医薬品研究開発課 創薬ガイドブック がんQ&Aナレッジ集
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① 創薬標的分子の探索・検証、バイオマーカー、スクリーニング
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Q
創薬コンセプトが妥当なことを示すためには?>全モダリティ共通の回答
A標的分子
need to have
need to have
標的分子をノックダウン/ノックアウトにより阻害する
①様々ながん細胞でノックダウンし、増殖抑制を解析することで、依存度の高いがん(適用がん種)を見出せる。
②有効ながん種をスクリーニングした後、適用がん細胞での発現・活性化状態を調べつつ、阻害剤を添加してin vitro活性を確認するのが良い。
③上記に加え、正常細胞に標的遺伝子を導入し過剰発現させることで、がん化形質(足場非依存的増殖能)を獲得することが証明されれば、より強固な標的検証にもなる。
④siRNAだけでなく、コンディショナルなノックダウンや、CRISPRの系を用いることもオプションの一つである。
標的分子の機能を有効性と安全性の両面から解明する
①安全性や副作用による障害の程度を推測するために、正常組織・細胞での機能と阻害時の作用の確認をしておくことが望ましい。がん細胞においては標的分子の異常な機能亢進が主にがん化に寄与していると考えられるが、正常細胞においては標的分子の機能を代償する経路が存在することが確認できれば、標的妥当性の補強データになる。
②ノックアウトマウスを利用可能な場合は、そのコンストラクトによってphenotypeが大きく異なるため、可能な限り複数系統のノックアウトマウスの結果で判断する(成体あるいは対象臓器でのコンディショナルなノックアウトマウスが有用)。
③siRNA、shRNAを使用する場合にはオフターゲット効果があるので必ず2つ以上で実施することを推奨する。
④類縁タンパク質が複数存在している場合は、生体内での重要な役割分担があることが推察されるため、それらの機能解明が望ましい。それにより正常細胞で長期の標的分子の機能抑制が起きた際に、クリティカルとなる問題が本当に無いのかを推察することができ、安全性を推定する根拠になる。また、マウスとヒトでの機能の違いも考慮すべき事項である。
need to have
標的妥当性を説明できるようにする
①標的分子の恒常的な活性化(リン酸化など)につながる遺伝子異常等を同定し、活性化に依存して生存・増殖しているがん種を絞り込むことができれば有望なシーズと判断できる。
②標的分子に対する阻害剤に感受性の高いがん種を見出すことが有用である。どのがん種でもそれなりに有効であることを示すより、どのがん細胞なら良く効くのか、対象セグメントを絞り込むためのバイオマーカーを含めて示す方が望ましい。 (以下、標的分子ががん原性を持つ場合) ③対象となるがん種の臨床検体における標的分子の発現量と臨床予後との相関及び、がん細胞培養時(平面、3次元)における標的分子発現量と薬剤感受性の相関が存在するとなお良い。
④正常細胞への標的分子の遺伝子導入、あるいは活性化した際に、がん化形質(足場非依存性増殖能)を獲得することを確認できているとさらに良い。
薬効
need to have
様々ながん細胞を用いて標的分子の発現量や活性化(リン酸化など)を解析する
①臨床検体の解析から適応がん種を選定し、細胞株で検証する。
②標的妥当性と閾値設定の観点で、正常細胞も追加した方が良い。
③平面培養した細胞によるデータだけでなく、3次元培養もしくは組織検体を用いた解析を実施するのが理想的である。担がん動物でのがん組織への阻害剤効果を検討出来ればなお良い。
④解析する細胞数を増やすとともに、オミックスも並行して解析することが望ましい。
⑤臨床がんでの標的分子の発現量とステージや予後との関連性解析は重要である。
⑥DepMapなど既にある様々なデータベースも精査する。
⑦耐性株の解析、併用薬での効果等も検証することで治療薬開発につながるかどうかの見通しを立てやすくなる。nice to have
適用がん種を見極めるために標的分子の阻害活性を確認する
①ただし、選択性が高く、活性の高い(セルフリーや細胞系のin vitroであれば、IC50などの指標でpM、nMオーダー)阻害剤を獲得後での検討事項となる。
