疾患基礎研究課 「新興・再興感染症研究基盤創生事業(多分野融合研究領域)」 令和4年度終了課題の事後評価結果について
令和4年度「新興・再興感染症研究基盤創生事業(多分野融合研究領域)」の事後評価結果を公表します。
事後評価
1.事後評価の趣旨
事後評価は、課題等について、研究開発の実施状況、研究開発成果等を明らかにし、今後の研究開発成果等の展開および事業運営の改善に資することを目的として実施します。
新興・再興感染症研究基盤創生事業(多分野融合研究領域)(以下、本研究事業)では、評価委員会を以下の日程で開催し、本研究事業における事後評価の評価項目に沿って、評価対象課題別に書面審査・ヒアリング審査にて事後評価を実施しました。
2.事後評価委員会
開催日:令和5年7月7日
3.事後評価対象課題
開始年度 | 終了年度 | 公募 | 研究開発 代表者名 |
所属機関名 | 役職 | 研究開発課題名 |
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2020 | 2022 | 一次 | 浅井 禎吾 | 国立大学法人 東北大学 | 教授 | 革新的天然物創製法に基づく薬剤耐性菌に対する抗菌薬リード化合物の開発 |
2020 | 2022 | 一次 | 有井 潤 | 国立大学法人 神戸大学 | 特命准教授 | 単一細胞解析によるヘルペスウイルス持続感染の分子基盤の解明 |
2020 | 2022 | 一次 | 岩見 真吾 | 国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学 | 教授 | ハイブリッドビックデータに基づいたB型肝炎患者層別化と最適治療を実現する多分野融合研究基盤の創出 |
2020 | 2022 | 一次 | 片岡 圭亮 | 国立研究開発法人 国立がん研究センター | 分野長 | シングルセル免疫動態解析によるHTLV-1感染状態・関連疾患における宿主-病原体相互作用の統合的理解 |
2020 | 2022 | 一次 | 齊藤 暁 | 国立大学法人 宮崎大学 | 准教授 | ウイルス蛋白質の非構造領域による液相制御の解明と治療への応用 |
2020 | 2022 | 一次 | 佐藤 賢文 | 国立大学法人 熊本大学 | 教授 | 多層的シングルセル研究によるHTLV-1関連病態予測サロゲートマーカーの探索とその臨床応用 |
2020 | 2022 | 一次 | 滝沢 直己 | 公益財団法人 微生物化学研究会 | 研究員 | 液-液相分離を基盤としたインフルエンザウイルス増殖機構の解明 |
2020 | 2022 | 一次 | 田口 歩 | 国立大学法人 東京大学 | 助教 | 新規培養技術を用いた、扁平腺接合部細胞における高悪性度HPV18型の潜伏持続感染および発癌機構の解明 |
2020 | 2022 | 一次 | 橋口 隆生 | 国立大学法人 京都大学 | 教授 | パラミクソウイルス中枢神経感染の分子機構解明と治療法創出に関する研究開発 |
2020 | 2022 | 一次 | 福原 崇介 | 国立大学法人 北海道大学 | 教授 | 病態進展に関与するウイルス叢の性状および進化機構の解明 |
2020 | 2022 | 一次 | 牧野 晶子 | 国立大学法人 京都大学 | 助教 | 先端的順逆遺伝学手法を用いたSARS-CoV-2の伝播機構解明 |
2020 | 2022 | 一次 | 村田 貴之 | 学校法人藤田学園 藤田医科大学 | 教授 | EBV感染・がん化機構解明のための多分野連携研究 |
2020 | 2022 | 一次 | 山口 雅也 | 国立大学法人 大阪大学 | 助教 | 肺炎球菌感染症において加齢および局所環境要因が重症化に果たす分子機構の解明 |
2020 | 2022 | 一次 | 山本 浩之 | 国立感染症研究所 | 室長 | 抗ウイルス中和抗体誘導の単位ドメインとなるリンパ節局所B細胞応答のシグナル幾何学 x 数値流体力学(CFD)的解析 |
2020 | 2022 | 一次 | 山本 雅裕 | 国立大学法人 大阪大学 | 教授 | 原子レベルで解明するトキソプラズマ寄生胞膜破壊と病原性因子によるその破綻 |
2020 | 2022 | 二次 | 加藤 大志 | 国立感染症研究所 | 客員研究員 | ウイルス-宿主インタラクトーム解析に基づく抗パラミクソウイルス薬の開発研究 |
