GEM Japan OmicsXchange Podcast Episode 5: COVID-19 Beacon: An Interview with Marc Fiume

「世界中の研究者がウイルスゲノム検索に使えるCOVID-19 Beacon について」(概要)

COVID-19 Beaconとは

COVID-19 Beaconは、COVID-19(疾患名)に起因する新型コロナウイルス(SARS-Cov-2)のゲノム配列の地理的および進化的起源、特定されたSARS-Cov-2のゲノム変異を、公開されているウイルスゲノム全体から見出すことを可能にする検索エンジンです。Beaconは世界中で公開されており、5,600を超えるゲノムシークエンスが毎日更新されています。 COVID-19 Beaconの最新バージョンは、GA4GHドライバープロジェクトELIXIR BeaconのChampions の一人であるJordi Rambla氏 (ELIXIR Spain / EGA)、およびGA4GH内の国際連携チーム、特にDiscovery ワークストリームによって構築されています。このプロジェクトでは「この突然変異を持つウイルス配列がありますか?」という問いにyes/noで答えるBeaconの性質を利用し、見つかったウイルスシークエンスに関する情報と、ウイルスが見つかった場所などの情報を合わせて提供します。これらの情報からウイルスがどのように変異しているのか、どこから来ているのか、そしてウイルスが世界中に伝染するにつれてどのように進化するのかという研究を進めることができます。

データ共有の意義

研究者がCOVID-19の研究を進めるためには、ウイルスと感染者に関する情報の量と多様性を増やす必要があり、世界中でリアルタイムにデータを共有することが非常に重要です。リアルタイムに共有される情報に臨床的なメタデータが加われば、これを使用してウイルスの進化系統や感染経路、突然変異率、潜在的な重複感染を追跡できます。ウイルスの種類がそれぞれの地域で固有であるため、国や地域でウイルスの局所的な進化を追跡することも非常に重要になります。COVID-19 Beaconのようなデータ共有技術を利用して、ウイルスの局所的な進化を追跡し、より適切な治療と診断ツールの設計や研究することは、非常に意義があります。

BeaconはCOVID-19研究を加速させるか

COVID-19 Beacon の情報を分析することで、次のことに役立ちます。1つ目は、ウイルス株の識別です。人々が保有するウイルス株を理解するだけでなく、診断と治療の上でも非常に役立ちます。2つ目は、感染経路の追跡です。これは公共政策の有効性を分析し、より厳しいガイドラインを適用する必要がある場所を、判別するのに役立ちます。物理的な移動のない狭い地域内で生じたクラスターから、ウイルスが進化するにつれて変化する遺伝的要素を調べることで、突然変異率を調べることもできます。3つ目は、異なるウイルス株同士の、各ウイルス由来タンパク質の分子構造の比較から、薬剤候補の探索に活用できます。例えば、SARSのゲノム配列由来のタンパク質と、その97%の相同性がある新型コロナウイルスのゲノム配列由来の類似タンパク質の立体構造とを、物理的に比較することで、既存する薬剤に対して、用途転用できるかどうかを調べることができます。

COVID-19 Beaconにより、ウイルスゲノム情報への接続が容易になることで、ウイルス感染したヒトの生体試料から取得される、ウイルスゲノムや表現型の各データと、臨床的なメタデータが、より簡単に利用できるようになると期待されています。また、これらを特定のウイルス株に関連付けるために、類似するウイルス株の既存データから、遺伝的危険因子と予後指標を分析することも可能となります。

GA4GHニュース(英語):OmicsXchange Podcast Episode 5: COVID-19 Beacon: An Interview with Marc Fiume

(記事協力:AMED科学技術調査員 秦千比呂)

最終更新日 令和2年7月9日