医薬品研究開発課 ⑥知財取得

優位性・DDS 

  • Q

    【がん】【核酸医薬】<N2H>
    知財を取得する際に考慮すべきことは? 企業導出を進めるために、企業がアカデミアに期待していることは?

    A

    核酸医薬の差別化ポイント及びデリバリーの課題克服につながる戦略を示す

    • 特定のがんに対しての局所集積性を示すデータ並びに当該核酸医薬が他の類薬、治療薬に比べ明確な安全性もしくは有効性での差別点があり、物質もしくは用途特許など排他的な特許成立があると、企業導出に繋がりやすい。
    • 狙っているがんへのデリバリーが難しいところが多いため、肺がん、すい臓がん、大腸がん等の固形がんへのデリバリーについては局所デリバリーを達成するためにDDS技術を有する研究機関・企業とコラボを検討することが望ましい。
    • 核酸医薬品(ASOsiRNA)の排他性のある物質特許の取得は難易度が高い場合には、DDSやフォーマットによる知財戦略も検討する。

知財戦略

  • Q

    【がん】【低分子】
    知財を取得する際に考慮すべきことは?

    A

    知財化のタイミングは早すぎると却って危険であり、化合物の合成展開方針が固まるなど候補の確度が高まってから出願する

    • 知財化は早すぎると商業化できてからの保護期間が短くなる。著しく競合が予想される場合を除いて、通常は臨床試験開始前後など開発候補が見出せる確度が高まった段階での知財化が一般的である。
    • 特許は戦略なしに慌てて取ると後で足かせにもなるので注意が必要である。排他性の高い化合物の構造や設計になっているか知財専門家の目も通して慎重に出願する必要がある。
    • 周辺化合物の範囲などは導出先との相談になる。
    • 特許出願のタイミングは、通常、1)他の研究機関の参入を防ぐ目的でどのタイミングが良いか 2)開発に成功した場合上市後の独占期間がどれだけ確保できるか、といった観点で判断する。
    • 協業などを考慮される際には、その前にビジネス交渉の根拠の一つとして権利化を進めるのも一つのやり方である。本願は、企業と共同研究を組む際の有力な武器になる。
    • 出した特許にデータを追加できる期間は1年間なので、最終的な化合物に対する合成展開方針を決め、さらに強力な阻害剤が得られるのはいつの時点になりそうかなどを考慮する。データ追加できる期間を過ぎると、新規特許が必要となり、過去の特許に対し新規性・進歩性の主張が必要となる(活性の低い化合物の構造を先にクレームした特許が、後に最終医薬品となる化合物の特許出願の足かせになる)ことに留意しなければならない。
    • わざわざ早く特許を出して競合状態(出願1年半後に構造が公開となり、競合が入ってくる)を作る必要もない。特許に記載した化合物から、特許に抵触しない化合物を作り上げるのは、製薬企業のメディシナルケミストの力をもってすれば容易である。
  • Q

    【がん】【低分子】
    知財を取得する際に考慮すべきことは?

    A

    公開済みの公知化合物に対して最適化後の出願の場合には、効力の大幅な改善を示す

    • 物質特許を出願可能だが進歩性の明示が必要であり、in vitroでの効力差としては、それぞれの企業の考え方や、創薬標的によっても異なるが、数倍から10倍以上の改善が必要と考えられている。
    • 知財(物質特許)の進歩性を主張する際、例えば、薬効用量の低下(低用量で効果を示す)で進歩性を示すには、低用量化によるメリットを納得できるように説明する必要がある。例えば、毒性軽減などで進歩性を示すには、臓器内濃度(例えば中枢移行性など)だけでは不十分で、臓器内濃度が毒性の有無に直接どのような影響をあたえるかを納得できるように説明する必要があるため、一般的には拒絶される場合が多い。
  • Q

    【がん】【低分子】
    知財を取得する際に考慮すべきことは?

    A

    出願国によっては権利化の条件が異なることに注意する

    • 物質特許の場合、出願国によっては開発化合物の実施例が含まれていないと権利化(開発化合物)が認められない場合がある。その場合(開発化合物を実施例に含めた場合)、出願特許が公開されると開発化合物が公知となり競合にさらされることになるため、引き続き物質特許の出願を継続する場合の特許戦略としては開発化合物の防衛特許的な出願(他社に特許を取らせないことが目的の出願。但し自らも特許を取ることが難しくなるため、引き続き物質特許の出願を継続する場合には望ましくない)になる。もしくは公開前ならば比較試験は必要ないが、出願から公開までは1年半しかない。
  • Q

    【がん】【低分子】
    知財を取得する際に考慮すべきことは?

