国際事業課 HFSP研究グラント申請の手引き

研究グラント概要

国際協同研究チームへの研究費の助成

異なる専門知識を組み合わせた革新的アプローチによって、単一の研究室では解明することのできなかった基礎生物学上の問題に取り組むことを目指す科学者の国際共同研究に対して助成されます。

特に、生物科学の問題に焦点を当て、異なる研究分野(例えば化学、物理学、コンピュータ ーサイエンス、工学など)の研究者を組み合わせた新たな共同研究に重点を置きます。

新たな、価値あるアイデアや革新的なアプローチを促進するため、予備的なデータは必ずしも応募に必要ではありません。

対象 助成期間 助成金額
2ヶ国以上の研究者、原則として1ヶ国1名、合計2~4名からなる国際共同研究チームを対象とし ます。ただし、研究代表者は HFSPの加盟国の研究者に限られます。 3年 900千ドル(2名チーム)~1,500千ドル(4名チーム)
(3年間最大)
 

プログラムグラント Program Grants

独立した研究者のチームに与えられ、研究者のキャリア段階は問いません。
研究者のチームは共同作業を通じて新しい研究分野を開発することが望まれます。
若手の独立した研究者の参加を奨励しています。
 

若手研究者グラント Young Investigator Grants

メンバー全員が独立した研究室を与えられて5年以内の研究者(准教授、講師、助教またはそれに同等の研究者:ポスドクはメンバーとなることはできません)、かつ博士号取得後10年以内の研究者から成るチームに与えられます。

審査基準

Innovative

  • 既成概念を覆すハイリスクな基礎研究
  • 申請者の現在の研究の延長線上にない課題
  • 予備データや出口戦略は不要

Interdisciplinary

  • Innovative実現のための新しい方法論の要求
  • 新しい方法論には異なる領域の融合知が必要

International できれば Intercontinental

  • Interdisciplinary実現のための研究メンバー構成

<認められない例>
(現在/過去)の共同研究者、同じ分野、同じ所属、同じ国

審査の流れ

1月上旬 研究グラント申請書ダウンロード開始(オンライン申請:1月中旬~)

  • 12月中旬にガイドラインが公開され、提出締切り日などが発表されます。
    応募の前に必ず確認してください。
  • Information and Guidelines
 
  • 申請代表者は必ず、HFSPのエクストラネットで登録を行います。
    登録が完了するとパスワードが発行され、オンライン申請書とオンライン申請に関する詳細な説明にアクセスできるようになります。
  • 3月中旬までに応募のための参照番号を取得する必要があります。

3月下旬 研究グラント公募(1次審査:Letter of intent)締切

  1. 提出されたLetter of intentは、事務局に所属する2名の科学部長及び研究グラント審査委員長等によるプログラム目的への整合性の審査が行われます。
  2. 各課題2名の研究グラント審査委員会(Review Committee:RC)メンバーによるメール・レビューが行われます。
  3. RCメンバーの審査結果に基づき、研究グラント審査委員長や過去の研究グラント審査委員から構成されるグラント選定委員会(Selection Committee:SC)が1次審査を行い、2次審査へ進む課題を決定(通常、Letter of intentを提出した応募者の12%がFull Applicationの提出に進みます。

※Review CommitteeとSelection Committeeのメンバーは公開されています。

7月初頭 1次審査の結果通知(Full Applicationの提出依頼)

Full Applicationの作成要領が公開されています。
作成要領は毎年更新されますのでご注意ください。

9月中旬 Full Application 提出締切

  1. 提出されたFull Applicationは、各課題2名のRCメンバーと、最低3名の外部専門家によるメール・レビューが行われます。
  2. Review Committeeを開催し、議論を経て受賞候補課題が決定されます(通常、Full Applicationのうち、30~35%が受賞候補課題になります。)

翌年3月下旬 受賞者の発表

受賞候補課題は、科学者会議、評議員会による承認を得て発表されます。

助成内容

年間助成額

年間の助成額は最大50万ドルが支給されます。

受給内容

  • 2人のチーム=30万ドル、3人のチーム=40万ドル、4人以上のチーム=50万ドル(チーム全体での年間支給額。支給期間は3年間)。
  • 同じ国に所在する2人以上のメンバーは、支給額の算定上は1人と見なされます。
    ただし、国内で学際的な共同研究を実施するために、これらのメンバーの参加が不可欠である場合は、1.5人と見な されます(現在、2.5人のチームには35万ドル、3.5人のチームには45万ドルが支給されています)。
  • 2人のメンバーからなるチームで、そのうちの1人が営利機関に所属している場合、支給総額は15万ドルに減額されます。
    それ以外の場合は、営利機関に所属しているメンバーは、支給額の算定上はメンバーの数に含まれません。