②in vitroとin vivoでの薬効に十分な相関がみられることを確認することも大事である。
③阻害剤での検証はオフターゲット作用も加わるため、ミスリードしないためにも標的ノックダウンを併せて実施することを推奨する。
④樹立がん細胞株と実際の臨床がん細胞は大きく性質が異なるため、遺伝子背景や既知の性質を熟慮し適切な細胞株を利用することが重要である。臨床がん細胞から作製した各種がんオルガノイドに阻害剤で処理し感受性のあるがん種を見つける方法も臨床への橋渡しを考えると有効な方法になる。
バイオマーカー
nice to have
標的分子依存度の高いがん細胞に共通してみられる遺伝子変異、遺伝子発現、あるいは翻訳後修飾(リン酸化など)があれば感受性マーカーとして利用できる可能性がある
①標的分子の発現量が高い細胞とノックダウンした細胞でのマルチオミクス解析により変動因子を探索する。メカニズムベースで変動が見られそうな分子から当たりをつけるやり方と平行して進めるのが良い。
②まずはin vitroで当たりを付けるが、患者サンプルが入手可能であれば、並行して探索するのも良い。患者サンプルについては薬剤治療後、耐性化したものが入手可能であれば、検討価値が高い。多様な臨床試料を用いた解析は臨床マーカーの候補創出に必須である。
③阻害剤に対する高感受性株を用いて耐性株を樹立し比較・解析する手法も考えられる。
nice to have
層別化因子やPDマーカー(pharmacodynamics marker)に関する情報を収集する
①標的分子が過剰発現しているがん種と診断するための適切な閾値設定と、過剰発現がんの発症頻度及びその臨床予後に関する情報があると良い。
②標的分子シグナルを伝達する下流エフェクター因子の中で細胞死誘導など薬効に関わる因子(PDマーカー)を明確にすることが望ましい。下流エフェクター因子のリン酸化や発現変動のような下流シグナルの遮断をモニターできるPDマーカーがあると、臨床試験での測定と早期のGo/NoGo判断につながりうるため、標的としての魅力が増す。 -
Q
先行品や他のモダリティの薬との優位性を示すためには?>全モダリティ共通の回答
A優位性
nice to have
市場性及び競合優位性・差別化データを示す
①シーズはFirst in Class(FIC)やBest in Class(BIC)であることが好ましい。
②BICの場合は既存薬、FICの場合は市場における標準療法との差別化の観点でも優れた標的であることをアピールする。例えば、既存薬の作用点より下流のシグナルに着目してユニークな抗がん剤特性を示すことを明確に示せると魅力が一段と向上する(例:上流の分子の阻害剤に対する耐性機構において下流の活性化変異したエフェクターを創薬標的とするなどこれまでと違う戦略の創薬の提案は魅力がある)。
③競争相手が限定的であり治療満足度の低い領域のシーズであり、市場性の観点でも魅力的であることや、戦略的に相談企業の重点方針に合致していることも重要なポイントとなる。
④既存薬と比較して優れた薬効あるいは安全性を示すデータがあることが重要である。異なる作用機序の治療(抗がん剤、免疫チェックポイント阻害剤、放射線療法など)との併用でも良いので、がんが消失、治癒できる可能性を示せれば有望である。
⑤in vivoで、腫瘍の増殖抑制効果に加えて、治療的投与による腫瘍縮小効果を確認できていることが望ましい。また、培養細胞株のゼノグラフト(xenograft)試験はヒト腫瘍の性状を完全に反映したものではなく、抗がん剤の臨床有効性を推定することは困難である点に留意すべきである。やはり難治性がんのPDXモデルでこれまでの抗がん剤と差別化ができる薬効を示すことが重要である。 -
Q
先行品や他のモダリティの薬との優位性を示すためには?>低分子に対する回答
A優位性
nice to have
薬効の高い化合物を取得する、あるいは取得できる可能性を示す
①in vitroでのがん細胞パネルでの感受性評価において低濃度域(サブμMからnM)で作用する強力な阻害活性を有することが重要である。また、標的とする細胞選択的な殺細胞効果を示すことも魅力につながる。
②標的分子への直接作用(キナーゼ阻害など)、下流因子の抑制作用(シグナル)、細胞増殖抑制、in vivo PD評価、in vivo有効濃度について複数の化合物で相関性があると望ましい。
