受賞者年度 | 2010年度 |
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受賞者氏名 | 山形 一行 |
受賞研究テーマ | The epigenetic role of TET family proteins on development of myeloid leukemia |
留学前所属 | 筑波大学大学院 深水昭吉研究室(日本) |
留学先所属 | Harvard Medical School/Boston Children’s Hospital; Yang SHI研究室(米国) |
留学期間 | 2009年度~2013年度 |
国際事業課 HFSPフェローシップ受賞者からのメッセージ(2010年度受賞 山形 一行さん)
HFSPフェローシップ受賞者からのメッセージ
HFSPフェローシップ受賞者から、これから応募を検討している若手研究者の方に向けてメッセージをいただいています。英語での申請書作成や、ホスト研究者とのコミュニケーションについて工夫した点など、是非参考にしてください。
申請書をボスと何度も何度もブラッシュアップ
Q1.HFSPに応募した理由
図1留学先のHarvard Medical School/Boston Children’s Hospital
留学したHarvard Medical School/Boston Children’s Hospital(図1)のYang SHIのラボ(図2)は、金の切れ目が縁の切れ目、の欧米のラボでよく聞くドライタイプ。そのため、Fellowshipに挑戦することが必須でした。私は留学前後で応募できるFellowshipにとことんチャレンジしました。
HFSPに応募したきっかけは親しくしていた先輩・友人がHFSP Fellowshipを受賞していたことです。今でこそAMED主体で広報しておりますが、当時は日本では知名度が高いとは必ずしも言えませんでした。先輩方のHFSPのお勧め(Q2のメリットにも通じます)、応援がなかったら応募していなかったと思いますので、とてもラッキーだったと思います。
研究分野変更の具体例は、大阪大学原田先生と共著で実験医学「HFSPフェローシップ獲得の方法とコツ」(「受賞者の声」担当)で執筆いたしました。そちらも是非ご参照ください。
Q2.HFSPのメリット
世界での知名度が抜群に高いことは特筆すべきです。日本では広く知られているとは言いづらいですが、ヨーロッパではEMBO、HFSP、Marie Skłodowska-Curie European Fellowshipsが三大フェローシップと言われているそうです(ヨーロッパから来たポスドクの友人から聞きました)。名誉に加え、給料の良さ・留学前後の引っ越しや子供手当のサポートなど、非常に充実したサポートがある点も他のFellowshipを上回っていると思います。そして、HFSPを受賞した人だけが参加できるAwardee Meetingの参加(旅費付きです!)は、最先端の研究が聞けるだけでなく超優秀なHFSPの受賞者と直接知り合いになれるきっかけとなります。このAwardee Meetingに参加できただけでも申し分ない素晴らしい経験ができたと言えます。HFSPのメリットはここですべてを挙げることができないくらいです!是非挑戦してください。
Q3.申請までの準備
HFSPを受賞した皆様は留学前に応募しているケースが多いようですが、私のケースでは競争の多いEpigeneticsのフィールドにおいて事前打ち合わせなどで情報が流出することを恐れてか、Yangと積極的な打ち合わせができませんでした。そこで私は留学1年目にYangとFace to Faceで徹底的に打合せしながらHFSP Fellowshipに応募しました。
日本の皆様は4月に留学されることが多いと感じます。HFSP Fellowshipの締め切りは8月末~9月頭ですので、留学してからラボのデータや自分の予備データを準備してから申請書を準備した方が書きやすいように思います。
本HFSPを狙う際は、「必ず」上手く行った申請書を入手してください!私は幸運にも先に受賞した先輩・友人の申請書を入手できました。これまで自分が準備してきたものが何だったのか、と愕然とするくらい完成度が違いました(涙)。しかしその申請書をひな形にすると非常に良いプロポーサルを書くことができました。
ここには書ききれない「コツ」を大阪大学原田先生と共著で実験医学「HFSPフェローシップ獲得の方法とコツ」(「受賞者の声」担当)で執筆いたしました。そちらも是非ご参照ください。
Q4.海外の研究経験で得られたこと
図2 Shiラボメンバーと
中列 右端が筆者
後列 左から二番目がProf. Yang SHI
図2を見るとわかるとおり、Yangのラボは国際色豊かです。私はYangのラボで今や世界中に散らばる友人たちを得ることができました。研究をする上で、人脈を築くことは必要不可欠であると強く思います。留学はその大チャンス!Yangのラボで苦労しましたが、彼のラボで得た人脈は一生の宝といっても過言ではありません。留学してびっくりしたのは、隣のベンチの友人(Eric、図2の中列右端から二番目)が留学前のコンペティターその人だったことです!彼は非常に優秀で、穏やかで、非常に信頼できる人物です。お互い、名前(と競合する論文の内容)を良く知っていました。そんな彼と水面下で競い合っていたのだなぁ、と世界は広いようで狭いのだな、と感じました。
意外かもしれませんが、留学先で同胞である日本人の方々とも幅広い交流ができました。私はボストンで日本人会「いざよいの夕べ勉強会」に参加していました。そこで得た仲間たちは、日本に帰国後も交流し、共同研究に発展することもありました。日本にいたままでは決して会えなかった方々と交流することができ、それが今につながる~研究だけではないロマン(図3もご参照ください)を感じることができたのも海外の研究留学から得られた貴重な経験です。
Q5.今後のHFSPへの応募者に向けたメッセージ
図3 研究だけじゃない思い出
~アメリカの秋はとても綺麗でした~
「Q3.申請までの準備」にも書きましたが、是非、うまくいった申請書を入手してください。Awardees Meetingでも「うまく行った申請書を入手し、真似することから始めよ」とグラントマネージャーの方が述べていたほどです。上記の通り、私は友人の上手く行った申請書を入手することができました。最初書き殴っていた申請書がお粗末に感じられる出来で、酷くショックを受けたのが今でも思い出されます。しかしながら、非常にうまく行った申請書を下書きに私の研究プロジェクトを書き換えていくと、当初の申請書とは全く別物ができました。重要なのは、「そこがやっとスタート地点」、ということです。その後、ボスと何度も何度もやり取りし、最終的に出来上がったものは当初の原稿案が殆ど残っていないような有様でした。この、「何度も何度もブラッシュアップする」というのが、HFSP Fellowshipに限らず他の申請書においても、論文においても重要である、ということを何度も経験しております。
HFSP Fellowshipの申請を種に、このような素晴らしい経験を積むことは今後の研究生活においても極めて重要な糧になります。HFSP Fellowshipは高き門ですが、給与、助成期間(3年間)、名誉共に非常に恵まれております。日本国内で研究費を獲得することは年々難しくなっている印象がありますが、国内だけではなく日本国外(この場合はHFSP)にも申請することができる、という観点は非常に重要だと思います。是非ともHFSP Fellowshipを受賞し、日本の、世界のサイエンスを盛り上げていきましょう!
最終更新日 令和元年6月17日