対象となる費用

①設備費
設備の購入は、提案されている新しい共同研究を実施するために必要不可欠なものでなければなりません。
その時点で、国内で実施されているプログラムを補うために、設備を購入することは認められません。
参加研究機関は、その時点で実施されている研究を遂行するために必要な設備をすでに保有していると見なされます。
HFSPグラントの資金は研究機関ではなく、国際共同研究チームのメンバー個人に対して支給されます。
したがって、HFSP研究グラントの支援で購入された設備は、そのメンバーが別機関に移る際は、そのメンバーと共に、新しい機関に移ることになります。
②資材費および消耗品費
試薬、実験動物、および消耗品の購入費用。
共同研究を実施するために必要なソフトウェアの費用も計上できます。
一般的なオフィス用ソフトウェアの費用については、「⑦その他の費用」に含めることが可能です(上限は 10%)。
③サービス費用
コンサルティングサービスおよびコンピュータサービスの費用。
レンタル料金を含む。
④給与
グラントの資金から、申請代表者または共同申請者に対する給与扶助(「サマーサラリー」を含む)や、その他の直接的な報酬を支出することはできません。
研究助手(ポスドク研究者、大学院生、技術者など)の給与は計上できますが、研究と直接関係のない職員(秘書やラボ・マネージャーなど)の給与は計上できません。
給与額は当該研究機関の給与体系に準ずるものとします。
この助成は、専門教育を受けた人材による研究活動の支援を目的としており、教育研修プログラムではありません。
したがって、学生の授業料は、通常対象となる費用とは見なされません。
⑤コミュニケーション費用
  • 会合(チームメンバーの合同会合、科学会議への参加費)
  • 出版(研究成果の出版に伴う費用)
  • 助成期間の3年目にHFSPが開催する受給者会合には、すべてのチームメンバーが参加することが望まれます。
    この会合に出席するための旅費および宿泊費には、グラントの資金を充当してください。
⑥旅費および日当
各チームメンバーと研究室のスタッフが対象となります(国内および外国への旅費と日当。日当は年間3カ月を上限とする)。
⑦その他の費用
各研究機関はグラントの資金のうち直接費の10%を上限とする額を、間接費に充当することができます。
間接費は、支給された資金から支出しなければなりません。
HFSPOが間接費(諸経費)の支払いのために、さらに資金を提供することはありません。

対象とならない支出

①研究者の給与
研究代表者または共同研究者個人に対する報酬を、(たとえ一部でも)給与またはコンサルタント料として、HFSPグラントから支出することは認められません。
②間接費(諸経費)
各研究機関がグラントの資金のうち、直接費の10%を超える額を、間接費に充当することは認められません。
間接費は、支給された資金から支出しなければなりません。
HFSPOが間接費(諸経費)の支払いのために、さらに資金を提供することはありません。
③授業料
学生の授業料への支出は認められません。

よくある質問(FAQs)

Q.HFSP が考える「学際性」とは何ですか

A.HFSPでは、生物学者が他分野(化学、物理学、数学、先端生物情報学、コンピュータサ イエンス、ナノサイエンス、工学など)の科学者と共同で研究に取り組むプロジェクトを「学際性がある」と見なしています。
しかし、学際性の概念は急速に進化していることに注意してください。
2年前に重要なブレークスルーをもたらした画期的な組み合わせも、すでに一般的 な慣行として、その分野に定着している場合は、もはや高い評価を得ることはできません。
構造生物学と機能解析の組み合わせ、共焦点画像の発生生物学や細胞生物学への応用などはその良い例です。
以前は共焦点顕微鏡を設計・実装し、画像を処理するためには、その分野の専門家と協力することが不可欠でした。
しかし、現在はそうしたスキルの多くを手軽に(通常は商用サービスの形で)利用できるようになっています。
特に神経生物学や免疫学の領域には、すでに生物情報学の「ルーチン」が取り込まれるようになっており、いずれは演算にも最先端の科学が用いられるようになるでしょう。
つまり、「既製」のツールを利用するだけでは、審査委員会がそのプロジェクトを真に学際的なものと見なす根拠にはならないのです。

