受賞者年度 | 2006年度 |
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受賞者氏名 | 石川 春人 |
受賞研究テーマ | Direct observation of the protein dynamics in the presence or absence of a disulfide bond |
留学前所属 | 大阪市立大学 医学研究科 岩井一宏研究室(日本) |
留学先所属 | Stanford大学 Michael D. Fayer研究室(米国) |
留学期間 | 2005年度~2008年度 |
国際事業課 HFSPフェローシップ受賞者からのメッセージ(2006年度受賞 石川 春人さん)
HFSPフェローシップ受賞者からのメッセージ
HFSPフェローシップ受賞者から、これから応募を検討している若手研究者の方に向けてメッセージをいただいています。英語での申請書作成や、ホスト研究者とのコミュニケーションについて工夫した点など、是非参考にしてください。
受給最終年度前に日本の研究室へ異動/ポジションを得るために国内学会・セミナーへ参加
Q1.HFSPに応募した理由
大学院生時代から一度は海外で研究をしたいと考えていました。申請時は医学研究科で日本学術振興会特別研究員(PD)として細胞生物学を中心に研究を行なっていましたが、海外では違う研究分野に飛び込むつもりでした。その理由は単純に新しいことが学びたかったからです。また、海外に行くからには、日本では出来ない・やっていない研究をしたいと考えたことも、研究分野を変更した理由の一つです。そこで超高速分光を専門としているFayer研究室で、自分の経験をいかしてタンパク質の二次元赤外分光法開発に携わることを決意しました。そのため、研究分野を変えることを推奨しているHFSPの趣旨とは最初から一致していました。留学にあたり周囲の方々にフェローシップについて相談したところ、最も充実した制度としてHFSPと日本学術振興会の海外特別研究員制度を教えていただいたため両者に応募しました。
Q2.HFSPのメリット
HFSPを選んだ理由は、受給期間の長さ・受賞者会合の存在・終了後のフォロー等の存在からです。いずれも実際に非常に有意義であり助けとなりました。受給期間の長さは腰を据えて研究をするためにはありがたく、転居費用などのサポートにも大変お世話になりました。また受賞者会合はレベルの高い異分野の話をじっくりと聞くことができ、友人・知人を作る機会になりました。
もう一点HFSP特有のメリットとして、受給最終年度の自由度の高さがあります。最終年度に差し掛かる際に、留学先での研究はひと段落していたため、HFSPフェローとして日本の研究室へ異動しました。日本でのポジションを得るためには、国内学会・セミナーへの積極的な参加は重要です。留学先での研究の進展具合に応じて、最終年度の異動や受給期間の延長が可能なHFSPのシステムは非常に合理的だと感じました。
また、その後Career Development Award※に採択され、日本での研究をスタートするにあたり大きな助けとなりました。これら様々なメリットは他のフェローシップでは得難いHFSPの特徴であり、唯一無二とさえ言えるものだと考えています。
※現在はCareer Development Awardの募集は行われていません。
Q3.申請までの準備
スタンフォード大学
留学にあたり研究分野を大きく変更する予定であったため、受け入れ研究室探しを知人の紹介に頼ることは難しく、海外研究室のWebページと論文検索を頼りに数カ所の研究室を選定しました。直接e-mailでコンタクトを取り、取り組みたい研究内容を添えて受け入れの可否を伺いました。そのため研究内容は受け入れが決まった時点でほぼ固まっており、HFSPの申請書は既定の方針に従って作成しました。
申請内容に関しては「研究分野を変更したからこそ出来る新たな着眼点に基づいた研究」であることが伝わるように工夫しました。また、研究内容が物理化学的な要素を多く含んでいたため、専門外の研究者の方々にも理解できるよう配慮しました。最終的には受け入れ研究室のFayer教授に内容の確認と同時に英文に関してもコメントを頂き完成させました。
Q4.海外の研究経験で得られたこと
留学先研究室の集合写真
まず研究室の大学院生・ポスドクのレベルの高さが印象的でした。アメリカでは学部・大学院・ポスドクで分野を移動する人も多く、研究室のメンバーは国籍が多様なだけでなく、それぞれ幅広い知識を持っており、普段の会話からも学ぶことがたくさんありました。自由な雰囲気の中で、ハイレベルな人々が研究に取り組んでいる環境は非常に刺激的であり、楽しく充実した時間を過ごすことができました。
研究面では、実験で得られた光信号の解析に関して、音響解析を専門としている音楽部に相談に行くことになった際は、研究協力体制の自由さに本当に驚きました。それ以外においても、試薬や機器の貸し借り、意見交換が非常に盛んであり、学部・学科を超えて協力しながら研究を進めていくスタイルは参考になりました。
人脈形成に関しては、当時Fayer研究室で一緒に研究したメンバーから既に4人が独立して研究室を運営しています。受賞者会合での友人・知人を含めればさらに多くの人々が研究を続けています。そのため意図しなくても人脈は広がっているように感じます。また、研究室だけでなく普段の生活も含めて、アメリカでの様々な経験は人生において貴重な財産になりました。
Q5.今後のHFSPへの応募者に向けたメッセージ
スタンフォード・スタジアムでの
アメリカンフットボール観戦
研究者という生き物は好奇心のかたまりだと思います。研究と同じように海外生活も飛び込んでみないと、見えない・わからないことが山のようにあります。ここまで格好の良いことばかり書いてきましたが、実際に行くまでは不安だらけで、着いてから困ったこともたくさんありました。しかし、全く新しい環境から得られた様々な経験は何物にも代え難いものでした。
私にとってHFSPは金銭的なサポートだけでなく受賞者会合などを通じて、研究者として飛躍するチャンスを与えてくれた制度です。英語での申請書作成に必要な労力は大きいですが、英語論文が書けるのであれば大丈夫です。この文章を読んでくれた皆さまがHFSPに採択され、有意義な海外留学生活を過ごされることを祈念いたします。
最終更新日 令和元年6月17日