疾患基礎研究課 エイズ対策実用化研究事業における令和4年度課題評価結果について

令和4年度「エイズ対策実用化研究事業」の事後評価結果を公表します。

事後評価

1.事後評価の趣旨

事後評価は、課題等について、研究開発の実施状況、研究開発成果等を明らかにし、今後の研究開発成果等の展開および事業運営の改善に資することを目的として実施します。

エイズ対策実用化研究事業(以下、本研究事業)では、評価委員会を以下の日程で開催し、本研究事業における事後評価の評価項目に沿って、評価対象課題別に書面審査・ヒアリング審査にて事後評価を実施しました。

2.事後評価委員会

開催日:令和5年1月30日

3.事後評価対象課題

      
開始年度 終了年度 研究開発代表者名 所属機関名役職 研究開発課題名
2020 2022 明里 宏文 国立大学法人京都大学 教授 HIV感染霊長類モデルを用いたHIV根治療法の有効性評価に関する研究
2020 2022 高折 晃史 国立大学法人京都大学 教授 アルパカVHH抗体技術を用いたHIV-1感染症の抗体製剤及びCAR-T療法の開発
(順不同)

4.事後評価委員

氏名 所属・役職
味澤 篤 東京都立駒込病院 感染症科非常勤
今村 知明 奈良県立医科大学 公衆衛生学講座 教授
神奈木 真理 関西医科大学 医学部 微生物学講座 客員教授
谷 裕美子 株式会社 バイオジェン・ジャパン メディカル本部 中枢神経領域 部長
山本 直樹 国立大学法人東京医科歯科大学 名誉教授
横幕 能行 〇 国立病院機構名古屋医療センター エイズ総合診療部 部長
〇:委員長(五十音順、敬称略、令和5年2月21日現在)

5.評価項目

  1. 研究開発達成状況について
  2. 研究開発成果について
  3. 実施体制
  4. 今後の見通し
  5. HIV/エイズ対策の推進
  6. 研究を終了するにあたり確認すべき事項

6.総評

 治療薬の進歩により、HIVに感染しても致死的状況を回避できるようになりましたが、HIV感染症自体は治癒することはなく、HIV感染の治療には長期の薬剤服用が必要であり、薬剤耐性ウイルスの出現、感染者のQOLの向上や医療経済上の負担軽減の観点から、治癒を目指した研究が重要な課題となっています。この課題を克服するため、本研究事業では、感染機構の解明等の基礎研究から実用化研究まで、HIV感染症の根本的解決につながるHIV感染症の根治療法に資する研究を推進しています。また、HIV感染症の関連病態の解析も推進しています。
 令和4年度に事後評価を実施した2課題(3.事後評価対象課題)について、いずれの研究課題も、我が国の健康医療の発展に大きな貢献が期待される成果であると評価されました。
 特に以下の点が高く評価されました。

  • 潜伏感染霊長類モデルを用いたリンパ組織のリザーバーサイズ定量に基づくHIV感染症根治療法の評価システムが完成に至った。同時にHIVリザーバー排除に有用な新規HIV活性化薬を開発した。本研究成果はHIV感染者への応用が可能なHIV感染症根治療法の創出に繋がるものと期待される。
  • アルパカVHH 抗体技術を用いてこれまでとエピトープが異なることが予想されるHIV-1 Env に対するVHH 抗体を2 クローン選抜した。既存の中和抗体より高い中和活性が得られ、その修飾により更なる活性の強化、対象ウイルスの広域化が期待される。新たなHIV-1 感染症の治療薬となる可能性があり、CAR-T 療法への応用などHIV-1 感染症の根治療法となる基盤技術になることが期待される。

最終更新日 令和5年3月1日