国際事業課 HFSPフェローシップ受賞者からのメッセージ(2012年度受賞 石内 崇士さん)

HFSPフェローシップ受賞者からのメッセージ

HFSPフェローシップ受賞者から、これから応募を検討している若手研究者の方に向けてメッセージをいただいています。英語での申請書作成や、ホスト研究者とのコミュニケーションについて工夫した点など、是非参考にしてください。

国内では無謀だと言われそうな内容でも、HFSPの場合は違った評価をしてもらえる

受賞者年度 2012年度
受賞者氏名 石内 崇士
受賞研究テーマ Epigenetic dynamics during mouse preimplantation development
留学前所属 神戸理化学研究所 竹市雅俊研究室(日本)
留学先所属 IGBMC Torres-Padilla研究室(フランス)
留学期間 2012年度~2015年度
写真1枚目

Q1.HFSPに応募した理由

写真2枚目
ラボメンバーたちと。
一番右がボスのMaria-Elena Torres-Padilla

博士課程の修了後はすぐに海外留学をすると決めていました。これは多くの先輩たちから海外に行くならそうしたほうがいいとアドバイスをもらったからです。この先輩たちは、多くのフェローシップには申請資格の中に「博士号取得後○年以内の者」という制限があることを知っていたのです。HFSPフェローシップも例外ではなく、博士号を取得して3年以上経過してしまうと申請できないようです。

私は、HFSPのフェローシップ制度については、在籍していた研究室の先輩などが獲得されていたことから身近なものとして認識していました。HFSPは研究分野を変えることを推奨しており、これはHFSPのフロンティア精神に基づくものと思われます。実際、私は大学院時には細胞接着・細胞骨格といった分野で研究をしていましたが、ポスドクからは幹細胞・エピジェネティクスの分野へと研究分野を変えました。しかしながらこれは極端な例であり、これほど大きく変更した人にはほとんど会うことはありませんでした。分野の変更の背景には、私が大学院時に、細胞のかたちが遺伝子発現によって支配されうるという観察をし、そこから次第に興味が変化していったことがあげられます。分野を大きく転換する場合、HFSPに応募するには新しい分野の知識を身に付けることが必須だったので論文や教科書をたくさん読みました。

Q2.HFSPのメリット

HFSPフェローシップのメリットを考えると、まず支給される金額と期間が最初に思い浮かびます。私の場合は、妻と子供一人(当時1歳)とともに留学しましたが、生活するには十分な金額に加えて扶養手当ももらうことができました。さらには、引越しにかかる費用も一部賄ってもらえます。このようなサポートが3年も続くというのは、他のフェローシップにはあまり見られません。また、年に1回はHFSPのフェローシップやグラントの受賞者が集まるミーティングがあり、世界で活躍する研究者と交流する機会がありました。これは、HFSPが重視する国際的なネットワークや共同研究による科学の推進の一環として催されていると理解しています。こういった機会を介して、HFSPには国際的に活躍できる研究者へと育ててもらったという感覚があります。

Q3.申請までの準備

HFSPのフェローシップに応募する前に、ポスドクとしての受け入れ先を決める必要があります。私の場合は専門分野が異なっていたので、多くの論文を読み、興味がマッチしそうなPIを探していきました。そして、メールやスカイプでのやりとりによって受け入れ先を決定しました。メールを書く際にはこちらの情熱を伝えることが大事です。次に、そのボスと相談しつつ、どのようなプロポーザルでフェローシップを申請するかを決めました。ボスからプロジェクトの大枠を聞いた後は、どのように実験を組んでいくかを自分で考え、英語のプロポーザルを作成しました。違う分野で研究していた人間が新しい分野のプロポーザルを書くのはかなり大変ですが、その点については、たまにボスに相談にのってもらい、添削してもらうことで申請書を完成させました。

Q4.海外の研究経験で得られたこと

写真3枚目
著者。ストラスブールのHFSP officeの前で娘と。

 私はフランス(ストラスブール)に留学したのですが、はじめは日本の研究環境との違いに戸惑いました。しかし、研究を進めるには自分でどうにかしなくてはいけないということもあり、研究所内のあらゆる研究室に出向いては試薬をわけてもらうなどのことを日常的に行うようになりました。このような経験によって大幅にフットワークが軽くなったことを実感しています。帰国後に多くの研究室と積極的に共同研究を行うことができているのも、このような経験のおかげだと思っています。また、研究室内は多国籍で、フランス以外にイギリス、クロアチア、ポーランド、ハンガリー、シリア等のあらゆる文化を背景に持つ人たちと同じ時間を過ごすことができ、この経験は生涯の財産であると確信しています。彼らとは帰国後も交流があり、世界に友人がいることを実感します。

Q5.今後のHFSPへの応募者に向けたメッセージ

海外留学に関する相談をうけることがたまにありますが、中には留学せずに国内にとどまるほうが、キャリアパスにとっては有利なのではないかということも耳にします。個々の考え方があるとは思いますが、私は留学することを常におすすめしています。それは、留学が人を成長させ、人生を豊かにすることを実感したからです。また、海外留学を決めたのであれば、HFSPフェローシップに積極的に応募することをおすすめします。フェローシップがあれば、ボスに雇われているわけではないので研究室の財政状況に影響されずにすみますし、研究の自由度も大きくなります。応募する際には、独創性とチャレンジ精神を基盤とした申請をされるとよい結果につながると思います。国内では無謀だと言われそうな内容でも、HFSPの場合は違った評価をしてもらえる印象があります。迷いがあるのならとりあえず留学し、HFSPには挑戦的な内容で応募しましょう、というのが私からのメッセージです。


 

最終更新日 平成30年7月20日