創薬企画・評価課 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業における令和3年度新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する研究開発課題の事後評価結果について
令和3年度「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業」の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する研究開発課題の事後評価結果を公表します。詳細は各項目をご覧ください。
事後評価
1.事後評価の趣旨
事後評価は、研究開発の実施状況、研究開発成果等を明らかにし、今後の研究開発成果等の展開及び事業運営の改善に資することを目的として実施します。
新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(以下、本研究事業)では、評価委員会を以下の日程で開催し、本研究事業における事後評価の評価項目に沿って、評価対象課題別に書面審査による事後評価を実施しました。
2.事後評価委員会
開催日:令和4年9月12日(月)、9月13日(火)、9月27日(火)、9月29日(木)、10月4日(火)
3.事後評価対象課題
(内訳)- 令和2年度4次公募採択:17課題
- 令和2年度5次公募採択:44課題
- 令和3年度2次、4次公募採択:6課題
- 令和3年度3次公募採択:9課題
4.事後評価委員
- 令和2年度4次公募 101-203 採択課題 課題評価委員 6名
- 令和2年度4次公募 301, 401採択課題 課題評価委員 7名
- 令和2年度5次公募 101採択課題 課題評価委員 7名
- 令和2年度5次公募 201採択課題 課題評価委員 7名
- 令和2年度5次公募 301採択課題 課題評価委員 6名
- 令和2年度5次公募 401採択課題 課題評価委員 7名
- 令和2年度5次公募 501採択課題 課題評価委員 7名
- 令和3年度2次、4次公募採択課題 課題評価委員 7名
- 令和3年度3次公募採択課題 課題評価委員 8名
5.評価項目
- 研究開発進捗状況について
- 研究開発成果について
- 実施体制
- 今後の見通し
- 事業で定める事項
- 研究を終了するにあたり確認すべき事項
6.総評
総合評点は4.4~8.3点の分布であり、見直し必要レベル(6.0点未満)が13課題あったが、それ以外の課題については、期待通り、またはそれ以上の進捗と成果が得られていると評価された。
各課題の主な成果を以下に記載します。
① 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬開発推進のための技術開発等(令和2年度4次公募)
- 新たにカニクイザルを飼育可能なABSL3感染実験室(アイソレーター、解剖用安全キャビネット、体温測定テレメトリーシステム、X線画像撮影システム等を導入し、COVID-19新規治療薬の有効性評価が行える環境)を整備した。
- SARS-CoV-2感受性マウスを作出するため、ヒトACE2およびTMPRSS2遺伝子を同時に導入したマウスを作製した。マウス馴化SARS-CoV-2ウイルスを種々の高齢遺伝子改変マウスに感染させ、病態に大きな影響を与える複数の遺伝子を見出した。
- 新型コロナ感染症患者を対象として全血mRNAの網羅的解析を行い、新型コロナ感染症患者には予後の異なる2つの新規分子病態が存在することを見出した。新型コロナ重症患者における、血漿プロテオミクスを行い、3つの主要血漿蛋白(WFDC2、CHI3L1、KRT19)に基づく予後の異なる3つの新規分子病態の存在を明らかにした。
- マウス馴化型SARS-CoV-2株を樹立した。SARS-CoV-2に感染したマウス肺の生体イメージングに成功し、COVID-19肺炎重症化メカニズムの一端を明らかにした。VOC株(ガンマ株、オミクロンBA.1株、オミクロンBA.2株)の公衆衛生上のリスクを世界に先駆けて明らかにした。