③化合物の選択性を担保するためにカウンターアッセイを実施し、他の分子には作用していない(あるいは、最小限のオフターゲットである)ことを確認することが求められる。複数の分子について確認するパネル試験(キナーゼパネルなど)は委託業者もある。
④in vivo薬効データを示す場合、PK-PDを確認し、該当化合物のin vitroプロファイルからin vivoで有効性を示す濃度域で持続した十分な曝露があるのか確認する。
②非臨床試験(薬効薬理、安全性、代謝・薬物動態等)
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Q
先行品や他のモダリティの薬に対する優位性を示すためには?>全モダリティ共通の回答
A標的疾患
nice to have
アンメットメディカルニーズを踏まえ、有効性が期待できるがん種のプロファイリングを示す
①どのようながん種にも効くことを示すよりは、アンメットメディカルニーズの高い特定のがん種において、よく解析されたMoAによって強い薬効を示す方が企業にとって魅力的である。
②がん細胞パネルを用いた感受性評価と、その薬物が薬効を示すために必要となる標的分子の発現/活性との相関が示されていることが望ましい。
③(標的とするがん細胞が不死化細胞株に存在する場合)DepMapデータベース*などを用いて標的分子の発現量と効果の相関性を明らかにすることで効果規定因子であることが示されていると良い。薬効
need to have
臨床薬効が期待できる薬効及び安全性データを示す
①腫瘍の増殖抑制だけでなく、in vivoで腫瘍縮小効果まで確認する。有意な延命効果があることを示すことが重要である。
②薬効データ、特異性確認データは、用量依存性データとして取得しておく必要がある。 ③PK/PDデータがあり、実臨床で応用可能な投与スケジュールで有効性の持続が見られることが重要である。in vivoデータ
nice to have
静脈内投与での薬効データを示す
①対象疾患、患者数及びメディカルニーズの明示が重要である。その意味で、血管が非常に少なく、間質が多い臓器のため、薬剤が到達し難い極めて難治性が高い膵臓がん等において皮下投与に加え、できれば静脈内投与で腫瘍縮小あるいは明確な延命効果が認められれば興味を持つ企業も増える。予防投与や転移抑制ではなく、原発腫瘍の退縮が認められると、企業導出に繋がりやすくなる。
②細胞移植後、腫瘍塊 が生着し増殖を開始してから (目安として>200 mm3) 、投与開始した場合で明確な薬効が示せるかはポイントになる。
③一般的ながん細胞株を用いた担がんマウスで非常に強い薬効を示した化合物がヒトで全く薬効を示さなかった例は数多く存在する。がん組織由来のがん細胞と間質細胞が混ざっているがんオルガノイド、もしくはPDXモデルでの薬理試験のデータは通常のデータとは全く異なってくるので、ヒト臨床試験への外挿性を上げるためにも可能であればPDXモデルあるいは自然発症に近いモデルでの薬効試験の実施を考慮する。
④コストの観点で、治療実験での用法・用量も注目されるため、体内での安定性、臓器到達性などの課題克服が難しい場合には、DDSを活用することの検討も必要である。 -
Q
先行品や他のモダリティの薬に対する優位性を示すためには?>低分子に対する回答
Ain vivoデータ/POC
need to have
少なくとも複数のがん細胞株ゼノグラフトモデル(できればPDXモデル)を用いたin vivo検証により有望なデータを示す/明確なPOCを取る
①標的分子に対する作用により既存薬では見られない高い薬効、腫瘍縮小(消失)効果を示す。 ②有効性と安全性の乖離(10倍程度)が達成できそうなターゲットであること(オンターゲットで比較的シビアな毒性が薬効用量と乖離している)が重要である。
③がん細胞以外の微小環境への影響をコンセプトに含む場合は、マウス同所移植モデルや自然発症系モデルでの薬効評価を必要に応じ検討する。
④In vivoでのリーズナブルな有効性(薬効、動態(血中濃度)、忍容性データ)を示す。できれば化合物に加えてsiRNA等の手法でターゲット妥当性を証明する。
薬効
nice to have
in vitro細胞アッセイでは、患者への投与する薬剤量も見据えて100nM未満程度の薬効を達成する
①可能であればIC50<100 nM程度の活性は欲しい。臨床試験での進めやすさも考慮すると、副作用との乖離、耐性株への薬理活性の強さも担保できていればさらに良い。認可に向けて必要なのは、作用機序解析、担がん動物モデルでの有効性評価、安全性評価などである。