2020 | 2022 | 二次 | 氣駕 恒太朗 | 自治医科大学 | 講師 | 薬剤耐性菌を殺菌する広宿主域バイオロジクスの開発 |
2020 | 2022 | 二次 | 小林 伸英 | 国立大学法人 金沢大学 | 助教 | 乳児ボツリヌス症の包括的理解に向けた基礎的・臨床的研究 |
2020 | 2022 | 二次 | 新澤 直明 | 国立大学法人 東京医科歯科大学 | 助教 | 流行地マラリア原虫株を用いた遺伝学とビッグデータ解析を基盤とした多分野融合研究によるアルテミシニン耐性機構の解明 |
2020 | 2022 | 二次 | 住友 倫子 | 国立大学法人 徳島大学 | 教授 | インフルエンザウイルス感染に合併する細菌性肺炎の病態形成機構の解明と新規感染制御法の開発 |
2020 | 2022 | 二次 | 高松 由基 | 国立大学法人 長崎大学 | 准教授 | 細胞生物学的アプローチで高病原性ウイルスの細胞内動態を可視化する研究開発 |
2020 | 2022 | 二次 | 恒松 雄太 | 国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学 | 准教授 | 複雑性創出型化学/生物ハイブリッド合成に基づく赤痢アメーバ治療薬創製 |
2020 | 2022 | 二次 | 寺 正行 | 国立大学法人 東京農工大学 | 准教授 | グアニン四重鎖構造誘起による(+)ssRNAウイルス阻害剤の探索研究 |
2020 | 2022 | 二次 | 西川 真子 | 国立大学法人 東京大学 | 助教 | COVID-19関連血栓症のAI血栓識別法の確立と病態解明 |
2020 | 2022 | 二次 | 山岸 誠 | 国立大学法人 東京大学 | 特任講師 | レトロウイルス病原性と持続感染の根源となる不均一な潜伏集団を生み出す宿主エピゲノム特性の解明と治療薬開発 |
(敬称略 50音順、所属機関・役職は事後評価実施時点の情報を記載)
4.事後評価委員
氏名 | 所属・役職 |
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祝迫 惠子 | 同志社大学 生命医科学部 医生命システム学科 教授 |
川名 敬 | 日本大学医学部 産婦人科系 産婦人科学分野 主任教授 |
倉根 一郎 | 国立感染症研究所 名誉所員 |
齋藤 昭彦 | 新潟大学 大学院 医歯学総合研究科 教授 |
笹川 千尋 〇 | 千葉大学 真菌医学研究センター センター長 |
鈴木 幸一 | 帝京大学 医療技術学部 臨床検査学科 教授 |
津本 浩平 | 東京大学 大学院工学系研究科 教授 |
森 康子 | 神戸大学 大学院医学研究科 教授 |
〇:委員長(五十音順、敬称略、令和5年8月7日現在)
5.評価項目
- 研究開発進捗状況
- 研究開発成果
- 実施体制
- 今後の見通し
- 事業で定める項目及び総合的に勘案すべき項目
6.総評
本研究事業では、世界各地で流行する新興・再興感染症の制御に向けて、わが国における感染症研究基盤の一層の強化・拡充を図るとともに、新興・再興感染症制御に資する基礎的研究を推進しています。「多分野融合研究領域」では、感染症学及び感染症学以外の分野を対象とする研究者の参画と分野間連携を促し、病原体を対象とした狭義の「感染症研究」にとどまらない、既存の概念を覆す可能性のある野心な研究や、新たな突破口を開く挑戦的な研究を推進しています。
令和4年度に事後評価を実施した25課題(3. 事後評価対象課題)について、いずれの研究課題も、我が国の研究医療に大きな貢献が期待される成果であると評価されました。
特に以下の点が高く評価されました。
- 麻疹ウイルスによる亜急性硬化性脳炎(SSPE) 等の中枢神経系感染及び発症機構解明に挑んだ。脳オルガノイドや小動物モデルを自ら確立するなど、多分野融合の利点を生かしての多階層研究により、パラミクソウイルス中枢神経感染の詳細な分子機構の解明に成功し、またSSPEに対する創薬評価系の確立という、臨床的意義が高く今後の治療薬開発へ進展期待される成果が得られた。
- HTLV-1及びHIV-1の感染者の臨床検体から得た感染細胞についてシングルセル解析を実施し、エピゲノムの異常が蓄積して成人T細胞白血病 (ATL) へ進展する発がん過程と遺伝子異常の重要性を解明した。また、非臨床POCを取得すると共に、再発・難治性 ATL に対して実施されていた第2相臨床試験の根拠強化を行った。
最終更新日 令和5年11月2日