    A

    特許のクレームは可能であれば優先権主張で広くする(初回の出願では、範囲を絞ったクレームに留めて早期に出願し、優先権主張までに実施例を追加してクレームを拡げる戦略が望ましい)

    • 基本的な発明の出願後に、その発明と後の改良発明とを包括的発明としてまとめた内容で、国内優先権の主張を伴う特許出願をすることができる(先の出願後1年以内)。ただし、後の出願の請求項に係る発明が、「先の出願の当初明細書等」との関係において、新規事項の追加されたものとなる場合には、国内優先権の主張の効果は認められない。
    • 後日特許抜けをされないという観点では、できるだけ網羅的に化合物を合成・評価して特許を出願するというのが業界の標準的な考え方である。自分たちが出願した先願によって後日自分たちの特許出願ができなくなるリスクもあるためどの時点で物質特許出願をするかは難しい課題である。その意味では合成展開を強力に進められる企業との提携は有効であるが、知財の専有は困難になるという面も注意が必要である。
  • Q

    【がん】【低分子】
    知財を取得する際に考慮すべきことは?

    A

    コンセプト特許、用途特許、物質特許など様々あるため状況に応じて出願タイミングを検討する

    • コンセプトが独創的で有益であればコンセプト特許として、当該メカニズムの実施例(ツール化合物を含む複数の手法でのPOC;proof of concept)を複数用意して出願し、開発品はツール化合物から新規性・進歩性・有用性(発明3原則)のあるモノを創出して物質特許を出願する(後半は導出先の企業の役割だが、コンセプト特許で出願すると、ハードルが高くなり導出困難となるリスクもある)。
    • 標的分子の用途特許は物質特許出願時にクレームとして立てて同じ特許に含めて出願することも可能である。
  • Q

    【がん】【低分子】
    知財を取得する際に考慮すべきことは?

    A

    競合状況が厳しい場合は早期に出願する

    • 知財は製品保護を目的に出願することが通常であるため、開発候補が見出されたタイミングに出願判断されるのが良い。競合が多い領域ではより早期の段階での取得も必要である。
    • 企業では開発候補化合物が出た段階で物質特許を第1国出願する。その後1年間でその開発品を守る化合物群を合成しクレームを広げて、第2国出願(国際出願)をする。競合が激しい場合は、リード化合物の取得後、開発化合物は決定していないがこの延長上に開発品が出ると確信できた時点で第1国出願することも稀にある。
    • 特許の第2国出願(一般的にはPCT出願)に関しては、どの国に出願するかに関する方針を決めておく必要がある。出願国を絞るか広く出願するか。また各国移行時に、翻訳版の提出が必要な場合もあり、費用はかなりかかる。
    • ただし、プロトタイプで特許を取得した場合に、後に見出された開発候補化合物の新規性/進歩性が主張できないと企業としては事業化に踏み切れない困った状況になるので注意が必要である。
  • Q

    【がん】【低分子】
    知財を取得する際に考慮すべきことは?

    A

    競合状況が厳しくない場合は出願のタイミングをできるだけ後ろ倒しにする

    • どの程度その化合物の物質特許有効期間が残っているかは企業としてシーズを判断する場合、重要な要素となる。極めてユニークで競合がない場合は、非臨床試験や臨床試験に用いる原薬をCMOなどで外注する場合は、外注前に、その周辺の構造も含む形で物質特許を出願するのが良い(上市後の特許有効期間をできるだけ長く確保するため、出願時期は遅いほど良い)。
    • 化合物の物質特許の出願をいつ実施するかに関しては、標的メカニズムと競合薬次第である。競合が少ない場合は、開発化合物を決定し、非臨床試験の実施が決まってからの時点で出願するのが物質特許の期間を最大限活用できる。非臨床試験で問題が発生した場合にも取り下げも可能である(出願から1年半以内)。
    • 知財戦略はポリシーによるが、臨床試験に入れると確信できるモノがとれた段階が良い。
  • Q

    【がん】【低分子】
    知財を取得する際に考慮すべきことは?

    A

    先に学会や論文発表しないように注意する

    • 学会や論文として特許出願より前に公開された発明は原則として特許を受けることはできないので留意が必要(自己発表後1年以内の出願については、新規性喪失の例外規定の適用を受けることが可能)である。
    • どのタイミングで出願し公表するかなどの戦略も必要になるため、知財戦略は、所属機関の知財担当部署、先生がパートナーとなる製薬企業に相談して決めた方が良い。
  • Q

    【がん】【低分子】
    知財を取得する際に考慮すべきことは?

    A

    知財調査は競合状況次第にはなるが高頻度に実施する

    • 知財部が簡易調査として シード・リードが出た時点で実施し、開発品が得られた時点でフルの徹底した調査する。また、合成担当の研究者はデータベースを駆使して競合品の公開情報調査を日々調査した方が良い。
    • 市販のデータベース(特許出願や臨床試験、学会発表などに関するデータベース)では設定したキーワードに関して毎月レポートをメール送付してくれるサービスがある。