- 新型コロナウイルス変異株のうち、特にリスクが高いと考えられる変異株(デルタ株、ラムダ株、ミュー株、オミクロン株)に対して性状解析を実施し、その研究成果をリアルタイムに社会に発信した。
- 新興再興感染症の治療法・新薬開発等の臨床試験の立案・実施に必要な基盤としてGLIDE(Global Initiative for Infectious Disease)を設立し、国内外での臨床試験を実施する上での課題の整理を行なった。本研究の中で3件(国内2件、国際1件)の臨床試験の検討を行い、うち国内試験1件を立案・実施した。
- COVID-19重症化に関する機序解析において、重症化前にインターフェロンラムダ3が上昇することをマウスモデルで確認し、同様の現象をインフルエンザモデルでも確認した。Long COVIDに関する検討では、各症状の発症に関連するヒト遺伝要因、血中の液性因子を同定した。
- シリアンハムスターの各種背景データを取得するとともに、シリアンハムスターの供給体制の増強及びSARS-CoV-2の検査体制を整備した。またSARS-CoV-2取り扱いが可能なBSL3施設にて、SARS-CoV-2の感染実験が行えるように環境整備した。
- 実験補助研修を行い、動物実験および飼育業務に従事可能な複数の人員を育成した。さらに、COVID-19の感染実験が円滑に行える複数の機器を導入し、今後新たな感染症が発生した際に、速やかにレンタルラボとして稼働できるよう、環境整備した。
- 新たに構築した約1200名の大規模データベース、バイオバンクを用いて、病院版、自宅療養・宿泊療養の重症化予測スコアを開発した。IL-6が人工呼吸管理患者における治療指標になること、血液SARS-CoV-2 RNAが重症化指標、抗ウイルス薬などの治療適応指標、有効性の指標になる可能性を見出した。
- 抗ウイルス薬の評価に向けてHFIM(Hollow-Fiber Infection Model)の構築を検討し、試験運転を行った際に見出された問題点に対して解決を試みた。
- より簡便で安定的に患者血清中の感染増強抗体価を測定する系を構築し、パンデミック以前に採取された患者血清を測定したところ、COVID-19重症患者には感染増強抗体が高く産生されている傾向を見出した。
- 医療現場の最前線に立つ医療従事者から多大な協力を得て、アジアで最大の生体試料を持つバイオレポジトリーを構築し、アジアで初めてのGWAS解析を実施した。当該解析より、COVID-19疾患感受性遺伝子DOCK2を同定し、ヒト検体・ハムスターモデルを用いて、DOCK2と重症化との関連を明らかにした。
- EとOrf3aを欠損させることによって1回感染型SARS-CoV-2tcpの作製に成功し、文部科学省より本ウイルス株のP2施設での使用に関する許可を得た。これにより、SARS-CoV-2の中和活性評価や感染イメージング評価をP2施設において行えるようになった。
- SARS-CoV-2カニクイザル感染モデルを検討し、感染後3日目もしくは5日目においてウイルス感染に伴う肺炎が認められること、一部の高齢ザルでは炎症像が長期に観察されることを確認した。感染によるサイトカイン変動ではヒトでの知見と同様のサイトカイン・ケモカインが変動し、SARS-CoV-2カニクイザル感染モデルはヒトの病態を反映したモデルとなりうることを確認した。
- iPS細胞由来の気道・肺胞上皮細胞を用いて3つの培養フォーマット(気面液面境界培養、96-well、オルガノイド)を検討・構築し、これらは薬効評価、多検体評価、炎症・線維化モデル系として利用できることを確認した。
- これまで30以上のプロジェクトで約3万の低分子、中分子(ペプチド、核酸、PROTACなど)、高分子、ワクチンシーズの評価を行い、多くの抗SARS-CoV-2を発見した。有望なものの一部に関しては特許出願、論文発表を行い、臨床研究等に移行したものもある。