②上記データよりヒトでの有効性を考察し、単剤、併用のどちらで進める方が良いのかを検討できている。臨床試験でどのような患者さんにリクルートするのかが想像できるデータを非臨床で示しておく必要がある。 -
Q
先行品や他のモダリティの薬に対する優位性を示すためには?>核酸医薬に対する回答
A標的疾患
need to have
有効ながん種を特定する
①発現抑制による増殖阻害作用のがん種間の差異と特徴付け(遺伝子変異や発現量など)が実証出来ていることが望ましい。
②均一な形で集積性がみられる組織、がん種を特定して、ASOによる経時的なノックダウン効果、同時に薬効、血中濃度との相関などのデータが取得されていることが望ましい。
優位性
need to have
他モダリティに対する優位性を示す
新しいモダリティを利用する際には、有効性・安全性、あるいは、ヒトに投与できるASO(antisense oligo)の調製など多数の課題がある。その中でASOを企業導出する際には、下記の点がポイントになる。 ① in vivoで標的分子に対するASO投与により、強い(望ましくは特異的な効果のあるがん種と効果のないがん種が明確)腫瘍抑制作用を示すこと。
② 標的に対し、ASOを利用するのが最も妥当であることを示すこと(低分子化合物では狙えないundruggableな標的や、抗体では作用できない標的等)。 ・現状では、他モダリティ(抗体、低分子)と比較して優位性を示すことが難しいかも知れない。抗体ですら多大な人的・金銭的投資というリスクを取った企業は多くなかったことを顧みれば、抗体で実現したことと同様のブレイクスルーをもたらす可能性を企業に説明できるかがポイントになる。 ・ASO以外にも、共有結合型の化合物やRNAi治療薬などのアプローチも選択肢であり、ASOの必要性や優位性が示せるかどうかが重要なポイントである。
③標的遺伝子のノックダウンにより、in vitroでがん細胞増殖が抑制され、細胞死が誘導されることを示す。また、in vivoの抗腫瘍試験により高い腫瘍増殖抑制効果が認められることが大事である。薬物動態
nice to have
ASOの分布プロファイルを明らかにする(開発化合物とするのであれば実施することが望ましいが、本来は企業が実施するレベルと思われる)
①単回(ないし連投後)のASOの血中濃度推移と標的のノックダウンの経時変化並びに、最高血中濃度(Cmax)と血中濃度時間曲線下面積(AUC)のどちらが組織内濃度あるいはノックダウン強度に関係するのか考察するためのデータがあると良い。
②ASO、PROTACなどサイレンシング薬では標的タンパク質の半減
nice to have
標的臓器到達性・集積性の偏りを改善する
①他のモダリティと比較した場合、①血中安定性、②標的臓器への到達性・集積性、③オフターゲットイベントも含めた安全性が主な懸念事項(ハードル)になる。これらに加え、①~③の改善に用いる技術に関して、製造方法も含め、他社の先行特許が存在している場合には、実施許諾取得の観点で開発上のハードルの一つになる。
・ASOは体内分布として肝臓や腎臓に集積するという情報が一般的であり、それ以外の臓器を対象とした場合に臓器選択性、移行性を如何に改善できるかという技術的な解決策が明確でない。Drug delivery systems (DDS)の開発を並行して実施することが重要である。
・核酸の一般的毒性では安全マージンが確保しにくい。従って、核酸の毒性を抑えつつ、がん細胞退縮を導けるなら魅力的である。
・がん種によっては腫瘍内の血流量や血管の多さなどに相違があることによる薬剤到達に限界がある可能性が否定できないことを考慮すべきである。
②標的腫瘍への集積を高めるDDS技術を利用する場合には、標的腫瘍集積メカニズムの説得力のある科学的な説明が必要である。開発を進めるどのステップにおいても、デリバリーに関して問われる。メカニズムを科学的に推論、説明できないと副作用、安全性等を検討する際や申請資料に記載する際に苦しくなる。
③ASOの取り込み不均一性に起因して腫瘍増殖抑制効果が部分的である場合には、ヒト臨床試験でも大きな不確定要因となる。DDS利用も含め、均一化を目指し、腫瘍増殖抑制最大化を優先するべきである。ASOが取り込まれない細胞ポピュレーションに関しては、最終的にASO治療抵抗性/耐性につながるという懸念を持たれてしまう。 -
Q
安全性の高い薬を作るためには?>全モダリティ共通の回答
