医薬品研究開発課 ②非臨床試験(薬効薬理、安全性、代謝・薬物動態等)
In vivoデータ
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Q
【がん】【核酸医薬】
先行品や他のモダリティの薬との優位性を示すためには?A静脈内投与での薬効データを示す
- 対象疾患、患者数及びメディカルニーズの明示が重要である。その意味で、血管が非常に少なく、間質が多い臓器のため、薬剤が到達し難い極めて難治性が高い膵臓がん等において皮下投与に加え、できれば静脈内投与で腫瘍縮小あるいは明確な延命効果が認められれば興味を持つ企業も増える。予防投与や転移抑制ではなく、原発腫瘍の退縮が認められると、企業導出に繋がりやすくなる。
- 細胞移植後、腫瘍塊 が生着し増殖を開始してから (目安として>200 mm3) 、投与開始した場合で明確な薬効が示せるかはポイントになる。
- コストの観点で、治療実験での用法・用量も注目されるため、体内での安定性、臓器到達性などの課題克服が難しい場合には、DDSを活用することの検討も必要である。
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Q
【がん】【低分子】
Q. 先行品や他のモダリティの薬との優位性を示すためには?A少なくとも複数のがん細胞株ゼノグラフトモデル(できればPDXモデル)を用いたin vivo検証により有望なデータを示す
- 阻害作用による有効性(著効性)が確認できていることが望ましい(PK/PD 相関性)。
- 有効性と安全性の乖離が達成できそうなターゲットであること(オンターゲットで比較的シビアな毒性が薬効用量と乖離している)が重要である。
- がん細胞以外の微小環境への影響をコンセプトに含む場合は、マウス同所移植モデルや自然発症系モデルでの薬効評価を必要に応じ検討する。
- In vivoでのリーズナブルな有効性(薬効、動態(血中濃度)、忍容性データ)を示す。できれば化合物に加えてsiRNA等の手法でターゲット妥当性を証明する。
- siRNAやCRISPRによるノックダウン/ノックアウトでのターゲット妥当性確認が必要である。
POC
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Q
【がん】【低分子】<N2H>
先行品や他のモダリティの薬との優位性を示すためには?
標的疾患
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Q
【がん】【全モダリティ共通】
独創性の高い治療薬であることを示すためには? 先行品や他のモダリティの薬との優位性を示すためには?Aアンメットメディカルニーズを踏まえ、有効性が期待できるがん種のプロファイリングを示す
- どのようながん種にも効くことを示すよりは、アンメットメディカルニーズの高い特定のがん種において、よく解析されたMoAによって強い薬効を示す方が企業にとって魅力的である。
- がん細胞パネルを用いた感受性評価と、その薬物が薬効を示すために必要となる標的分子の発現/活性との相関が示されていることが望ましい。
- (標的とするがん細胞が不死化細胞株に存在する場合)DepMapデータベース*などを用いて標的分子の発現量と効果の相関性を明らかにすることで効果規定因子であることが示されていると良い。
*DepMap (the Cancer Dependency Map) は、米国ブロード研究所(Broad Institute)と英国サンガー研究所 (Wellcome Sanger Institute)が中心となって提供する、がん細胞の持っている遺伝子変異や発現量変化などの特徴と、がんが生存し成長するために依存している遺伝子の情報を関連付け、治療の標的を発見するのを助け治療法の開発を促すことを目的としたデータベース
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Q
【がん】【核酸医薬】
先行品や他のモダリティの薬との優位性を示すためには?A有効ながん種を特定する
- 発現抑制による増殖阻害作用のがん種間の差異と特徴付け(遺伝子変異や発現量など)が実証出来ていることが望ましい。
- 均一な形で集積性がみられる組織、がん種を特定して、 ASOによる経時的なノックダウン効果、同時に薬効、血中濃度との相関などのデータが取得されていることが望ましい。
薬効
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Q
【がん】【全モダリティ共通】
先行品や他のモダリティの薬との優位性を示すためには? 安全性の高い薬を作るためには?A臨床薬効が期待できる薬効及び安全性データを示す
