創薬企画・評価課 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業における令和4年3次公募及び4次公募課題の事後評価結果について

令和4年度「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業」の令和4年3次公募及び4次公募課題の事後評価結果を公表します。詳細は各項目をご覧ください。

事後評価

1.事後評価の趣旨

事後評価は、研究開発の実施状況、研究開発成果等を明らかにし、今後の研究開発成果等の展開及び事業運営の改善に資することを目的として実施します。
新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(以下、本研究事業)では、評価委員会を以下の日程で開催し、本研究事業における事後評価の評価項目に沿って、評価対象課題別に書面審査・ヒアリング審査による事後評価を実施しました。

2.事後評価委員会

開催日:令和5年9月22日(金)、9月25日(月)、10月3日(火)、10月4日(水)、10月6日(金)、10月13日(金)

3.事後評価対象課題

(内訳)
  • 令和4年度3次公募課題:58課題
  • 令和4年度4次公募課題:18課題

4.事後評価委員

評価委員については以下のPDFファイルをご覧ください。

5.評価項目

  1. 研究開発進捗状況について
  2. 研究開発成果について
  3. 実施体制
  4. 今後の見通し
  5. 事業で定める事項
  6. 研究を終了するにあたり確認すべき事項

6.総評

総合評点は3.4~8.2点に分布し、計画通り進捗していない(6.0点未満)と評価された課題が19課題あったが、それ以外の課題については、期待通り、またはそれ以上の進捗と成果が得られていると評価された。

