バイオバンク連絡会 第3回 連絡会テーマ バイオバンク利活用について考える(第1弾)

開催概要

開催日時

平成30年2月10日(土)13:30~18:00(交流会:17時00分~18時00分)

会場

読売新聞ビル20階 201会議室(東京都千代田区大手町1-7-1)

趣旨

「貯めるだけでなく、活用されるバンク」を目指し、バイオバンクを運営している機関の方々に対して   

  • どうなるとより利活用されるバンクになるのか
  • 利活用を妨げている要因は何なのか、どこにあるのか
  • 利活用されるためにはどういうことが求められているのか
  • どういうことに取り組むべきなのか

といったことについて、バイオバンクユーザーや運営者とユーザーを仲介するような方々からの視点で、 率直なご意見・ご要望を話題提供として出して頂く予定です。
会場の皆様と共に解決に繋がるような議論を喚起し、バイオバンク運営者自らが行動に落とせるような会を目指しています。
更に「必要とする試料・情報がどこのバイオバンクにどれくらい保存されているのか?」というユーザーの問い合わせに迅速に応えるため、バイオバンク情報を横断的に検索してバイオバンク利活用に役立てるようにしたいと考えています。 現在開発中のプロトタイプの紹介、デモンストレーションもあわせて行い、会場の皆様より意見やコメントを頂戴して、 更なる改良に反映させたいと思います。

演題・講師

  1. テーマ趣旨説明
    座長 バイオチップコンソーシアム事務局長 中江 裕樹 氏
  2. ユーザー(企業)からの声「一体バイオバンクに何を求めているのか?」を聞く(仮題)
    日本製薬工業協会 研究開発委員会専門副委員長 赤塚 浩之 氏
    日本臨床検査薬協会 法規委員会副委員長 内山 浩之 氏
  3. ユーザー(アカデミア)からの声「一体バイオバンクに何を求めているのか?」を聞く(仮題)
    国立がん研究センター研究所 分子細胞治療研究分野 主任分野長 落谷 孝広 先生
    広島大学大学院医歯薬保健学研究科 薬学講座 教授 田原 栄俊 先生
  4. 「必要とする試料・情報がどこのバイオバンクにどれくらい保存されているのか?」を知るためのバイオバンク情報横断検索の試み(仮題)
    東北メディカル・メガバンク機構 バイオクリニカル情報学分野 准教授 荻島 創一 先生
  5. 総合討論

開催結果

質疑概要

※下記、SlideShare からもご覧いただけます。

Ⅰ: 製薬協、製薬企業利用に関する議論総括

  1. バイオバンクの利用ニーズについて
    少量の試料を試しで使用。詳細データは余り必要無し。「分譲」を想定。
    複数のバイオバンクに試料が跨がり、一つの「共同研究」では出来ないような場合にも期待。
  2. 企業の使用目的において、
    ①化合物について
    作用機序や化合物の反応性を見る際は細胞株やPDX等生きた物が必要。確認だけなら保存試料もあり得る。
    ②バイオマーカーについて
    探索段階では多量の試料が必要。検証段階では少数の試料がバンクにあれば、活用することもあり得る。社内(創薬研究)でこれを指標にして化合物評価をするような場合。
    承認申請に提出する試料は管理された試料、データ。患者の診療情報が紐付いている必要あり。
    ※バイオバンク側の要望:
    ・社内開発段階、承認申請段階の各フェーズでバイオバンクに対して何を求めるか? を知りたい。
    ・承認申請時では前向き試験で試料を採らないと意味がないのか? の情報がわかるとバイオバンク側は有り難い。
  3. 創薬でのバイオバンク利用について
    前臨床とフェーズⅠの間がバイオバンクの出番という話はよく聞く。フェーズⅠが始まる前に出来るだけ効率的に予見するのが非常に重要。
  4. 自由の利くバイオバンク利用への期待
    製薬企業の場合、社内のIRBを通すためには目的外利用に対する強い制限有り。
    民間企業で「共同研究」とは別に自由の利く(少数例でも手軽に使える、但し臨床情報は限られる)利用をバイオバンクに期待。
  5. バイバンク利用種別について
    詳細な条件が必要な場合は「共同研究」
    プレリミナリーに試しに少量試料を使用するニーズは有りそう。
  6. 外資系企業でのバイオバンク利用における社内審査
    外資系企業でも基本的には日本で入手可能な試料については「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」を基に倫理委員会で判断。
  7. バイオバンクに申し込んで使えるようになる迄の期間について
    海外から入手する場合と同程度(1、2カ月位)が希望。

