国際事業課 HFSPフェローシップ受賞者からのメッセージ(2015年度受賞 寺坂 尚紘さん)

HFSPフェローシップ受賞者からのメッセージ

HFSPフェローシップ受賞者から、これから応募を検討している若手研究者の方に向けてメッセージをいただいています。英語での申請書作成や、ホスト研究者とのコミュニケーションについて工夫した点など、是非参考にしてください。

申請内容に馴染みのない方から客観的なアドバイスをもらうことが非常に大切

受賞者年度 2015年度
受賞者氏名 寺坂 尚紘
受賞研究テーマ Site-specific introduction of N6-methyladenosine using engineered snoRNP by directed evolution
留学前所属 東京大学大学院理学系研究科化学専攻菅研究室(日本)
留学先所属 ETH Zurich, Donald Hilvert Laboratory(スイス)
留学期間 2015年度~2017年度
写真1枚目

Q1.HFSPに応募した理由

博士課程時に所属していた日本の研究室では、外国人の学生・ポスドクの方々が多かったので、ポスドクをするのなら海外に行こうと博士課程時に漠然と考えていました。そのような時に、毎年ドイツで開かれるリンダウノーベル受賞者会議に出席してHFSPの名前を初めて知りました。当時私は博士課程2年生で日本学術振興会から派遣されていたのですが、そこで各国のHFSP Postdoctoral fellowship受賞者との会食がありました。会食では様々な国の方々が口を揃えてHFSPのfellowshipはとても優れたプログラムだと言っており、自分も海外でポスドクをする時には応募してみようと思いました。最終的に海外に行くことを決定したのは、行きたい研究室が海外にあったからという理由です。HFSPでは分野を変えることが推奨されていますが、これは自分の見識を広げるためにとても良いことだと思います。異なる分野に飛び込むことは自分だけではなく、所属先の研究室にとっても新しい知識を取り入れられるので、双方にメリットがあります。

Q2.HFSPのメリット

HFSPは受給期間が3年あり、他の多くの制度と比べて期間が長いことが特長です。また現地での生活費に加えて研究費や着任費用、そして家族手当てもあり、サポートが非常に手厚いです。日本の多くの助成制度では日本円で助成金が支払われますが、HFSPでは各国の物価に合わせ、現地通貨で助成金が支払われるので為替の動きを心配する必要がないこともメリットの一つです。私の場合、派遣当初にスイスフランが高騰していたので、現地通貨で給料が支払われたのは非常に助かりました。HFSPの知名度は日本では比較的低いですが、海外では非常に有名であり、国際学会で出会ったほとんどの方々はHFSPを知っていました。

年に一度開かれるHFSP受賞者会合では、ポスドクだけではなく、HFSPグラントを獲得されているPIの先生方も様々な分野から集まるので、科学的にも人脈的にも非常に有益でした。

Q3.申請までの準備

受け入れ先については、自分がこれから研究したい分野に合致する研究室をいくつか選び、当時の指導教官や先輩と相談しつつ連絡する順番を決めました。私の場合は幸運にも第一希望の研究室に推薦書を送り、Skypeで面接をしただけで受け入れが決定したので、あまり時間はかかりませんでした。ただほとんどの場合、現地へ面接に行かなければならないので、受け入れ先は早めに探し始めることが大切です。申請内容についてですが、HFSPのホームページにはArt of Grantsmanshipという申請書作成のガイドラインが載っているので、それを意識して内容を練りました。私の博士課程在学時の研究室には英語を母国語とする先輩や同僚がいたので、彼らからの客観的なアドバイスを頂き、英語も添削してもらいました。申請内容に馴染みのない方から客観的なアドバイスをもらうことが非常に大切だと実感しました。

Q4.海外の研究経験で得られたこと

留学の写真 
留学先研究室の集合写真

私が留学したスイスはヨーロッパの中心部に位置することもあり様々な国から学生やポスドクが来ていました。そのような国際的な環境で研究を行うと、科学に対する考え方や文化の違いを肌で感じられるので、自分の視野を広げる良い機会になりました。ETHでは学内の講演会だけでなく、チューリッヒ大学や企業と連携したセミナーも頻繁に開かれていたので、幅広い分野に触れる機会が頻繁にありました。またセミナー後には必ずアペロ(軽食とビールやワイン)があったので、リラックスした雰囲気で交流ができることも日本には無い点だと思います。研究に関しては、コアファシリティが充実しており、研究室間での機械や試薬の貸し借りが頻繁に行われるので、直ぐに新しい実験に取り組むことができました。一方で試薬が注文してから届くまで早くて一週間ほどかかったり、機械のほとんどが非常に古かったりと、苦労する点も多くありました。

Q5.今後のHFSPへの応募者に向けたメッセージ

写真4枚目
   研究室のスキー旅行での写真

HFSPは生命科学研究に対する助成金なので、それ以外の分野の研究者には馴染みが薄いと思います。しかし少しでも生物に関わる研究であれば申請可能なので、是非とも様々な分野の方に応募していただきたいと思います。申請書は英語ですが、日ごろから英語で情報収集をして論文執筆をしている研究者の方々には問題ないと思いますし、仮に落ちてしまったとしても良い経験になります。海外でポスドクをすると国際的なネットワークを構築できることはもちろんですが、同じ日本人の方々とも国内で出会う以上に仲良くなれると思います。私は現在日本で研究職についていますが、ポスドク時代に知り合った方々と共同研究をやろうという話がいくつもあります。

ポスドクを考えている方は、国内の研究室にとらわれずに海外のラボにも目を向けて、ためらわずにまずは行動することが一番だと思います。

最終更新日 平成30年8月22日