A安全性
nice to have
正常細胞での影響をあらゆる視点から見極める
①増殖能に加えて、可能であれば全トランスクリプトーム解析などを含めて影響のレベルを解析することが望ましい。
②ノックアウトマウスのphenotype解析は安全性予測・評価法のひとつであるが、胎生期に生じる表現型をも含み、作製方法によっても大きく変わるため、その結果だけをもって成人における正常組織への影響を予測することは困難である。
③標的分子が正常細胞で何も機能していないと考えるのは不自然であり、正常細胞に影響がないと言うよりも、どの様な影響があるかを知っておくことが重要である。
nice to have
薬効だけでなく安全性データまで示す(マウスを用いた動物モデルでの検証は必須)
①担がん動物モデルでの有効性、一般毒性のデータを収集する。実用化を視野に入れる段階では臨床で実施可能な投与方法・間隔であることが望ましく、PDXモデルでの薬効データはあればなお良い。
②初期の段階では、病態モデルでの薬効評価における体重減少,摂餌量変化を毒性の指標として利用できる。ある程度構造活性相関が見え、薬効が確認できた化合物で、4日間または7日間の毒性試験を検討する。毒性試験の内容で、毒性軽減に向けて、更なる誘導体展開を行う。
③血中動態は至適投与頻度、投与用量の選定に関わるので、早めに実施した方が良い。
nice to have
薬効と安全性の乖離を示すマージンを示す
①実際に臨床試験を開始するためにはどの程度の用量で有効性を示しそうか、また、最終的に薬効と安全性が乖離ができそうかということを示すデータが必要である。
②この部分は、製薬会社の得意とするところなので、薬効スペクトラムなどのデータも含め企業と相談していくと良い。 -
Q
安全性の高い薬を作るためには?>低分子に対する回答
A安全性
nice to have
薬効だけでなく安全性データまで示す(マウスを用いた動物モデルでの検証は必須)
①薬効評価において、物性が悪く臨床投与経路で試験が出来ない場合には異なる投与経路で薬効を確認しても良いが、安全性試験では臨床投与経路での実施が望まれる。
②心毒性が強い場合はプロジェクトの中止に関わるため、hERG(human ether-a-go-go related gene)も検討した方が良いが、薬効に必要な用量との差(Therapeutic window)も併せて検討できるよう、薬効に必要な用量も確定しておく必要がある。
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Q
安全性の高い薬を作るためには?>核酸医薬に対する回答
A安全性
nice to have
安全性・毒性の評価データを取得する
①オンターゲットの副作用評価を実施しておくことが望ましい。安全性試験に用いる動物種については、ASOの配列情報(種差)などを基に決定することになるが、ヒトと遺伝子配列が異なりASOで阻害できない場合は、正常細胞株パネルでオンターゲットの毒性標的臓器を予測することが考えられる。
②ASO配列情報の種差などを考慮の上、マウス等を用いた評価ができる場合には、オフターゲットイベントに基づく副作用の評価(特に主要臓器に対する副作用の検討)を実施する。
③その際、オフターゲット解析はマイクロアレイよりもRNAseqを実施することが望ましい。
用法・用量
nice to have
有効性だけでなく安全性を担保する
①用量/PK/分布/効果の間の相関性の解析とそこからの展開が困難なケースがあげられる。
②標的抑制効果の維持のために頻回投与が必要な可能性と投与回数増による肝及び腎に対する障害も懸念材料となることがある。
③実臨床化可能な投与方法と薬効の持続が得られるかがハードルとなる。 -
Q
治験をスムーズに進めるためには?>低分子に対する回答
A薬物動態/安全性
nice to have
所定の安全性試験、薬物動態試験、物理化学的試験を実施し、非臨床試験データを収集する(開発化合物として進める場合には、臨床移行前の企業研究として重要)
①化合物の水溶性に加えて血漿中での化合物の安定性を見ておくと良い。タンパク質結合率が高い場合には安定性が高めに出る場合があるので注意が必要である。
②薬物が十分曝露できて線形な領域はどこまでか、PKの持続はどのくらいで、1日何回投与するのが望ましいのか、併用療法なら相互にPKへ影響する可能性はないのか。それぞれの毒性プロファイルはどうなのか、最初の毒性変化は何でとらえ、それが併用時にどの様に変わるのか。などが明らかにならないと、許可(臨床移行)に向けた判断はできない。
