バイオバンク連絡会 第7回 連絡会テーマ バイオバンク利活用について考える(第2弾)

開催概要

開催日時

2019年4月20日(土)13時30分~17時30分

会場

読売新聞ビル20階 201会議室(東京都千代田区大手町1-7-1)

趣旨

「貯めるだけでなく、活用されるバンク」を目指し、バイオバンクを運営している機関の方々に対して

  • どうなるとより利活用されるバンクになるのか
  • 利活用を妨げている要因は何なのか、どこにあるのか
  • 利活用されるためにはどういうことが求められているのか
  • どういうことに取り組むべきなのか

をテーマに、バイオバンクユーザーや欧州のバイオバンクの方々に話題提供いただきディスカッションさせていただくこととしました。

演題/内容・講師

テーマ紹介

一般社団法人日本生物資源産業利用協議会 理事/特定非営利活動法人バイオ計測技術コンソーシアム 事務局長 中江裕樹

  1. 生体試料のプロバイダー経験を聞く
    ①住商ファーマ取扱いのヒト組織試料について
    住商ファーマインターナショナル株式会社 創薬支援部 副部長 小関さゆり
    ②生体試料プロバイダーの経験:「海外の動向・何を求められているか」
    株式会社ビジコムジャパン バイオマテリアル部 部長 北田聡子
  2. 「マウスからヒトへ」をキーワードに非ヒト試料研究者にヒト試料と情報を利用した研究に進むためのバイオバンクの利用
    国立研究開発法人日本医療研究開発機構 基盤研究事業部バイオバンク課 主幹 安田知一
  3. 欧州のバイオバンクの話題・課題提供
    ①Databank Services and Global Market. Industry participation into the biobank community
    Nino da Silva, Executive Vice President, Sales & Marketing BC Platforms Finland
    ②Biobanks and Biobank business models in Europe (Web中継)
    Fay Betsow, PhD, HDR Chief Scientific Officer, Integrated Biobank of Luxembourg(IBBL)
  4. 質疑応答、ディスカッション

開催結果

当日の主な質疑のポイントをまとめました。
(注)内容については座長、発言者の確認をとって公表しています。

【全体的な主なポイント】

  • ボトルネックかつ一番対処しにくいのが倫理の問題。バイオバンク検体に特化したような中央倫理審査委員会を立てるのはどうか。
  • 研究計画書を指導しなければいけないバイオバンクもある。計画書作成等のスキルが徐々に蓄積されつつあるバイオバンクもある。ヒトサンプルを使うので、やってみないと分からない実験は基本的にはやってはいけない。ヘルシンキ宣言で禁止されるプロトコルで実験をしてはいけない。計画書の書き方の教育、ガイドが必要。
  • 研究者間で欲しい検体を融通して入手しているのではないか? ニーズは明確なのにバンクの利活用が進まないのは、研究者間しか使わないのが問題ではないか
  • 倫理審査についてアカデミアと企業でギャップある。ギャップを埋める場があると良い。
  • どういう検体がどういう criteria だったら倫理委員会なしに共同研究ではなしに提供できるのかという議論はもっとあって良いように思う。

【生体試料プロバイダーからわかった主なポイント】

  • 患者のメリットは、社会への還元という患者の意識が強い。病院のメリットは非常に良質の試料を自分達でも使えること。
  • 病院研究者を優先した試料採取はない。
  • 患者の金銭の授受は基本無し。病院の保管施設等のための資金提供はある。
  • ニーズに合わせたカスタム採取は多いが、ニーズを予測した採取・バンキングも多い。
  • 製薬企業が注目の稀少疾患については、プロバイダーと幅広く問合せたりプロスペクティブに採取可能かの観点で確認する。
  • Indivumed社のビジネスモデルを日本で住商ファーマ社が単体で展開するつもりはない。
  • Indivumed社はビジネスとして十分成立している。
  • 入手までの期間は2週間から場合によっては1か月近くかかる。
  • 倫理審査はその都度実施せず、プロバイダー契約の段階で実施。日本国内の利用であれば包括的に承認を取っている企業もあり。
  • 研究内容の審査はしていない。
  • 試料の利用目的、利用者情報を提供者・協力者へ戻すことはしていない。
  • 製薬会社が国内のバイオバンクを嫌う、海外を探す理由は、手続きがネック、煩雑なペーパーワークがあるから。
  • ビジコムジャパン社と取引のある海外バイオバンクで、ISBERやIBBLのPT(Proficiency Testing)を受けて第三者認証を取っている施設もある。
  • 取引している海外バイオバンクの中には、在庫管理や今後採取する生体試料のトレンドニーズだけでなく1、2年先のbankingを考えた情報入手をしている。
  • 日本人の検体ニーズは高い。代品としてベトナム人、米国在住の日本人を紹介する。
  • サンプル保証はバイオバンクが第三者機関に認定を取る形。
  • 認定標準であるISO20387が出来上がったので、日本でも認定を受ける仕組みができる予定。
  • 健常人の検体は基本的に健康診断で来た方にボランティアとして採取。年齢を合わせるのが難しいため高齢者健常人のbankingが多くなる。
  • 検体採取は一定のプロトコルでやって標準化している。

【欧州のバイオバンクからわかった主なポイント】

  • BC|RQUEST では匿名化データのみを扱い、患者特定ができず、メタデータ抽出は元データから切り離されるため、GDPRの議論は避けられる。
  • バイオバンクとは'data partner'という協定を結び、患者・個人のデータを公開、使用する権利を有することをバイオバンクが証明している。正規の同意を取っていれば良いということを示す唯一の形である。
  • 日本の患者を救うためには国内外の日本人のデータが必要であり、データがシェアされ、グローバルネットワークの一部になること。
  • バイオバンクのKPI、SIを導入するためには、まず目標を定義しなければいけない。
  • バイオバンクシステムを維持するために必要な私的、公的予算の割合は、実際高い値で10%(90%は 公的資金)。
  • バイオバンクの維持に公的資金を得ている場合の民間セクターの興味と公的(政府)セクターの義務のバランスについて。公的資金は必要で、公的資金なしには維持不可能。公的資金で民間企業活動を支援すべきではない。最終的な製品化は企業なので、企業とのコラボレーションが必要だが、公的資金で支援しないよう適切にコスト計算をして解決すべき。
  • フォーカスを合わせて、ユーザが固定していればサステイナブルの可能性があるかも。Trusted Biobank Networkみたいなものを作りながらオンデマンド型のバイオバンクも一つの手。

お問い合わせ先

宛先 バイオバンク連絡会事務局
Tel 03-6870-2228
E-Mail genome-support“AT”amed.go.jp
備考
アドレスは“AT”の部分を@に変えてください。

最終更新日 令和元年12月24日