Q.「国内の学際性」とは何ですか。

A.国内で学際的な協力関係を構築していると見なされるためには、まったく異なる分野の研究者を集めて、これまでにないプロジェクトを提案する必要があります。
カエルのWntシグナルに取り組んでいる研究室が、ネズミ、フライ、細胞株などのWntシグナルに取り組んでいる近郊の研究室と連携するプロジェクトは、学際的とは見なされません。
これらのグルー プがプロジェクトに参加することはできますが、支給額の算定上は1人と見なされます。
生物学コンポーネントの一環として、両方のシステムを使用するという場合は、ポスドク研究員を1人雇って、各研究室のメンバーが、システムの使い方を教えるのがよいでしょう。
これまでの経験からいって、事実上同じジャーナルに研究成果を発表しているチームの研究を、審査委員会が「学際的な共同研究」と見なす可能性はほとんどありません。
国内で学際的な共同研究 を実現していると認められ、1.5人分の助成を受けるためには、これまでにない共同研究プロジェクトを提案する必要があります。
HFSPは学際的な研究を奨励していますが、その時点で実施されている共同研究は支援の対象とはなりません。
いずれにしても、他国の研究者をチー ムに含めることは必須です。

Q.申請が不適格と判断される理由にはどのようなものがありますか。

A.主な不採択理由は次の通りです。

  • メンバーの専門分野が非常に似通っている。
  • 全員が伝統的な生命科学分野の研究者である。
  • 医薬品開発やスクリーニングを主眼としている。
    基礎生物学の問題を解明することではなく、臨床研究に重点が置かれている。
  • 応用研究(食品科学、畜産学、林学など)を目的としている。
    あるいは、生態系に関する漠然とした問題(公害など)を研究テーマとしている。
  • トランスクリプトーム、プロテオーム等(「-omics」というプロジェクト)で、技術的な問題や分析の難易度がほとんど考慮されていない。
  • その時点で実施されている共同研究を引き継ぐものであることが明らかである。
  • 基礎生物学研究にとっての意義がほとんどない。

Q.その他には、どのような理由がありますか。

A.申請のレベルは高く、他の助成プログラムであれば、必ず支援を得ることができるような優れたものが多数ありました。
選定委員会の厳しい審査を通過したものは特にそうです。
しかし、HFSPは革新的で学際的な研究を支援することを使命としているため、多くのプロジェクトが不採択となりました。
主な理由は次の通りです。
i.)プロジェクトの内容が、その時点で実施されている研究の延長線上にあり、多くの場合、世界中の研究所で用いられているような アプローチを採用している(独創的でない)
ii.)メンバーの専門分野が似通っており(全員が神経生物学者、構造生物学者、発生生物学者など)、分野の組み合わせに新規性がない。
したがって、研究グラントの条件である学際性を満たしていない。

Q.研究チームを編成する際は、どのような点に留意するべきですか(研究者の「後付け」回避など)。

A.審査では、有効な共同研究体制が組まれているかどうかが特に重視されるため、出来る限り強力なチームを作り、メンバーの多様な専門能力を最大限に活用するようにしてください。
基本的な応募要件(特に革新性、学際性、国際性)を満たしている場合は、科学的観点から見たプロジェクトの質が、唯一の判断材料となります。
プロジェクトを実施するために必要不可欠である場合を除いて、i. 居住地、ii. 専門分野、iii.(本人または所属機関の)知名度を理由 に、パートナーを加えることは避けるべきです。
「後付け(add-on)」は容易に見抜かれることに留意してください(「・・・4人目のパートナーはバイオコンピューティングの専門家で、その他のグループの成果を分析する役割を果たします」と記載されているが、具体的な手法が記載されていない。大陸間の協力を実現する目的以外に、そのパートナーが参加する理由がないなど)。
たとえグラントを獲得したとしても、後付けされたパートナーをチームに統合することは難しく、研究代表者はプロジェクトの推進に苦労することになるでしょう(チームの一員であるという意識がない。パートナーが著名な研究者である場合は、本人が多忙で、ポスドクに任せきりになるなど)。
国内で学際的な共同研究を実施するプロジェクトの場合は、すべてのパートナーが学際チームに分析サンプルを提供するだけでなく、実質的にプロジェクトに貢献していることが必要です。

※その他詳細なFAQsは以下のページをご確認ください。

最終更新日 令和4年2月28日