医薬品プロジェクト ①創薬標的分子の探索・検証、バイオマーカー、スクリーニング

標的分子

  • Q

    【がん】【全モダリティ共通】
    創薬コンセプトが正しいことを示すためには? 安全性の高い薬を作るためには?

    A

    標的分子の機能を有効性と安全性の両面から解明する

    • 安全性や副作用による障害の程度を推測するために、正常組織・細胞での機能と阻害時の作用の確認をしておくことが望ましい。がん細胞においては標的分子の異常な機能亢進が主にがん化に寄与していると考えられるが、正常細胞においては標的分子の機能を代償する経路が存在することが確認できれば、標的妥当性の補強データになる。
    • ノックアウトマウスを利用可能な場合は、そのコンストラクトによってphenotypeが大きく異なるため、可能な限り複数系統のノックアウトマウスの結果で判断する(成体あるいは対象臓器でのコンディショナルなノックアウトマウスが有用)。
    • siRNA、shRNAを使用する場合にはオフターゲット効果があるので必ず2つ以上で実施することを推奨する。
    • 類縁タンパク質が複数存在している場合は、生体内での重要な役割分担があることが推察されるため、それらの機能解明が望ましい。それにより正常細胞で長期の標的分子の機能抑制が起きた際に、クリティカルとなる問題が本当に無いのかを推察することができ、安全性を推定する根拠になる。また、マウスとヒトでの機能の違いも考慮すべき事項である。
  • Q

    【がん】【全モダリティ共通】
    創薬コンセプトが正しいことを示すためには?

    A

    標的妥当性を説明できるようにする

    • 標的分子の恒常的な活性化(リン酸化など)につながる遺伝子異常等を同定し、活性化に依存して生存・増殖しているがん種を絞り込むことができれば有望なシーズと判断できる。
    • 標的分子に対する阻害剤に感受性の高いがん種を見出すことが有用である。どのがん種でもそれなりに有効であることを示すより、どのがん細胞なら良く効くのか、対象セグメントを絞り込むためのバイオマーカーを含めて示す方が望ましい。
      (以下、標的分子ががん原性を持つ場合)
    • 対象となるがん種の臨床検体における標的分子の発現量と臨床予後との相関及び、がん細胞培養時(平面、3次元)における標的分子発現量と薬剤感受性の相関が存在するとなお良い。
    • 正常細胞への標的分子の遺伝子導入、あるいは活性化した際に、がん化形質(足場非依存性増殖能)を獲得することを確認できているとさらに良い。

バイオマーカー

  • Q

    【がん】【全モダリティ共通】
    創薬コンセプトが正しいことを示すためには?

    A

    層別化因子やPD(pharmacodynamics marker)に関する情報を収集する

    • 標的分子が過剰発現しているがん種と診断するための適切な閾値設定と、過剰発現がんの発症頻度及びその臨床予後に関する情報があると良い。
    • 標的分子シグナルを伝達する下流エフェクター因子の中で細胞死誘導など薬効に関わる因子(PDマーカー)を明確にすることが望ましい。下流エフェクター因子のリン酸化や発現変動のような下流シグナルの遮断をモニターできるPDマーカーがあると、臨床試験での測定と早期のGo/NoGo判断につながりうるため、標的としての魅力が増す。

薬効

  • Q

    【がん】【小分子】
    先行品や他のモダリティの薬との優位性を示すためには?

    A

    薬効の高い化合物を取得する、あるいは取得できる可能性を示す

    • In vitroでのがん細胞パネルでの感受性評価において低濃度域(サブμMからnM)で作用する強力な阻害活性を有することが重要である。また、標的とする細胞選択的な殺細胞効果を示すことも魅力につながる。
    • 標的分子への直接作用(キナーゼ阻害など)、下流因子の抑制作用(シグナル)、細胞増殖抑制、in vivo PD評価、in vivo有効濃度について複数の化合物で相関性があると望ましい。
    • 化合物の選択性を担保するためにカウンターアッセイを実施し、他の分子には作用していない(あるいは、最小限のオフターゲットである)ことを確認することが求められる。複数の分子について確認するパネル試験(キナーゼパネルなど)は委託業者もある。
    • In vivoで、腫瘍の増殖抑制効果に加えて、腫瘍縮小効果を確認できていることが望ましい。また、培養細胞株のゼノグラフト(xenograft)試験はヒト腫瘍の性状を完全に反映したものではなく、抗がん剤の臨床有効性を推定することは困難である点に留意すべきである。やはり難治性がんのPDXモデルでこれまでの抗がん剤と差別化ができる薬効を示すことが重要である。
    • in vivo薬効データを示す場合、PK-PDを確認し、該当化合物のin vitroプロファイルからin vivoで有効性を示す濃度域で持続した十分な曝露があるのか確認する。

優位性

  • Q

    【がん】【小分子】
    先行品や他のモダリティの薬との優位性を示すためには?

    A

    市場性及び競合優位性・差別化データを示す

    • シーズはFirst in Class(FIC)やBest in Class(BIC)であることが好ましい。

    • BICの場合は既存薬、FICの場合は市場における標準療法との差別化の観点でも優れた標的であることをアピールする。例えば、既存薬の作用点より下流のシグナルに着目してユニークな抗がん剤特性を示すことを明確に示せると魅力が一段と向上する(例:上流の分子の阻害剤に対する耐性機構において下流の活性化変異したエフェクターを創薬標的とするなどこれまでと違う戦略の創薬の提案は魅力がある)。
    • 競争相手が限定的であり治療満足度の低い領域のシーズであり、市場性の観点でも魅力的であることや、戦略的に相談企業の重点方針に合致していることも重要なポイントとなる。

安全性

  • Q

    【がん】【小分子】
    安全性の高い薬を作るためには?

    A

    薬効だけでなく安全性データまで示す(マウスを用いた動物モデルでの検証は必須)

    • 担がん動物モデルでの有効性、一般毒性のデータを収集する。実用化を視野に入れる段階では臨床で実施可能な投与方法・間隔であることが望ましく、PDXモデルでの薬効データはあればなお良い。
    • 初期の段階では、病態モデルでの薬効評価における体重減少,摂餌量変化を毒性の指標として利用できる。ある程度構造活性相関が見え、薬効が確認できた化合物で、4日間または7日間の毒性試験を検討する。毒性試験の内容で、毒性軽減に向けて、更なる誘導体展開を行う。
    • 薬効評価において、物性が悪く臨床投与経路で試験が出来ない場合には異なる投与経路で薬効を確認しても良いが、安全性試験では臨床投与経路での実施が望まれる。
    • 血中動態は至適投与頻度、投与用量の選定に関わるので、実施した方が良い。
    • 心毒性が強い場合はプロジェクトの中止に関わるため、hERG(human ether-a-go-go related gene)も検討した方が良いが、薬効に必要な用量との差(Therapeutic window)も併せて検討できるよう、薬効に必要な用量も確定しておく必要がある。