各課題の主な成果を以下に記載します。

① 令和4年度3次公募課題

  • バックアップ研究より見出されたRdRP阻害化合物は先行品を上回るウイルス力価抑制効果を示し、核酸系化合物によくみられる変異原性や催奇形性リスクがないことを確認した。
  • 生体内で蛋白質医薬品を効果的に産生できるmRNA原薬の精製方法(TLR刺激物除去)ならびにLNP組成(長鎖核酸対応)を新たに見出し、候補製剤を選定した。SARS-CoV-2のマウス感染実験において、感染制御効果を実証した。
  • 非臨床開発開始までに必要な製法検討、物性研究、薬物動態研究、安全性研究及び非臨床研究を概ね計画通り進めた。
  • クローン286の評価を進め、広範な変異株に中和活性を示し、サル感染モデルにおいて治療効果を確認した。
  • 開発候補抗体であった2抗体ともにBA.5以降のオミクロン株に対する中和活性が大幅に減弱したことから開発を中止し、その後新たに見出し、ハムスター感染モデルにおいて治療効果を示した2抗体を新たな開発抗体として選択した。
  • 開発化合物は、懸念された発生毒性はなく、先行認可薬に比べて数百倍強力な抗ウイルス活性を有することを確認、これを受けて非臨床試験を開始し、2023年3月に初回治験届を提出した。
  • 抗SARS-CoV-2ペプチド医薬候補品の原薬供給・塩形最適化を達成し、吸入製剤開発にもめどをつけた。また本候補品のラット/サルに対する高い安全性が確認された。立体構造の観点から、本ペプチドが既知および将来出現が予想される変異体に有効性を示す分子メカニズムを解明した。
  • siRNA#314/LNP基質の合剤の微粒子吸入製剤をSFD法を用いて10gスケールでの製造に成功した。更に本製剤の有効性をSARS-CoV-2ハムスター感染モデルを用いて確認した。
  • ウイルス感染症およびワクチン接種後副反応として発症するリンパ球性心筋炎に対する新規の確定診断法と治療法の開発を行った。
  • 3N39v4-Fc の幅広い変異株での有効性を確認、さらに霊長類モデル、マウス感染モデルに対する有効性を確認した。
  • TKB272は、種々のSARS-CoV-2バリアントおよびMERSに対するin vitro抗ウイルス活性において、承認薬の活性を大幅に上回り、マウス感染モデルにおいても有効性を示した。
  • アドレノメジュリンのCOVID-19に伴う中等症、重症肺炎に対する効果を検証したが、明確な作用を確認することはできなかった。
  • 抗炎症薬コルヒチンの、サイトカイン生成NLPR3インフラマゾーム形成抑制作用によるCOVID-19重症化予防を目的とした特定臨床試験を2023年1月より開始した。
  • コリンエステラーゼ阻害剤ドネペジルのCOVID-19後遺症に対する臨床効果を検証するため、1群60例のプラセボ対照の第Ⅱ相試験を2022年12月に開始した。
  • フルボキサミンのCOVID-19の重症化に対する予防効果を検証するため、2022年11月に治験届を提出し、2023年3月より被験者組入れを開始した。
  • 抗体の感染防御能「抗原結合親和性(抗原捕捉力)」を定量評価する「抗原結合親和性抗体価」(ABAT)測定法を確立し、ABAT測定の自動化システムとbinding-avidity 解析ソフトの実装性を確認した。
  • AIを用いて COVID-19患者の臨床情報から重症化と予後予測アルゴリズムを構築し実臨床で使用されている、またスパイラルに自己修正するプログラムの改良を行った。
  • 腸換気法(酸素フルオロカーボンによる腸換気法)を考案し、医療機器としてデバイス形状や直腸への投与条件を小動物(ラット等)と中動物(豚)を用いて最適化し、企業との連携にて治験計画の届出を提出した。
  • 唾液を用いた新規迅速抗原検査法の開発では薬事承認を取得、その他、AIナノポアやダイヤモンドナノセンサーを用いた変異型新型コロナウイルスの新規診断法開発、GFP搭載変異ウイルス作製による迅速、簡便なウイルス中和能評価システムの構築等を進めている。
  • 血管内皮細胞と免疫細胞を含んだ肺オルガノイドを作製し、SASRS-CoV-2感染による肺線維化モデルを開発した。
  • CPER法を用いて1回感染型ウイルス(SARS-CoV-2tcp)の蛍光タンパク質発現ウイルス、及びB6系統に感染可能なマウス馴化ウイルスの感染モデルの作出に成功した。
  • ABSL3研究拠点、若手人材養成環境、および遺伝子改変動物作製体制の構築や整備を行った。ABSL3での小動物感染実験体制では、複数のウイルス(SARS-CoV-2、インフル、SFTS等)と複数の動物種(マウス、ハムスター等)を使用できる体制を整えた。
  • ABSL3での小動物への呼吸器感染施設およびARDS解析体制の整備に加え、ユニークな呼吸生理学的評価を行うことが可能なSARS-CoV-2の感染動物実験モデルの確立に成功した。