② 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する研究(令和2年度5次公募)
- SARS-CoV-2 の増殖にプロリン異性化酵素 Pin1が必須であることを証明した。作用機序としてPin1がNタンパクに強く結合し、 double membrane vesicleの形成に関わる可能性を示した。
- レムデシビル基本骨格から誘導されたOctyl-N4Pの抗ウイルス活性をウイルスRNA量を指標としたin vitro試験にて確認した。
- COVID-19 ウイルスワクチン開発において、SタンパクのNTD領域に対する中和抗体も産生されるようなワクチン抗原の設計が有効性向上において重要であることを明らかにした。また、患者由来のNTDに対するモノクローナル抗体の中に感染性を増強させる抗体があることを示した。
- BSL2施設での実験を可能にする、感染性が無く自律増殖できるTransient SARS-CoV-2レプリコンの開発に成功し、本系を用いて種々の抗ウイルス薬の評価を実施した。
- 相対実効再生産数を計算し、国内における変異株の割合の推移をリアルタイムに予測して厚労省アドバイザリーボードに報告し、政府の感染症対策に資する科学的データを提供した。
- COVID-19 重症化カニクイザルモデルを作成して、季節性コロナウイルス既感染の、SARS-CoV2感染への影響を調べた。
- 新型コロナウイルス抗原によって惹起される細胞傷害性T細胞(CTL)が認識する抗原ペプチドを同定するとともに、当該抗原を認識するT細胞レセプターの同定、および CTLの抗ウイルス機能を明らかにした。デルタ株などの変異株に特徴的な一部のスパイク蛋白質の変異(L452R など)により CTL からの逃避が起こることも明らかとした。
- メインプロテアーゼ(Mpro)にする可逆的共有結合阻害剤の開発を目指して、システイン残基と可逆的に反応する反応基である CFAを用いた構造展開を行い、ウィルス感染細胞系において強い阻害活性を示すHI-004、YH6を見いだした。
- COVID-19 重症者の10%以上が抗I 型IFN中和自己抗体を持ち、致死率が上昇することを見いだし、重症化の早期予測法となる可能性を示した。
- SARS-CoV-2ウイルスの核内移行へのORF6の関与に加え、ウイルス感染後の宿主核小体を阻害することが新規治療薬になりうる可能性を示した。
- hACE2 Tgマウスを用いたSARS-CoV-2感染モデルにて、アンチセンス核酸医薬候補の評価を実施し、LNP製剤化によって有効性が大幅に向上することを確認した。また安全性評価の一環として、オフターゲット遺伝子の有無を細胞系にて検証し、オフターゲット遺伝子が見いだされなかったことより、オフターゲットの懸念は低い可能性を示した。
- COVID-19モデルとして有用なシリアンハムスターに対して、効率的なゲノム編集個体作製技術を確立させ、重症化リスクに関連する、老化(klotho KO)、肥満(leptinまたはleptin受容体KO)の病態モデルを作出した。またACE2をヒト化したCOVID-19ラットモデルの作成を進めている。
- 酸素投与を必要とするCOVID-19中等症肺炎患者を対象として、アドレノメデュリン投与の安全性、有効性を検証する第Ⅱa相医師主導治験を開始したが、オミクロン株の特性の影響を受け、患者登録が思うように伸びず、2022年3月末で患者登録31名/目標60名に留まった。
- Nタンパクの重合阻害では、液滴形成阻害による化合物選抜を進めたが、スクリーニング評価系の課題が解決せず、中止とした。ウイルス侵入阻害については、in vitro感染実験において一定の有効性が認められた。
- SARS-CoV-2 の分子疫学的モニタリングシステムを全国展開し、ウイルス株の伝播動態及び海外変異株の流入やワクチン・薬剤耐性関連変異株の発生等を即時的に監視・追跡した。
- 従来の抗凝固療法が中等症では有効であるが、重症例には有効でないことを示した。
