疾患基礎研究課 新興・再興感染症研究基盤創生事業(海外拠点活用研究領域)における令和4年度課題評価結果について(事後評価)

令和4年度新興・再興感染症研究基盤創生事業(海外拠点活用研究領域)において、海外研究拠点を活用した新型コロナウイルス感染症(以下「COVID-19」という。)に関する研究の事後評価結果を公表します。詳細は各項目をご覧ください。

1.事後評価の趣旨

事後評価は、研究開発課題について研究開発の実施状況、研究開発成果等を明らかにし、今後の研究開発成果等の展開及び事業等の運営の改善に資することを目的として実施します。

2.事後評価委員会

開催日:令和4年7月6日

3.事後評価対象課題

令和4年度 事後評価対象課題(令和2年度開始、令和3年度終了:4課題)

4.事後評価委員

岩田 敏(国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院 感染症部長)
倉根 一郎(国立感染症研究所 名誉所員)
笹川 千尋(千葉大学 真菌医学研究センター長・特任教授)委員長
舘田 一博(東邦大学 医学部教授)
多屋 馨子(神奈川県衛生研究所長)
俵木 保典(第一三共株式会社サステナビリティ推進部 環境経営・グローバルヘルスグループ)
横田 恭子(東京工科大学医療保健学部 臨床検査学科教授) (五十音順、敬称略、令和4年7月6日現在)

5.評価項目

  • 研究開発達成状況
  • 研究開発成果
  • 実施体制
  • 今後の見通し
  • 総合評価

6.総評

本研究領域は、令和2年度に新規公募で新興・再興感染症研究基盤創生事業(海外拠点研究領域)で整備した海外研究拠点において、海外に活動拠点を持たない国内の大学や研究機関に所属する研究者にオープン利用により受け入れ、研究機会の提供を行う趣旨で、令和2年度に新規公募によりCOVID-19に特化した研究が開始されました。
公募趣旨のとおり、海外研究拠点において得られる感染症患者検体や臨床データ、各種情報等を活用して、海外拠点との間で、リソースや解析手法の共有化による相乗効果が得られました。
また、研究活動と併せて、今後、グローバルな研究フィールドにおける感染症研究で活躍し得る我が国の人材を育成しました。
事後評価対象課題の4課題はすべて、計画どおりに進捗したと評価されました。

本研究領域の研究開発課題を「アジア地域の海外研究拠点を活用したCOVID-19に関する研究開発課題」と「アフリカ地域の海外研究拠点を活用したCOVID-19に関する研究開発課題」に分けて、事後評価における顕著な成果を記載します。

(1)アジア地域の海外研究拠点を活用したCOVID-19に関する研究開発課題
インドシナ半島におけるCOVID-19対策のために、タイ、ベトナム、ミャンマー及び日本において、ウイルスゲノム解析、安全なウイルス抗原の開発、感染防御や重症化に関わる抗体の測定法構築、ウイルスの性状解析法の開発及びCOVID-19に対する血清疫学を実施した。

ベトナム拠点で収集したCOVID-19患者検体及び臨床情報を用いて免疫学的及び遺伝学的解析を実施した。ハイリスク患者選別のため新型コロナウイルス(以下「SARS-CoV-2」という。)特異的抗体情報、HLA多型情報、TCR/BCRレパトア情報及びRNA-Seq情報から免疫動態を明らかにした。COVID-19患者ウイルス抗原特異的免疫応答の網羅的評価法の開発を実施した。

ベトナム拠点で得た血液検体の解析から、感冒コロナウイルス感染で誘導される交差反応性T細胞がCOVID-19の病態に大きく関与することを見出した。さらに、ベトナム在住民はSARS-CoV-2交差反応性免疫細胞を持っており、この活性化がCOVID-19での低重症化率及び低死亡率に寄与することが示唆された。

(2)アフリカ地域の海外研究拠点を活用したCOVID-19に関する研究開発課題  
COVID-19の検出系を導入し、フランスからザンビアへの帰国者がSARS-CoV-2 に感染していることが判明し、ザンビアにおける初症例を報告した。アフリカにおける伝播様式の解明やCOVID-19診断法の開発を行い、野生動物が保有するコロナウイルス遺伝子の検出・ゲノム解析による知見、COVID-19に対する予防法に資する基礎的知見を提供することにより、アフリカのCOVID-19対策に貢献した。また、研究に参画した日本及びザンビアの若手研究者の育成に貢献した。

最終更新日 令和5年11月13日