  • M. tuberculosisやM. aviumが生菌数依存的に宿主細胞に傷害活性を示すことを利用した、通常2~3週間かかる抗菌活性を2~3日で測定可能とする、迅速high throughputスクリーニング系を構築した。
  • 感染細胞培養系や(遺伝子改変も含む)感染動物モデルによる探索系あるいは評価系に用いて、アカデミア研究者および企業との約20の共同研究プロジェクト(共同研究・委託研究)を実施し、阻害薬候補の最適化、知財化、臨床研究への移行に貢献した。
  • 感染症に係る臨床研究を効率的に進めるため、Global Initiative for Infectious Disease(GLIDE )内の連携強化を行い、分散型試験(DCT)やe-consent、プラットフォーム試験や汎用性の高いプロトコルの作成、産官学との連携、REBINDとの連携、臨床試験ネットワークの維持や、有事の感染症の臨床試験実施に必要な提言等を行った。
  • AMRに関するアジア太平洋ワンヘルスイニシアチブ(ASPIRE)において、捕捉し注視すべき薬剤耐性菌(サルモネラ、赤痢、カンピロバクター、肺炎球菌、淋菌等)について、ゲノムレベルで解析し、耐性遺伝子の保有状況を比較した。また、現場で実利用できる検出・診断系として、安価で迅速な遠心熱対流PCR法を開発した。
  • COVID-19流行時の広島県での分子疫学、血清疫学、ワクチンによる重症予防効果、後遺症、血漿中のmiRNAの重症患者での検出等幅広く研究を手がけ、多くの成果を挙げられた。
  • COVID-19重症化メカニズムを検討し、SARS-CoV-2感染により生じる、好中球と血小板による微小血栓により、肺血流障害が生じCOVID-19肺炎が増悪するといった機序の存在を明らかにした。
  • ハムスターモデルを用いて、DOCK2低下がType 1 IFNの産生を抑制し、COVID-19を重症化させることを明らかにした。
  • 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)発症動物モデルを用いた研究の実施体制が整備され、SFTS流行地の臨床情報が集積されつつあり、自然発症動物隔離モニタリングシステムが開発された。
  • 新たなリスクの高い新型コロナ変異株の出現後、わずかひと月でウイルス性状解析を完遂することを可能する、バイオインフォマティクス手法の開発に成功した。本コンソーシアム研究により、高リスク変異株の実効再生産数の推定、免疫抵抗性、病原性および、オミクロン株のウイルス学的性状などについて迅速に評価・検証がなされ、科学的根拠に基づいた情報をリアルタイムに発信した。
  • 特定のファージ由来溶菌酵素が多様な耐性菌を殺菌することや、主にある特定の核酸を発現させると殺菌効率が高まることを明らかにし、マウス腹腔感染モデルで当該分子搭載ファージカプシドの治療効果を確認した。
  • ライソシンEはMRSAによるマウス感染モデルに対し、他の抗MRSA薬よりも低用量で治療効果を示すことを確認した。
  • 多剤耐性緑膿菌感染症の治療効果を高める狙いのもとに薬剤排出ポンプ阻害剤リードの探索を行い、複数の候補化合物を見いだした。
  • 結核ファージ改良法を独自に開発し、細胞内寄生細菌を高効率に殺菌出来るファージカプシドの開発に成功した。また世界に先駆けて結核ファージの治療効果を評価できるマウス結核モデルを構築した。
  • 重症化抑制を目指して8重shRNAとガイドRNAを多重に発現するアデノウイルスベクターを構築し、SARS-CoV-2に対する増殖阻害効果を評価したところ、レプリコン細胞で認められた複製阻害が、培養感染細胞、in vivoにおいては認められなかった。
  • 肝細胞由来sPLA2 reacted EV derivatives(SPREDs)を人工的に合成修飾した人工SPREDsの治療効果を検討し、種々のモデル動物に対する治療効果を認め、特にインフルエンザ感染モデルに対する組織保護効果が高いものであることを確認した。
  • 宿主のプロリン異性化酵素であるPin1の阻害薬として、効果の高い誘導体を新たに取得した。またPin1の作用点が他の治療薬とは異なる、ユニークなものである可能性を提示した。
  • 超硫黄ドナーがSARS-CoV-2に対する直接的な抗ウイルス作用を有し、超硫黄ドナーの投与が、A型インフルエンザ感染マウスモデルに対して有効であることを示した。
  • CV804抗体が結合する高次構造(コンフォメーショナルエピトープ)の同定に成功した。また動物からヒトへのスピルオーバーにより将来感染性獲得の可能性があるコロナウイルス感染症に先制的に対応可能な抗体パネルを作製した。
