国際戦略推進課 HFSPフェローシップ受賞者からのメッセージ(2014年度受賞 早野 元詞さん)

HFSPフェローシップ受賞者からのメッセージ

HFSPフェローシップ受賞者から、これから応募を検討している若手研究者の方に向けてメッセージをいただいています。英語での申請書作成や、ホスト研究者とのコミュニケーションについて工夫した点など、是非参考にしてください。

HFSPは挑戦的なアイデアを高く評価

受賞者年度 2014年度
受賞者氏名 早野 元詞
受賞研究テーマ NAD+ regulates adipocyte function through protein O-GlcNAcylation to maintain energy homeostasis
留学前所属 東京都医学総合研究所(正井久雄研究室)(日本)
留学先所属 Harvard Medical School, David A. Sinclair lab(米国)
留学期間 2013年度~2017年度
写真1枚目

Q1.HFSPに応募した理由

学部生の課題で早老症という難病のウェルナー症候群を知るなかで老化に興味を持ちましたが、当時はアカハライモリの精子形成や、博士課程での分裂酵母を用いたDNA複製と、異なる領域へ挑戦しました。学位取得を目前としてやはり老化研究のド真ん中で、起業も積極的に行なっているロールモデルを模索した結果、Harvard Medical SchoolのDavid A. Sinclair博士が候補に上がりました。しかしSinclair研究室ではマウスやヒトを主題で、老化に特化した研究は私にとって経験がありませんでした。また多くの助成金では「応募課題と関連のある実績や論文を記入する」ことが求められ、異なる領域への挑戦にハードルが高かったことを記憶しています。一方で、HFSPは挑戦的なアイデアを高く評価し、また長期的な社会インパクトを求めていたため、非常に共感しました。

HFSPはWebでその存在を知り、日本にいる時には留学先が決定するタイミングとの兼ね合いから締め切りに間に合いませんでしたが、留学を開始してアメリカから応募させて頂きました。


ラボの集合写真:筆者は遅刻して一番前

Q2.HFSPのメリット

HFSPのメリットは主に5つあるかと思います。(1)助成金の扱いが非常に柔軟。助成金の振込み方法の選択から、その使用方法まで親身に相談に乗っていただけます。アメリカではJビザ保有者の租税条約があり、個人で税金申請を行うため対応していただきました。(2)国際会議への参加費用など、自由に使用出来る助成金が含まれているため、Keystone Symposiaなどに気軽に参加でき、留学中のネットワークが広がります。(3)Child allowanceやParental leave allowanceで子供手当や産休、育児休暇が取得できます。(4)研究助成金の柔軟性。2年目以降に他の助成金を上限2年間使用できます。私の場合は、残念ながら助成1年目に海外特別研究員(学振)と被ってしまいましたが、留学開始前からHFSPに応募すると、より柔軟性が広がります。(5)HFSPという国際的な助成金の認知度から海外の研究者の方からも気軽に話しかけていただけます。

Q3.申請までの準備


寒波で-30℃と大雪の2015年冬の
Harvard Medical School

HFSPの申請にあたっては学位取得後3年以内で、留学先で助成開始時に1年を経過していないことなどの条件があります。そのため、留学先は学位取得前から考え始め、国際学会などで留学先の先生へアプローチすることをお勧めします。私の場合、留学先から承諾を得た時点で海外特別研究員(学振)とHFSPへの応募が不可能な状況でした。そのため、上原記念生命科学財団や中冨健康科学振興財団に留学開始にあたってはお世話になり、非常に感謝しております。留学開始が4月1日以前であるとHFSPに応募ができないこともあり、4月中旬に留学しアメリカでHFSPの申請書類の準備を開始しました。

申請書類に記載したい内容について2ヶ月ほど実験を行い、英語や内容は留学先の仲間が添削してくれて非常に助かりました。最終的にラボのボスであるSinclair博士に確認いただき提出しましたが、Sinclair博士に提出いただく箇所が締め切り1時間前になっても未提出になっていたため、夜中に自宅に電話して、奥様から伝えて頂いた思い出があります。危機一髪。余裕をもって提出しましょう!!汗。

Q4.海外の研究経験で得られたこと

HFSPの申請書類をSinclair博士に見ていただいたときに「what does your proposal change the world?」と聞かれたことが印象的です。老化研究の場合、「老化」の定義は未だに曖昧です。そして、その分子機序はこの20年間で少しずつサーチュインやmTORをはじめとして明らかになり、産業としての応用も盛んになってきています。しかし老化の分子機序を明らかにするだけでなく、一般の人にわかりやすく伝え、それを産業化、社会システムへ落とし込むには膨大な労力が必要とされます。研究室で研究に没頭することも重要ですが、大きな目標を達成しようとした場合には多くの方の知恵と協力が必要になります。

海外留学しなければ得られなかったことは、世界の最先端の研究を学ぶだけでなく、多くの文化の異なる研究者と共同研究を自由な雰囲気で行い、また産業化に向けたノウハウを世界一のバイオテック中心地のボストンで学べたことだと思います。そしてそこで培われた仲間が今も一番の財産です。


ボストンで毎週月曜朝6時半から
開催している朝食会の100回目

Q5.今後のHFSPへの応募者に向けたメッセージ

HFSP申請書作成時に「what does your proposal change the world?」と自問した際、破壊的創造性やオリジナリティ、研究を超えたネットワークを要求されても遥か未知の世界でした。そもそも学位を取得したばかりの新米博士がいきなりそんなことを要求されても無理がありますし、将来に対する不安しかないのが普通です。しかし同じような不安や夢を持つ優秀な研究者に囲まれて、また世界的にも有名な先生方とディスカッションする中で、少しずつ自分のスタイルが見つかってくるように思います。

海外留学は英語も生活もキャリアも不安しかありませんが、飛び込んでみれば間違いなく楽しいし、もう一度留学したくなります。HFSPの醍醐味は挑戦的、学際的かつ国際的な研究を推進することで、人類の新たな研究分野を開拓することにあります。敢えて今までの自分を捨てて新しい世界へ挑戦してみてはいかがでしょうか。

最終更新日 令和元年6月17日