③安全性は必須である。具体的には、動態評価(in vitro代謝安定性、CYPs阻害、酵素誘導、DDI(Drug Drug Interaction)、反応性代謝物検索、代謝物検索等)、安全性(hERG、光毒性、ラット・大動物毒性試験)、物性(透過性、溶解性、安定性)。
③構造最適化、DDS、製造
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Q
治験をスムーズに進めるためには??>全モダリティ共通の回答
ACMC
nice to have
開発品の製造スケールアップが可能であることが示せると有益である。
①工業的な大量製造法が確立できることがポイントである。
②大量合成可能であれば、推定で良いので製造コストを算出し、既存の薬剤と比較して優れていることを強調できると良い。 -
Q
治験をスムーズに進めるためには?>低分子に対する回答
ACMC
nice to have
臨床試験に入る前の非臨床試験、薬事・規制対応としてCMCの戦略を立てる
①CMCに関しては、化合物の物性次第(特に、溶解性/膜透過性に課題がある場合)だが、最初から戦略を策定しながら進める必要がある場合もあるため、専門家(製薬企業)に相談するのが望ましい。
②化合物の溶解性に関しては非晶質化や共結晶の作成などで改善の余地があるが、膜透過性が低い場合は改善は難しい。
③製剤化に耐えうる物性(安定性)が担保される必要があるが、その辺りは製薬企業と組んでからの話になる。構造最適化
nice to have
良いシード、良いリード化合物がある
①良い化合物創出のためにも最も有効なメカニズムを探求することが重要である。この点が企業が弱い点でもあるので、アカデミアでこそ実施すべき研究である。お互いの強みを生かすという意味では、リード化合物を磨く活動は企業にやってもらい、アカデミア研究者は、薬理作用の解析など化合物の魅力度を上げるためのバイオロジーの研究に特化することも選択肢である。
②開発品を取得できる可能性があると企業が判断するかどうかがポイントであり、構造やデータなど企業のメディシナルケミストが判断する材料を提供する。 例えば、結合活性向上に向けた誘導体展開のガイドとなる結合部位を同定するため、モデルではなくX線結晶構造解析、NMRやクライオ電顕などのデータを取得する。また、標的と低分子化合物のX-線共結晶解析やCryo-EMでの解析結果が有ると最適化に有用である。
③FEPなどの計算手法を使うことで比較的構造が近い化合物の親和性を予測できる。
④作用メカニズムの詳細検討を行う。候補化合物が分子認識(エンタルピー変化)を介した特異的結合であり、活性を強める可能性があること)により標的分子へ作用していることを示す。
⑤タンパク質ータンパク質の相互作用を標的にした阻害薬は活性向上が難しいのが業界の常識であるため、余程魅力あるターゲット(RAS並み)でないと企業にとっての魅力は限定的である。仮にPROTAC(Proteolysis Targeting Chimera)のような分解誘導化合物(degrader)として狙うにしても安全性確保のため高い特異性が必要である。
⑥同一標的分子の阻害剤がある場合、in vivoでの比較試験で優位性を有することを示す。
⑦企業に最後の作り込みを依頼する場合には、プロトタイプにおける誘導体展開のSAR及びDMPK、hERGなどのデータを示すこと、またin vivo薬効、先行品との差別化ポイントを示すことも役立つ。(精密合成展開(リード最適化)が必要な場合は、できるだけ早急に製薬企業と共同研究に入ることが望ましい)
⑧開発化合物取得のためには誘導体展開が必要であり、リード化合物の構造によっては誘導体展開が難しい場合がある。そのため骨格が明らかに異なる複数の化合物を見出しておくのが望ましい。
⑨薬効の高い化合物の最適化は製薬企業との共同研究で進めることができる。製薬企業の低分子化合物の合成展開力(新規化合物合成数、新たなケモタイプへの展開など)はアカデミアよりはるかに高いので、ここは無理にアカデミアで力を注ぐ必要はない。in vivoデータ収集において目指すプロファイルとしては良好なADMEプロファイル(経口吸収性、薬物相互作用等)や経口投与での有効性でなどがある。 -
Q
創薬コンセプトが妥当なことを示すためには?>核酸医薬に対する回答