  • ある生体内タンパク質は、本来有するとされる組織修復作用に加えて感染初期におけるIgMを介した感染防御能の強化といった新たな機序を有する可能性を提示した。更にSARS-CoV-2マウス馴化株感染モデルにおいて当該蛋白質投与によるウイルス数の抑制を確認した。
  • LPSによるARDSモデルマウスへのナノ医薬投与により、そのほぼ全量が肺へ到達し、特に肺胞マクロファージ特異的に集積することを確認、更にナノ医薬投与により炎症性マクロファージが組織修復性マクロファージへ分極し、肺胞洗浄液中の炎症性サイトカインが有意に減少させ、肺胞虚脱が修復されることを確認した。
  • ヒト鼻腔・中枢・末梢気道上皮細胞におけるCOVID-19感染モデルを構築し、SARS-CoV-2のデルタ株、オミクロン株の感染性、増殖性の違いを見いだした。また鼻腔上皮オルガノイドモデルにおいて、コロナウイルス患者由来の遺伝子発現が健常者と異なることを明らかにした。
  • プラズマ乳酸菌(LC-Plasma)の、自然免疫反応およびSARS-CoV-2複製増殖に対する作用を検証し、プラズマ乳酸菌刺激pDC培養上清による自然免疫活性およびSARS-CoV-2複製抑制効果を明らかにした。
  • これまで構築したcell-cell fusion系に加えて、HIVベースのシュードウイルスに各変異株のSタンパク質を発現させたcell-free系を構築して、各変異株の細胞膜融合活性、細胞侵入活性を数値化し、Sタンパク質の細胞膜融合活性は、Sタンパク質のS1/S2切断効率および形成されるプラークサイズと相関するなど、SARS-CoV-2の新規変異株の病原性予測に有用である可能性が示唆された。
  • 新規モダリティ―の技術検証を実施し、アプタマー創出からデュアルアプタマー作製までは達成したものの、アンドロゲンレセプターの分解活性は確認できなかった。
  • フラビウイルスのdsRNAを分解可能なdsRNaseを同定した。更に複製複合体(RC)の内部に局在する宿主因子を同定し、両者の融合タンパク質がフラビウイルスのウイルスゲノム複製およびウイルス増殖の抑制に関わる事を見出した。
  • COVID-19関連小児多系統炎症性症候群(MIS-C)に対する、病態関連サイトカインの網羅的解析より、診断時血清で川崎病との鑑別診断に有用な因子や重症MIS-C予測に有用なマーカーを複数見いだすことができた。
  • マラリア原虫の生存に必須なオートファジーを標的とした新たな薬剤開発に資する技術開発を実施し、2種のATGタンパク質を用いた原虫ATG相互作用阻害スクリーニング系の開発に成功した。また、原虫ATGの創薬標的としての有望性を示す結果を得た。
  • 重症熱性血小板減少症候群ウイルス(SFTSV)感染に有効なsiRNAを選択、細胞への取り込み活性の高い抗体との抗体-核酸複合体を作出し、抗ウイルス作用を検証したところ、in vitroにおける抗ウイルス予防・治療効果を確認することができた。
  • SARS-CoV-2-Mpro (main protease) を阻害する既知化合物(Ebselen)がMproを不可逆的に阻害して抗ウイルス活性を発現することを見いだすと共に、Ebselenより有効な化合物を複数見出した。
  • 日本人COVID-19患者における胸部CT所見を肺・肺外臓器含めて1200例程度で定量評価を実施し、肺体積と臨床的特徴との関連、肺炎体積のCOVID-19 重症度予測における有用性、大胸筋・脊柱起立筋と臨床的特徴との関連、椎体骨CT値の低下したCOVID-19患者の臨床的特徴等を明らかにした。
  • Nr4a3-Tocky SARS-CoV-2マウス(活性化T細胞動態のin vivo解析が可能)を用いた解析より、ウイルス/病原体による病態形成におけるT細胞免疫の重要性を示すデータを得た。
  • 心筋細胞由来エクソソームが、心機能低下を来すモデルマウスに対して心機能を回復させる作用を持つことに加え、in vitroの系においても炎症性マクロファージが分泌する炎症性サイトカインの量を低下させ、抗炎症作用を有することを明らかにした。
  • コロナウイルスSタンパク質のRBDに結合するヘリックス・ループ・ヘリックス (HLH) ペプチドの創出を目的として、迅速に感染阻害ペプチドを単離するスクリーニング手法を確立し、武漢株に対して結合活性を持つHLHを複数取得した。
  • オミクロン変異株を含む多様な変異株に抗ウイルス活性を示した、2種のラット由来抗Sタンパク質抗体のエピトープ解析を行い、当該抗体はSタンパク質の突出部を重鎖が認識する、特徴的な結合様式を持つ抗体であることを明らかにした。
  • 広域応答性抗体作製を目指し、アミノ酸変異が少ない領域をエピトープとするマウスMoAbを同定し、RDBの非ACE2結合領域とS2領域をエピトープとするIgG-scFv型二重特異性抗体4種を作製して、その性能を検討した。