- 新型コロナウイルス後遺症の倦怠感やうつ症状を呈するモデルマウスを開発し、新型コロナウイルス後遺症の当該症状発症に脳のアセチルコリン不足が関わることを明らかにした。また、ドネペジルによるアセチルコリン不足の解消が治療効果を持つことを見出し、ドネペジルの早期実用化の可能性を示した。
- 2021年2月~11月にかけて国内7施設においてCOVID-19に対する回復者血漿の有効性を評価するためのランダム化比較試験を実施し、26例の登録を行った。
- SARS-CoV-2抗原ワクチンのアジュバントとしてCVPを医薬品添加物の中から見出し、最適化組成を決定した。マウス、ハムスター、フェレット、カニクイザルを用いて、CVPの経鼻投与、皮下投与、筋肉内投与による優れた感染防御効果を確認するとともに、副作用と関連するIFNγやCXCLケモカインなどの発現に対しては現在使用されている通常のアジュバントより影響がないこと、安全性が高いことを示した。
- COVID-19のパンデミックに対応するために、ECMOや人工呼吸を要する重症COVID-19患者の全国の治療状況を一元的にリアルタイムに可視化可能なシステム(既存システムであるCRISISの発展系となるEDCシステム)を構築し、治療方法の改善や感染予防に広く活用された。
- SARS-CoV-2 Eタンパク質と細胞性PDZドメインタンパク質の相互作用を介してウイルス粒子形成を阻害する化合物が、感染性 SARS-CoV-2粒子の形成過程を阻害する新しいタイプの抗ウイルス薬となり得る可能性を示した。
- 日米2000例のCOVID-19感染者の臨床情報を用いて、重症化(正確度82%)と予後(正確度85%)予測を可能とする、危険因子15個によるAIアルゴリズムを最適化し、東大病院から重症化の予測サービスの提供を開始した。さらに変異株に対応した自己修正システムを組み込んだアップデート版の作出にも成功した。
- VHHのスクリーニング・結合解析から、三量体の動物作用評価までほぼ計画通りに進め、マウス感染モデルにて抗ウイルス作用を確認した。
- 3回目接種後やブレイクスルー感染後でのオミクロン中和抗体の誘導を説明可能とする免疫学的根拠データを取得し、免疫細胞プロファイリングやレパトア解析により、ワクチン接種後、中和抗体は時間と共に減衰すること、オミクロン株を交差中和する記憶B細胞の存在やT細胞は長期間維持されることを明らかにした。
- オルガノイド技術およびヒトiPS細胞を用いて、COVID-19の発症・重症化とその個人差を再現できるモデルを構築した。気管支オルガノイドを用いることで、ウイルスの感染と複製だけでなく、自然免疫応答の評価、感染細胞の特定、気管支上皮細胞層の破壊と再生を再現できることを示した。
- 高圧浣腸デバイスプロトタイプを作製し、ブタ低酸素モデルを用いてパーフルオロカーボン(PFC)の有用性を証明した。またPFCが直腸粘膜障害を引き起こさないことや経直腸投与PFCが血中移行しないことなどを非臨床試験にて確認した。
- 新規のデジタル核酸検出技術opn-SATORI(automated platform on SATORI)を開発し、 opn-SATORI法を用いることにより、臨床検体中のSARS-CoV-2由来RNAをPCR検査と同等の感度で検出できること、SARS-CoV-2変異体を高精度で迅速識別できることを確認した。
- 目標症例数100例に対して、デルタ株による第5波が終焉し、肺炎を起こす患者が少ないオミクロン株に代わったことで、22年3月末で70例の症例登録留まった。22年9月まで治験を継続する。
- 肺の内皮細胞に注目して、重症化に関わる機序の解明に繋がる新たな知見を見出した。
- ウイルスS1タンパクとACE2との相互作用を制御するHLHペプチドのデザイン・合成展開から、ウイルス感染を阻害するペプチドを取得した。
- 将来のパンデミック対応にも資する研究基盤として、人材育成、国内外でのネットワーク構築などを行った。