- 腫瘍の増殖抑制だけでなく、in vivoで腫瘍縮小効果まで確認する。有意な延命効果があることを示すことが重要である。
- 一般的ながん細胞株を用いた担がんマウスで非常に強い薬効を示した化合物がヒトで全く薬効を示さなかった例は数多く存在する。がん組織由来のがん細胞と間質細胞が混ざっているがん オルガノイド、もしくは PDXモデルでの薬理試験のデータは通常のデータとは全く異なってくるので、ヒト臨床試験への外挿性を上げるためにも可能であればPDXモデルあるいは自然発症に近いモデルでの薬効試験の実施を考慮する。
- 薬効データ、特異性確認データは、用量依存性データとして取得しておく必要がある。
- PK/PDデータがあり、実臨床で応用可能な投与スケジュールで有効性の持続が見られることが重要である。
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Q
【がん】【低分子】
先行品や他のモダリティの薬との優位性を示すためには?Ain vitro細胞アッセイでは、患者への投与する薬剤量も見据えて100nM未満程度の薬効を達成する
- 可能であればIC50<100 nM程度の活性は欲しい。臨床試験での進めやすさも考慮すると、副作用との乖離、耐性株への薬理活性の強さも担保できていればさらに良い。認可に向けて必要なのは、作用機序解析、担がん動物モデルでの有効性評価、安全性評価などである。
- カウンターとなるアッセイや細胞を用い、有効性と副作用が乖離している状態を確認する。
- in vivoでのPK-PD評価を行う。
- 上記データよりヒトでの有効性を考察し、単剤、併用のどちらで進める方が良いのかを検討できている。臨床試験でどのような患者さんをリクルートするのかが想像できるデータを非臨床で示しておく必要がある。
優位性
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Q
【がん】【全モダリティ共通】
先行品や他のモダリティの薬との優位性を示すためには?A既存薬と比較して優位性を示す
- 既存薬と比較して優れた薬効あるいは安全性を示すデータがあることが重要である。異なる作用機序の治療(抗がん剤、免疫チェックポイント阻害剤、放射線療法など)との併用でも良いので、がんが消失、治癒できる可能性を示せれば有望である。
- PDXモデル(特に既存薬で薬剤耐性になった患者由来のがん組織を用いたモデル)で、薬効を示せれば、非常に魅力的である。
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Q
【がん】【核酸医薬】
先行品や他のモダリティの薬との優位性を示すためには?A他モダリティに対する優位性を示す
- 新しいモダリティを利用する際には、有効性・安全性、あるいは、ヒトに投与できる ASO(antisense oligo)の調製など多数の課題がある。その中でASOを企業導出する際には、下記の点がポイントになる。
- (1)in vivoで標的分子に対するASO投与により、強い(望ましくは特異的な効果のあるがん種と効果のないがん種が明確)腫瘍抑制作用を示すこと。
- (2)標的に対し、ASOを利用するのが最も妥当であることを示すこと(低分子化合物では狙えないdruggableな標的や、抗体では作用できない標的等)。
- 現状では、他モダリティ(抗体、低分子)と比較して優位性を示すことが難しいかも知れない。抗体ですら多大な人的・金銭的投資というリスクを取った企業は多くなかったことを顧みれば、抗体で実現したことと同様のブレイクスルーをもたらす可能性を企業に説明できるかがポイントになる。
- ASO以外にも、共有結合型の化合物やRNAi治療薬などのアプローチも選択肢であり、ASOの必要性や優位性が示せるかどうかが重要なポイントである。
安全性
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Q
【がん】【核酸医薬】
安全性の高い薬を作るためには? -
Q
【がん】【低分子】
安全性の高い薬を作るためには?A正常細胞での影響をあらゆる視点から見極める
- 増殖能に加えて、可能であれば 全トランスクリプトーム解析などを含めて影響のレベルを解析することが望ましい。
- ノックアウトマウスのphenotype解析は安全性予測・評価法のひとつであるが、胎生期に生じる表現型をも含み、作製方法によっても大きく変わるため、その結果だけをもって成人における正常組織への影響を予測することは困難である。
- 標的分子が正常細胞で何も機能していないと考えるのは不自然であり、正常細胞に影響がないと言うよりも、どの様な影響があるかを知っておくことが重要である。
薬物動態
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Q
