する方法。より積極的に特別の工夫をすることにより標的指向化を図るアクティブターゲティングの対語である。
PCT出願
PCT出願(特許協力条約出願)とは、特許を国際的に保護するための手続きである。この制度は、特許協力条約(PCT)に基づいており、1つの出願で複数の国に特許を申請できる仕組みを提供する。
PDXモデル
Patient derived xenograft の略。汎用されてきたがん細胞株由来のゼノグラフトと区別する意味で、ヒト患者由来の腫瘍を、異種の細胞に対して拒絶反応を起こさない免疫不全マウスに直接移植したモデル.個々の患者の腫瘍組織を実験動物レベルで忠実に再現するモデル。PDX モデルでは、作成された腫瘍の組織構造が患者さんの腫瘍の組織構造と近似しており、腫瘍の不均一性が保たれ、さらに遺伝子異常が維持されるという特性が知られている。患者さんの抗がん薬の効果とPDX での抗がん薬の投与結果が高い一致率を示すという報告もあり、より患者さんでの有効性を予測できるモデルである。
PHR
PHR(Personal Health Record)とは、個人の健康や医療に関する情報を一元的に管理するデータのことである。具体的には、病歴や治療歴、アレルギー情報、定期健康診断の結果、バイタルデータ(体温、血圧など)、処方箋や検査結果等が含まれる。PHRは、患者自身が自分の健康情報を管理し、必要に応じて医療機関と共有することができるため、より適切な医療を受ける手助けになる。
PK/PD(Pharmacokinetics/Pharmacodynamics)
薬物投与時の薬物動態はpharmacokinetics(PK)、その反応性(薬物動力学) はpharmacodynamics(PD)と呼ばれる。 PD は多くの場合、薬物濃度やPK パラメータに関連し、それらの関係を表す概念を総称してPK-PD と呼ぶ。
PROTAC
PROTAC(Proteolysis Targeting Chimera:標的タンパク質分解誘導化合物)は、標的タンパク質(POI:protein of interest)に結合するリガンドとE3 ユビキチンリガーゼに結合するリガンドの2 つの活性領域をリンカーで繋いだヘテロ機能性低分子で、ユビキチン-プロテアソームシステム( UPS )を利用して細胞内の標的タンパク質の分解( Targeted Protein Degradation:TPD)を誘導する低分子化合物。これにより、酵素活性を持たずに従来薬剤標的となり得なかったタンパク質の選択的な分解が可能となった。
Rule of five/
Lipinski's rule
経口バイオアベイラビリティー(経口投与された薬物が体内に吸収される程度)に優れた薬物を予測するための大まかな経験則。 ファイザー社の Lipinski らが提唱したもので、5 の倍数にちなむ以下の項目よりなる。 (1) 分子量500 以下、(2)cLogP(脂溶性パラメータ計算値)5 以下、(3) 水素結合 donor(OH とNH)5 以下、(4) 水素結合 acceptor(N, O など)10 以下。
RWD
RWD(Real World Data)とは、医療現場で実際に収集されたデータのことを指す。これは、臨床試験などの制御された環境ではなく、日常的な医療提供の中で得られた情報である。具体的には、電子カルテデータ(患者の診療記録や治療経過)、レセプトデータ(診療報酬明細書に基づく医療行為や患者情報)、患者レジストリデータ(特定の疾患に関する患者の情報を集めたデータベース)、ウェアラブルデバイスからのデータ(健康状態をモニタリングするためのデータ)などが含まれる。
scientific rationale
Scientific rationale(科学的根拠)とは、特定の研究や実験が行われる理由や背景を示す概念である。これは、研究の目的や方法が科学的に妥当であることを説明するための基盤となる。
TPP
予測される効能・用法・用量・投与形態、剤形、有害反応などをまとめたもので、事業性評価やGo/No go判断の材料となりうる。近年開発初期段階からTPPを設定することが求められる傾向にある。
最終更新日 令和7年1月28日