② 令和4年度4次公募課題

  • 国内のLong-COVIDは1.嗅覚・味覚障害、2.呼吸困難・動悸、3.ブレインフォグ・うつ症状・倦怠感の3症候群に大きく分けられることを見出した。さらに、これらの症候群、および男女の違いによって、その原因となるコロナ反応性T細胞応答パターンが異なることを見出した。
  • CLDN5発現抑制に関わる阻害剤により、SARS-CoV-2によるCDLN5の発現低下と血管内へのウイルス侵入を抑制できることを確認、更にCLDN5が罹患後症状のバイオマーカーとなる可能性を提示した。
  • 患者血液サンプルによる独自のコホートを進め、Long COVIDの症状ごとに定量的データを取得し、各症状の罹患率を明らかとするとともに遺伝的素因や介在分子を特定した。
  • 国内最大のCOVID-19罹患後コホート研究での患者実態より、女性高血圧患者で後遺症が少ないこと、Ca拮抗剤内服患者において、脱毛が少ないことから、ミノキシジル等、血管拡張剤が女性の脱毛に有用な可能性を示した。また、うつ病等の神経性症状の後遺症の病態に活性化アストロサイトや活性化ミクログリアの関与を示唆する結果を得た。
  • COVID関連膠原病患者検体の解析から、抗体産生制御に関与するFc gamma receptor 2B(FcγRIIB)に対する自己抗体を確認した。また同患者血液中に認められる抗ACE2抗体がS蛋白質に対するmolecular mimicry抗体である可能性を見いだした。
  • COVID-19により致死的経過を辿った小児の重症化に関連性が高い遺伝子異常を同定した。抗I型IFN中和抗体の保有頻度が、COVID-19肺炎小児で高いこと、コロナワクチン接種後の急性心筋炎による死亡頻度が高いこと等、小児のCOVID-19重症化に及ぼす宿主免疫の影響を様々な角度から明らかにした。
  • 原因不明の小児急性肝炎に対する、患者検体を用いた病因検索や宿主免疫応答解析より、当該疾患における、CD8+T細胞の活性化・増殖を認めた。特にCOVID-19の亜急性期にCD8+T細胞の著しい活性化が認められた。
  • エムポックスウイルスを含むオルソポックス属ウイルスによる感染症に対する治療薬であるTPOXX®について、薬事申請及び承認取得に向けて海外申請パッケージを元に、申請資料作成および国内第Ⅰ相臨床試験実施の準備を行った。
  • エムポックスウイルスに対する抗ウイルス活性の標的分子として、DHODHおよびIMPOHを同定し、これらの分子はウイルス複製に重要な遺伝子であることを確認した。またヒトミエロイド系細胞株が抗ウイルス薬の評価に有用であることを確認した。
  • エムポックスウイルスに対する抗体取得からイムノクロマトキットの開発および性能評価まで、目標通りに達成した。イムノクロマト法の弱点であった感度についても、化学発光酵素免疫測定法を組み合わせることにより、イムノクロマト法の4倍以上の高感度検出に成功した。
  • PAMの制約を解除すべくCas12a の変異体を用いることにより、DNAウイルスのゲノムに係るCRISPR-Cas12aによる非増幅迅速遺伝子検査法の確立に成功した。
  • 3種類のエムポックスウイルスはいずれもヒトケラチノサイトおよびヒトiPS細胞由来大腸オルガノイドに感染することが確認され、特にヒトケラチノサイトでは、大腸オルガノイドと比較して、約7~42倍の高い感染効率を示した。また、エムポックスウイルス感染によりヒトケラチノサイトは形態異常を起こし、機能障害およびミトコンドリア障害を引き起こすことを明らかにした。
  • 市販マウスであるSCIDマウス、CASTマウス、マーモセット等を用いてエムポックスウイルス感染モデルの構築した他、エムポックスウイルスの病態解明に成功した。
  • エムポックスウイルスの感染中和活性を効率よく検証できるin vitro評価系を整備するとともに、複数抗原を認識しうる多価抗体に関わる研究体制を整えた。
  • エムポックスウイルスのゲノム診断法として、リアルタイムPCR法とNGSを確立し、この解析法を用いてコンゴで分離したウイルスの全ゲノム配列を決定した。
  • ライソシンEの臨床試験の実施に向けて必要な非臨床開発研究を行い、ライソシンEに対する感受性測定培地、GLP適用試験実施に用いる媒体処方を確定した。
  • MMAは23S ribosomal RNAを標的分子とする新規メカニズムにより抗菌活性を示すことを明らかにした。
  • 臨床濃度や投薬レジメンに応じて最も抗真菌効果が高い化合物、また、化合物の組合わせを探索するアプローチを確立した。増殖阻害活性を持つ化合物とその誘導体を見いだし、さらに、アゾール耐性に関与する既知のcyp51A遺伝子の耐性度を強化する新規遺伝子を同定した。

本研究事業は感染症から国民及び世界の人々を守り、公衆衛生の向上に貢献するため、感染症対策の総合的な強化を目指します。そのために国内外の感染症に関する基礎研究及び基盤技術の開発から、診断法・治療法・予防法の開発等の実用化研究まで、感染症対策に資する研究開発を切れ目なく推進することとしております。

最終更新日 令和6年2月2日