【がん】【核酸医薬】<N2H>
先行品や他のモダリティの薬との優位性を示すためには? -
Q
【がん】【核酸医薬】<N2H>
先行品や他のモダリティの薬との優位性を示すためには?A標的臓器到達性・集積性の偏りを改善する
- ASOは体内分布として肝臓や腎臓に集積するという情報が一般的であり、それ以外の臓器を対象とした場合に臓器選択性、移行性を如何に改善できるかという技術的な解決策が明確でない。Drug delivery systems ( DDS)の開発を並行して実施することが重要である。
- 他のモダリティと比較した場合、①血中安定性、②標的臓器への到達性・集積性、③ オフターゲットイベントも含めた安全性が主な懸念事項(ハードル)になる。これらに加え、①~③の改善に用いる技術に関して、製造方法も含め、他社の先行特許が存在している場合には、実施許諾取得の観点で開発上のハードルの一つになる。
- 核酸の一般的毒性では安全マージンが確保しにくい。従って、核酸の毒性を抑えつつ、がん細胞退縮を導けるなら魅力的である。
- がん種によっては腫瘍内の血流量や血管の多さなどに相違があることによる薬剤到達に限界がある可能性が否定できないことを考慮すべきである。
※本評価ポイント(標的臓器到達性・集積性の偏りを改善する)は、特定臓器へのターゲッティングを優位性とするのであれば必須だが、そうでなければ<N2H>で良い。
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Q
【がん】【核酸医薬】
先行品や他のモダリティの薬との優位性を示すためには?AASO腫瘍移行性のメカニズムを明らかにし、不均一性を解決する
- 標的腫瘍への集積を高める DDS技術を利用する場合には、標的腫瘍集積メカニズムの説得力のある科学的な説明が必要である。開発を進めるどのステップにおいても、デリバリーに関して問われる。メカニズムを科学的に推論、説明できないと副作用、安全性等を検討する際や申請資料に記載する際に苦しくなる。
- ASOの取り込み不均一性に起因して腫瘍増殖抑制効果が部分的である場合には、ヒト臨床試験でも大きな不確定要因となる。DDS利用も含め、均一化を目指し、腫瘍増殖抑制最大化を優先するべきである。ASOが取り込まれない細胞ポピュレーションに関しては、最終的にASO治療抵抗性/耐性につながるという懸念を持たれてしまう。
薬物動態/安全性
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Q
【がん】【低分子】<N2H>
治験をスムーズに進めるためには?A所定の安全性試験、薬物動態試験、物理化学的試験を実施し、非臨床試験データを収集する(開発化合物として進める場合には、臨床移行前の企業研究として重要)
- 化合物の水溶性に加えて血漿中での化合物の安定性を見ておくと良い。タンパク質結合率が高い場合には安定性が高めに出る場合があるので注意が必要である。
- 薬物が十分曝露できて線形な領域はどこまでか、PKの持続はどのくらいで、1日何回投与するのが望ましいのか、併用療法なら相互にPKへ影響する可能性はないのか。それぞれの毒性プロファイルはどうなのか、最初の毒性変化は何でとらえ、それが併用時にどの様に変わるのか。などが明らかにならないと、許可(臨床移行)に向けた判断はできない。
- 認可=販売承認と解釈すると、安全性は必須である。具体的には、動態評価(in vitro代謝安定性、 CYPs阻害、酵素誘導、DDI、反応性代謝物検索、代謝物検索等)、安全性(hERG、光毒性、ラット・大動物毒性試験)、物性(透過性、溶解性、安定性)。
用法用量
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Q
【がん】【核酸医薬】
先行品や他のモダリティの薬との優位性を示すためには? 安全性の高い薬を作るためには?A有効性だけでなく安全性を担保する
- 用量/PK/分布/効果の間の相関性の解析とそこからの展開が困難なケースがあげられる。
- 標的抑制効果の維持のために頻回投与が必要な可能性と投与回数増による肝及び腎に対する障害も懸念材料となることがある。
- 実臨床化可能な投与方法と薬効の持続が得られるかがハードルとなる。
構造最適化
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Q
【がん】【低分子】
企業導出を進めるために、企業がアカデミアに期待していることは?AIn vitroでの薬効の強さよりも、異なる複数の構造のリード化合物を取得する
- 開発化合物取得のためには誘導体展開が必要であり、リード化合物の構造によっては誘導体展開が難しい場合がある。そのため骨格が明らかに異なる複数の化合物を見出しておくのが望ましい。