- 既存嫌酒薬ジスルフィラムがSARS-CoV-2による肺炎症および線維化に対して有効であることを明らかにした。吸入製剤FN-01を開発し、吸入投与を用いることにより安全性の確保が可能であることを示し、COVID-19の重症化抑制、Long COVID抑制の臨床試験開始に繋がる成果を得た。
- マウス感染モデルにおいて経鼻2回投与で、高い効果を示すペプチドS-880008を創製した。本ペプチドは抗体とは異なる様式でSARS-CoV-2スパイク蛋白と結合し、オミクロン株を含むすべてのVOCに対して抗ウイルス活性を示した。
- ヒト5型Adベクターのヘキソンとファイバー領域の改変を行い、改変技術に関する特許出願を行った。また、HEK293細胞を用いた閉鎖系大量細胞培養系にて、ヒト35型Adベクター製造の製造基盤を構築した。
- SARS-CoV-2メインプロテアーゼの基質ペプチド型阻害剤GRL-2420を基に、更に高活性と薬物動態改善を目指して化合物展開を行い、有望化合物TKB-245およびTKB272を創製した。また独自に作出したヒトACE2ノックインマウスへのオミクロン株感染系を用いて抗ウイルス作用を確認した。
- 2020年7月23日~2021年9月30日の間に、123例の被験者を登録した。主要評価項目である登録からウイルス陰性化までの日数の中央値において、ネルフィナビル群と対症療法群との間に統計学的な有意差は認められなかった。
- COVID-19をはじめとしたウイルス感染性肺炎における生体内タンパク質Xの影響を検討し、マウスのインフルエンザウイルス経鼻感染モデルにおいて、生体内タンパク質Xの有効性を確認した。
- 独自のタンパク質分解技術 CANDDY を用いて、SARS-CoV-2 のメインプロテアーゼ(Mpro)を分解するタンパク質分解剤の開発を試みたが、無細胞系においてMpro 分解活性を示す化合物を取得できなかった。
- ナファモスタットとファビピラビルの併用効果を検討したA研究は2020年5月から開始し、新たな薬剤の承認など研究環境の変化から患者登録に困難さが増したため、目標症例数を160例から45例に変更し、2021年12月に患者登録を終了した。ナファモスタット単独での効果を検討したB研究については2021年7月の試験開始当初、感染者数が減少したため患者登録が進まなかったが、2022年3月末現在11施設の参加で17例の患者登録となった。
- オミクロン株を含む変異ウイルスに有効な中和抗体のスクリーニング方法を開発し、それを用いて、オミクロン株(BA.1、BA.2)も含む様々の新型コロナウイルス変異株に対して高い中和活性を持つモノクローナル抗体を複数見出した。
- SARS-CoV-2 Nタンパク抗体を結合した蛍光磁性ヤヌス粒子と閉鎖系マイクロ流路チップを開発し、Express Biocheckerを用いたイムノアッセイによりSARS-CoV-2を迅速・選択的に検出する、新たな可搬型の検査装置に成功した。
- 感染患者の希釈した血液を用いて、血清の希釈度が高いとADEを引き起こすが、希釈度が低いと中和抗体活性が優勢となり、ADE抗体は大きなリスクにはならないことを示した。
- 当初目標のキメラ人工核酸の大量合成には至らなかったが、抗ウイルス作用を目的とした基礎研究面において一定の成果を得た。
- リード化合物より抗ウイルス活性が強く、SARS-CoV-2のVOC株にも有効性を示す誘導体を得た。標的となる結合タンパク質の一部を明らかにし、内因性酸化ステロールに比べて抗ウイルス活性の選択性が高いことを確認した。
③ 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する疫学調査等の推進に関する研究(令和3年度2次公募、4次公募)
- 研究コンソーシアム「The Genotype to Phenotype Japan (G2P-Japan)」を主軸として、新型コロナウイルス変異株の性状解析を迅速に実施し、ミュー株の中和抗体に対する抵抗性やオミクロン(BA.1)株の病原性や増殖力の特性等について、複数トップジャーナルにその成果を報告した。
