医薬品研究開発課 ③構造最適化、DDS、製造

構造最適化 

  • Q

    【がん】【核酸医薬】<N2H>
    創薬コンセプトが正しいことを示すためには?

    A

    開発化合物として進める場合には、構造を最適化PK/PDを明確化する

    • これまで見出してきたASOを基に構造最適化を行い、新規構造の薬効動態、安全性評価を実施し、より高い薬効(作用の増強によりがん細胞の壊死が見られる)を有するASOを開発する。
    • 最適化後に核酸のPK/PDを明確化する。PK/PDを明確にすることで化合物が十分に腫瘍に暴露して標的を抑制することで効果が得られるという証明になる。
    • がん細胞内濃度測定を含めたADME試験による投与レジメンの最適化の可能性を調べる。
  • Q

    【がん】【低分子】
    企業導出を進めるために、企業がアカデミアに期待していることは?

    A

    化合物の作用メカニズム、高い親和性を示す

    • 良い化合物創出のためにも最も有効なメカニズムを探求することが重要である。この点が企業が弱い点でもあるので、アカデミアでこそ実施すべき研究である。
    • シード/リード化合物がさらに薬効向上できるポテンシャルがあることを示す。例えば、結合活性向上に向けた誘導体展開のガイドとなる結合部位を同定するため、モデルではなくX線結晶構造解析、NMRやクライオ電顕などのデータを取得する。また、標的と低分子化合物のX-線共結晶解析やCryo-EMでの解析結果が有ると最適化に有用である。
    • FEPなどの計算手法を使うことで比較的構造が近い化合物の親和性を予測できる。
    • 作用メカニズムの詳細検討を行う。候補化合物が分子認識(エンタルピー変化)を介した特異的結合であり、活性を強める可能性があること)により標的分子へ作用していることを示す。
    • タンパク質ータンパク質の相互作用を標的にした阻害薬は活性向上が難しいため、余程魅力あるターゲット(RAS並み)でないと企業にとっての魅力は限定的である。仮にPROTAC(Proteolysis Targeting Chimera)のような分解誘導化合物(degrader)として狙うにしても安全性確保のため高い特異性が必要である。
    • 同一標的分子の阻害剤がある場合、in vivoでの比較試験で優位性を有することを示す。
  • Q

    【がん】【低分子】
    企業導出を進めるために、企業がアカデミアに期待していることは?

    A

    化合物の活性、薬効が向上する可能性を示す

    • 開発品を取得できる可能性があると企業が判断するかどうかがポイントである。構造やデータから企業のメディシナルケミストが判断することになる。
    • お互いの強みを生かすという意味では、リード化合物を磨く活動は企業にやってもらい、アカデミア研究者は、薬理作用の解析など化合物の魅力度を上げるためのバイオロジーの研究に特化することも選択肢である。
    • 企業に最後の作り込みを依頼する場合には、プロトタイプにおける誘導体展開の中でSARを示す、DMPK、hERGなどのデータを示す、in vivo薬効、先行品との差別化ポイントを示すことが役立つ。

DDS

  • Q

    【がん】【核酸医薬】<N2H>
    先行品や他のモダリティの薬との優位性を示すためには? 企業導出を進めるために、企業がアカデミアに期待していることは?

    A

    DDSを必要としない投与での有効性を示すことが望ましいが、DDS利用もオプションとなる

    • いまだ局所特異的なデリバリーを実現できている核酸医薬はほとんどなく、実現できれば高い有効性、安全性を両立した治療法の確立につながるが、DDS無しで実臨床可能な投与レジメンでの有効性が得られることが望ましい。リポソームなどPassive targetingによる腫瘍蓄積を狙う場合は、非臨床と臨床のギャップがある点は留意すべきである。
    • 薬効・動態・安全性・物性の兼合いになる。腫瘍集積性を狙ってのDDSや、肺がんへのアプローチとして経気管投与を行なわれたようなDDSもアプローチとして選択肢となる。薬効面以外にも肝毒・腎毒の回避のために全身系曝露を回避する局所向け投与経路も検討され得る。
    • DDSが無くても有効性を示すシードを優先しており、未だ核酸医薬の分野は未成熟である。

配列設計 

  • Q

    【がん】【核酸医薬】
    企業導出を進めるために、企業がアカデミアに期待していることは?

    A

    薬剤最適化のノウハウを蓄積する

    • 配列設計、人工核酸の導入部位、数など最適化に関与するパラメータが多く、ノウハウの蓄積が必要である。将来的には機械学習での配列設計が可能になるのではないか。

CMC

  • Q

    【がん】【全モダリティ共通】<N2H>
    治験をスムーズに進めるためには?

    A

    開発品の製造スケールアップが可能であることを示せると有益である

    • 工業的な大量製造法が確立できることがポイントである。
    • 大量合成可能であれば、推定で良いので製造コストを算出し、既存の薬剤と比較して優れていることを強調できると良い。
  • Q

    【がん】【低分子】<N2H>
    治験をスムーズに進めるためには?

    A

    臨床試験に入る前の非臨床試験、薬事・規制対応としてCMCの戦略を立てる

    • CMCに関しては、化合物の物性次第(特に、溶解性/膜透過性に課題がある場合)だが、最初から戦略を策定しながら進める必要がある場合もあるため、専門家(製薬企業)に相談するのが望ましい。
    • 化合物の溶解性に関しては非晶質化や共結晶の作成などで改善の余地があるが、膜透過性が低い場合は改善は難しい。
    • 製剤化に耐えうる物性(安定性)が担保される必要があるが、その辺りは製薬企業と組んでからの話になる。

製造コスト

  • Q

    【がん】【核酸医薬】<N2H>
    先行品や他のモダリティの薬との優位性を示すためには?

    A

    製造コストなど工業化の課題があることを知っておく

    • 製造コストがハードルである。mRNAワクチンの成功含め近年の核酸医薬の進歩を前にしても核酸医薬に力を掛ける企業は限られる。大きな市場性が狙えない限りは大きなハードルとなる。
    • 内製化は難しいのでCMO/CDMOでの生産になるが、スケールによってはスロットが空いていない場合がある。
    • 投与量によっては、非臨床試験・臨床試験に必要な化合物の製造コストが低分子に比べて非常に高額となることから、少人数・短期間で評価できる臨床試験が望ましい。治療効果を確認するのに比較的長期間もしくは患者数が必要な臨床試験を実施するとなる場合、なかなか初期投資に踏み切れない。
    • 一方で、核酸医薬の製造受託を強化している企業は増えている。核酸医薬の可能性を多くの製薬企業が期待しており、国内外で製造受託を整える動きも拡がっている。