RIOネットワーク REFINED-IC 研究班ウエブサイト 脳卒中超急性期臨床試験における適切な同意手続きの確立に関する研究(福田班)

研究概要

私たちが目指していること

私たちの研究班では、超急性期の治療を対象にした臨床試験における同意の手続きに関して、海外の最新の動向や国内の実態を調査しています。そして、我が国における超急性期臨床試験において、適切な同意の手続きを確立する上での課題と解決策を検討することを目指しています。この課題の解決により、脳卒中をはじめとする様々な超急性期治療の開発に貢献し、将来の多くの患者さんに対して適切な治療を届けるお手伝いができればと考えています。

脳卒中は日本の深刻な健康課題

脳卒中は、日本において死因の第4位を占め、介護を要する疾患としても第2位の位置を占めており、麻痺や意識障害などの後遺症のため、本人だけでなく、介護をするご家族の負担が大きいことが問題となっています。そのため、我が国が超高齢化社会を迎える中、この国民病に対する治療法の開発が急務となっています。近年の脳卒中に対する診療では、早期診断・早期治療により脳のダメージを少なくできる可能性があるため、発症から数時間以内の超急性期に治療を開始することが重要とされています。

急性期の臨床試験について

臨床試験とは、なぜ臨床試験が必要なのか

臨床試験とは、新しい薬・新しい治療法の効果や安全性を科学的に検証する重要な取り組みであり、将来に向けてより効果的な治療法を開発するために不可欠なものです。計画的かつ厳密な管理のもとで臨床試験が行われることで、新しい薬・新しい治療法の効果や安全性について、信頼できる結果を得ることができます。医療現場では、このような臨床試験を通じて、脳卒中治療の進化と患者さんの健康増進に貢献することを目指しています。
 

急性期をターゲットとする臨床試験の課題

脳卒中の治療のように、急いで始めなくてはならない治療の開発を目的とした臨床試験の場合、特別な問題が発生します。なかでも、発症後すぐに治療を開始する必要があるため、患者さんから臨床試験に参加することへの同意を迅速にいただくことが大きな課題となります。

通常、病院で新しい薬・新しい治療法の試験に参加するかどうかを患者さんに提案する時、医療者はその試験についてわかりやすく説明します。この説明は、患者さんが試験の内容をしっかり理解して、自分で参加するかどうか決められるようにするためのものです。もちろん、医師は患者さんにとってその試験への参加が適切だと考えて提案しますが、最も大切なのは患者さん自身が納得して参加を決めることです。

しかし、脳卒中の患者さんは、病気の影響で意識がはっきりしなかったり(意識障害)、話すことや理解することが難しかったり(失語)することがあります。そんな時、患者さん自身が臨床試験への参加を決めるのは難しいです。そのため、患者さんに代わってご家族に臨床試験の説明をし、同意をしていただくことがあります。ただ、病気は突然起こるものなので、ご家族とすぐに連絡が取れないこともあります。また、発病直後は、患者さんもご家族もとても緊張しており、心理的なストレスが大きいです。そんな時は、臨床試験についての説明を聞いても、患者さんやご家族にはそれを十分に理解し、意思を示す余裕がないかもしれません。

一方で、脳卒中のように、緊急の治療が必要な病気の場合、臨床試験への参加に関する同意を得るのに時間をかけ過ぎると、治療の効果が落ちてしまう可能性があります。さらに、臨床試験には適しているけれど、さまざまな理由で試験について説明を受ける機会がなかった患者さんを臨床試験から除外してしまうと、試験の結果が特定の患者さんに偏ってしまい、脳出血患者さん全体の傾向を正確に反映しなくなる恐れがあります。

海外の動き

このように緊急に治療を開始しなければならない病気の臨床試験に関して、欧米では同意の手続きをどうするかについて議論が進んでいます。たとえばアメリカでは、特定条件を満たす臨床試験で、患者さんや家族からすぐに同意を得るのが難しい場合でも、患者さんが試験に参加できるようにしています。また、詳細な書面による説明に時間がかかる場合、口頭での簡単な同意だけで患者さんが試験に参加することを認めている国もあります。

近年、 “超急性期臨床試験の同意をめぐる問題“は多くの学術誌に関連研究が発表されるなど、全世界的にも注目され、解決が望まれる課題となっています。私たちは、日本の急性期の臨床試験での適切な同意のありかたについて、真剣に考えています。

脳卒中や他の急な病気は、誰にでも突然起こり得るものです。ぜひ、この問題について皆さんもご一緒に考えていただければ幸いです。

ロゴについて

私たちの研究班のロゴマークは、「急性期治療を対象とした臨床試験」を象徴しています。
救急車とストップウオッチ、注射器の針(秒針)が組み合わさり、緊迫感と迅速な対応が必要な状況を表現しています。
また、本研究班の検討テーマである「同意」と、研究者と市民が協力しながら臨床試験の未来を共に作り上げていく様子を、握手を交わすデザインで表現しています。 

                                          

お問い合わせ先

宛先 脳卒中超急性期臨床試験における適切な同意手続きの確立に関する研究(REFINED-IC)研究班 (代表:国立循環器病研究センター データサイエンス部)
E-Mail refined-ic“AT”ncvc.go.jp 
備考
※E-mailは上記アドレス“AT”の部分を@に変えてください。

最終更新日 令和6年2月22日