- 広島県における官(広島県感染症・疾患管理センター)と学(広島大学)との提携によるCOVID-19研究基盤を構築し、変異株を迅速に捉えるプロトコルの考案、感染性ウイルス排出期間の検討等といった感染症対策に資する多様な研究成果を挙げられた。
- 3つのコホートを通じた北海道・東北地方の臨床検体・情報の収集や、変異ウイルスの作製及び性状解析を実施した。免疫系の詳細解析に加え、AIナノポアやダイヤモンドナノセンサー検出系の開発を推進した。
- 患者レポジトリーの整備、アジア人集団に特異的なCOVID-19疾患感受性遺伝子DOCK2の同定、SARS-CoV-2感染肺胞オルガノイドモデルの構築に基づく(候補)治療薬の検証等において、顕著な研究成果を挙げられた。
- 交差抗原に対するT細胞の保有の有無が重症化に関わること、COVID-19感染症の病態解明と重症化阻止のための創薬標的分子の探索、標的分子に対する有望化合物の探索など、感染メカニズム・免疫メカニズムを理解するための基盤となる多数の重要な知見を得た。
- オミクロン株BA.2の増殖能と病原性はオミクロン株BA.1と同等であることを明らかにした。オミクロン株BA.1とBA.2に対するワクチンによる抗体価比較等の解析を行った。
④ 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬開発・ワクチン接種後の免疫反応解明(令和3年度3次公募)
- マルチマー型アンチセンス核酸のDDS技術を確立し、気管内投与による肺へのデリバリーを確認した。将来のパンデミックの備えとして、in silico有効性・安全性予測技術に基づく1000本規模のアンチセンス核酸ライブラリーを整備した。
- ACE2結合面を広く覆う結合様式の高変異耐性抗体を創製し、大手製薬企業との連携の下にRBCの作成を経て製造条件を整備した。またPMDAとの対面助言を行い、非臨床試験パッケージの合意を得て、非臨床試験実施の準備を整えた。
- ペプチドmJIP35は、新規な機作でSARS-CoV-2の宿主細胞への侵入を阻害すること、マウス感染致死モデルを用いて抗ウイルス活性を示すことを確認した。
- モデルナ社製ワクチン被接種者はファイザー社製ワクチン被接種者に比べて、接種半年後の細胞性、液性免疫がともに高水準にあること、ファーザー社製ワクチンの追加接種によりオミクロン株(BA.1系統)に対する中和抗体獲得が可能であることを明らかにした。
- SGDD技術に基づいて創製された抗SARS-CoV-2薬候補(ペプチドCe149やCe17)のウイルス感染モデルでの評価を行い、経鼻投与にて肺のウイルスRNA量を顕著に低減させる作用を有することを確認した。
- 高親和性ACE2製剤の吸入投与による治療効果をCOVID-19カニクイザルモデルを用いて検討し、0.25mg/kgより有意に治療効果を示した。本製剤はミクロン株にも中和活性が保持され、半減期が長いことを確認した。
- HMcAとs2Uの評価を行い、SARS-CoV-2変異株(オミクロン株含む)に対して有効であること、in vivo感染モデルにおいても抗ウイルス作用を示すことを明らかにした。候補化合物の大量合成法を確立した。
- 中和抗体mRNA-LNPの有効性をマウスで検証するとともに、候補中和抗体の親和性と血中滞留性を向上させ、その中和抗体の有効性や物性を評価した。製剤とするため中和抗体mRNA構造とLNP脂質組成の最適化を実施した。
- 標的(SARS-CoV2 RNA)との二本鎖形成により標的RNAがRNase Hで分解されると複合体から解離し、触媒的に再び核酸医薬として機能するヘテロ人工核酸を作製し、複数の有効な配列を取得した。
本研究事業は感染症から国民及び世界の人々を守り、公衆衛生の向上に貢献するため、感染症対策の総合的な強化を目指します。そのために国内外の感染症に関する基礎研究及び基盤技術の開発から、診断法・治療法・予防法の開発等の実用化研究まで、感染症対策に資する研究開発を切れ目なく推進することとしております。
最終更新日 令和5年11月27日