疾患基礎研究課 エイズ対策実用化研究事業における令和元年度課題評価結果について

令和2年3月
国立研究開発法人日本医療研究開発機構
戦略推進部感染症研究課

令和元年度「エイズ対策実用化研究事業」の事後評価結果を公表します。

事後評価

1.事後評価の趣旨

事後評価は、研究開発の実施状況、研究開発成果等を明らかにし、今後の研究開発成果等の展開及び事業運営の改善に資することを目的として実施します。

エイズ対策実用化研究事業(以下、本研究事業)では、評価委員会を以下の日程で開催し、本研究事業における事後評価の評価項目に沿って、書面審査及び対面審査にて事後評価を実施しました。

2.事後評価委員会

開催日:令和2年2月3日

3.事後評価対象課題

開始年度 終了年度 研究開発代表者名 所属機関名 研究開発課題名
H29 R1 潟永 博之 国立国際医療研究センター 新規薬剤によるHIV 感染症制御と合併症コントロールのための研究
H29 R1 明里 宏文 京都大学 HIV 感染症の根治療法創出のための基礎・応用研究
(順不同)

4.事後評価委員

氏名 所属・役職
味澤 篤 東京都福祉保健局 東京都立北療育医療センター 院長
今村 知明 奈良県立医科大学 公衆衛生学講座 教授
神奈木 真理 東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 免疫治療学分野 教授
谷 裕美子 ノバルティスファーマ株式会社 メディカル本部 免疫・肝臓・皮膚メディカルフランチャイズ部
中島 典子 国立感染症研究所 感染病理部 室長
馬場 昌範 鹿児島大学 ヒトレトロウイルス学共同研究センター 教授
福武 勝幸 東京医科大学 医学部医学科 臨床検査医学分野 特任教授
山本 直樹 東京医科歯科大学 名誉教授
横幕 能行 国立病院機構名古屋医療センター エイズ総合診療部 部長
(五十音順、敬称略、令和2年2月3日現在) 

5.評価項目

  1. 研究開発達成状況について
  2. 研究開発成果について
  3. 実施体制
  4. 今後の見通し
  5. HIV/エイズ対策の推進
  6. 研究を終了するにあたり確認すべき事項

6.総評

治療薬の進歩により、HIVに感染しても致死的状況を回避できるようになりましたが、HIV感染症自体は治癒することはなく、現在のHIV治療には長期の薬剤服用が必用となります。そのため、感染者のQOLの向上、医療経済上の負担軽減から、完治を目指した研究が重要な課題となっています。

本研究事業では、HIV感染症の根本的解決につながるHIV感染症の根治療法に資する研究について、基礎から実用化に向けて一貫して推進しています。あわせて、HIV感染症について感染機構や関連病態などの解析を進め、患者QOLの向上や医療経済上の負担軽減を目指しています。

令和元年度事後評価を実施資した2課題(3.事後評価対象課題)について、特に顕著な成果について記載いたします。

  • 日本人HIV感染者の生活習慣病の中で慢性腎疾患が最重要であるが、TDFの使用が尿細管障害を主体としてその発生に大きな影響を与えていることを示した。正確な腎機能のモニタリングにシスタチンCの有用性を示した。PIは骨質を悪化させ骨折リスクを増大させることを明らかにした。
  • iPS細胞由来造血幹細胞移植療法およびリザーバー縮減療法がHIV感染症の根治治療法として有望であることを明らかにした。

事後評価委員会では、すべての研究課題について、計画を超えて進捗しており『国際競争力がある成果/我が国の健康医療の発展に大きな貢献が期待される成果』と評価されました。

HIV療法の進歩により、HIV感染者の予後は向上されましたが、未だ根治療法は完成しておらず、抗HIV薬の長期服用が必要であり、薬剤耐性ウイルスの出現、副作用、QOLの向上などが重要な課題として残っています。

本研究成果は、これら課題の克服に向けた新しいHIV感染症の根治療法の創出、HIV関連疾患における課題克服に資するものであり、本事業では今後もHIV治療薬・治療法の開発・実用化に向けてさらなる基盤・臨床研究を推進します。

最終更新日 令和2年3月25日