Ⅱ: 臨薬協関係での議論総括

  1. バイオバンクを利用する狙い
    臨床性能試験は通常「共同研究」で実施。
    倫理対応について全くレギュレーションが存在せず。医学研究に関する倫理指針のみが拠り所。
    医療機関との「共同研究」締結には、研究倫理委員会で承認を得るのが現状。研究倫理委員会に対する企業からの要求、説明に関して、研究倫理委員会での結論が速やかに出ない。
    研究倫理委員会は医療機関の先生が申請。いつ開催し、いつまでに結論が出るのかスケジュール感が把握できない。治験審査委員会(IRB)で審査をして欲しい。IRBは企業が申請可能。
    バイオバンクの試料は既に臨床情報が付き、倫理的対応済み。
    ※バイオバンク側への要望: バイオバンクの利用審査をクリアにした手続に簡素化して頂くと、はるかに早く予見性のある試験ができる。そういう意味でバイオバンクは大きなメリット。
  2. 予備臨床のような利用ニーズはある。
    本格的な臨床治験の前に、開発しているマーカーが本当に検査の役に立つのかどうかを調べたい。「共同研究」を組んで倫理委員会を通すのはハードルが高い。
  3. バイオバンクの研究成果の公表について
    既存の診断マーカーと比べて更に感度の良い新たな診断マーカー、ある疾病の診断マーカーの開発が重要。この場合の臨床性能試験はバイオバンクをどこまで利用可能かが現状不明。
    その(例えば疾病コホート研究成果から、そこのバンクにはこの疾病に関する有病検体と無病検体が絶対に有るのではないかと推察できるような)ヒントとして各バンクの研究成果を広く公表して頂くと、使うための環境として有り難い。
  4. 体外診断用医薬品開発における新規マーカーの申請について
    2施設以上という基準あり。BBJ等のような複数施設からの試料がまとめて入手可能なバンクは利用メリットがある。
  5. 1試料当たりのサンプルボリュームについて
    量的に問題無し。分譲時に小分けをする際の凍結融解の品質がむしろ問題。
  6. バイオバンクの倫理について
    倫理的なリスクはほとんど収集段階で生じていて、出す段階においては極めてリスクは小さい。
  7. 患者の参加者意識について
    同意を取っている時に『企業に出す』と言うと逆に喜ぶ方がすごく多い。
    企業に出すと製品として自分のところに戻ってくるが、純粋にアカデミックな研究に使われても論文で終わってしまうということが薄々わかっている。
    患者の目的にもかない、そもそも疾患バイオバンクというのは新しい診断法や治療法を作るため、出口に一番近い、目的にかなった利用法である。

Ⅲ: アカデミア関係についての議論総括(※落谷先生、田原先生のセッションをまとめて)

  1. 臨床情報の付加、紐付けについて
    本研究(miRNA解析)では、まず早期診断を主眼にしたため臨床情報は非常にシンプルなものでスタート。
    プロジェクトの最後で、全ての臨床情報をこのmiRNAの一つ一つに紐付けるという作業をしてデータベースに登録するので、ここからが問題になってくる。
  2. バイオバンクへの支払いについて
    バイオバンクが維持運営できるために「共同研究」として費用を支払う。「共同研究」の企業はちゃんとお金を用意している。
    問題は能力の高い人材(リサーチ・コンシェルジェ等)安定的に雇用する人件費。国、AMEDが面倒をみる仕組みが必要。
  3. 海外への提供について
    議論はこれから。外資系企業が日本のバイオバンクを使えるかどうかは非常に注目しているところ。
  4. 疾患データ等の患者情報のクラウド化について
    自サーバーに置くよりもクラウド化する方がセキュリティーは高くなりつつある。

Ⅳ: 横断検索における議論総括

  1. 検索後のバンクへの問合せ対応について
    ここが最も労力、時間を要する。手間をかける必要がありヒューマンエフォートが重要な問題。

V: 総合討論での議論総括

  1. 海外利用の事例
    UK Biobankは広く世界中に出している。解析したデータをバイオバンクに戻すという条件付き。バイオバンクに戻って共通財産になるのであれば、外に出すことは随分可能性がある好例。
  2. 『患者さんが枯渇しない限りバイオバンク検体が枯渇することは無い』

お問い合わせ先

宛先 バイオバンク連絡会事務局
Tel 03-6870-2228
E-Mail genome-support“AT”amed.go.jp
備考
アドレスは“AT”の部分を@に変えてください。

最終更新日 令和元年12月24日