-
Q
先行品や他のモダリティの薬との優位性を示すためには?>核酸医薬に対する回答
A製造コスト
nice to have
製造コストなど工業化の課題があることを知っておく
①製造コストがハードルである。mRNAワクチンの成功含め近年の核酸医薬の進歩を前にしても核酸医薬に力を掛ける企業は限られる。大きな市場性が狙えない限りは大きなハードルとなる。 ②内製化は難しいのでCMO/CDMOでの生産になるが、スケールによってはスロットが空いていない場合がある。
③投与量によっては、非臨床試験・臨床試験に必要な化合物の製造コストが低分子に比べて非常に高額となることから、少人数・短期間で評価できる臨床試験が望ましい。治療効果を確認するのに比較的長期間もしくは患者数が必要な臨床試験を実施するとなる場合、なかなか初期投資に踏み切れない。
④一方で、核酸医薬の製造受託を強化している企業は増えている。核酸医薬の可能性を多くの製薬企業が期待しており、国内外で製造受託を整える動きも拡がっている。 -
Q
企業導出を進めるために、企業がアカデミアに期待していることは?>核酸医薬に対する回答
ADDS
nice to have
DDSを必要としない投与での有効性を示すことが望ましいが、DDS利用もオプションとなる
①いまだ局所特異的なデリバリーを実現できている核酸医薬はほとんどなく、実現できれば高い有効性、安全性を両立した治療法の確立につながるが、DDS無しで実臨床可能な投与レジメンでの有効性が得られることが望ましい。リポソームなどPassive targetingによる腫瘍蓄積を狙う場合は、非臨床と臨床のギャップがある点は留意すべきである。
②薬効・動態・安全性・物性の兼合いになる。腫瘍集積性を狙ってのDDSや、肺がんへのアプローチとして経気管投与を行なわれたようなDDSもアプローチとして選択肢となる。薬効面以外にも肝毒・腎毒の回避のために全身系曝露を回避する局所向け投与経路も検討され得る。
③DDSが無くても有効性を示すシードを優先しており、未だ核酸医薬の分野は未成熟である。配列設計
need to have
薬剤最適化のノウハウを蓄積する
配列設計、人工核酸の導入部位、数など最適化に関与するパラメータが多く、ノウハウの蓄積が必要である。将来的には機械学習での配列設計が可能になるのではないか。
④研究計画
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Q
先行品や他のモダリティの薬との優位性を示すためには?>全モダリティ共通の回答
ATPP
need to have
患者ベネフィットを意識したTPPを作成する
①将来患者さんにとってベネフィットを与えることができる薬剤プロファイル(Target product profile:TPP)を設定することが先決である。それをもとに、どのような差別化・優位点を示すデータが必要かを検討し、具体的な試験計画に落とし込む。先行薬との直接比較試験のデータを収集できるとなお良い。暫定版でも良いので、考えを示すことがアカデミア、企業双方の気づきになる。
②先行薬によって満たされないニーズは何かを知り、想定する適応疾患での治療体系の中で、どのような位置づけの薬剤となるかをTPPを作成して整理する。
③先行薬の状況や標的分子のサイエンスも変化しうる(完治を目指せるようになるなど)ため、TPPは状況に応じて見直す必要がある。優位性
need to have
アンメットメディカルニーズを踏まえた研究を実施し、競合品に対して差別化する
①先行品の特徴を詳細に解析し改善点を見出した上で、明確な差別化ポイントを示すことが肝要である。
②競合品が既にある場合は、単に薬剤活性が高い(用量の低減)ということでは不十分で、薬効プロファイルの差別化を行わないと開発は困難である。
③将来患者にどのようなベネフィットが期待できる薬剤となるかをデータとして提示する。現在あるいは将来の治療体系の中でどのような位置づけの薬剤となるかがイメージできることが大事である。
need to have
圧倒的な競合優位性・差別化データを示す
①既存薬との差別化について勝ち目があるデータを示すことが大事である。圧倒的な切れ味で薬効が出ることが重要であり、head-to-head の比較試験は必須となる(開発中の先行品であれば開発中止になる場合もあるので、比較試験は必ずしも必須ではない)。
②安全性も含め、患者にとって他社先行品より高い価値を有する競合優位性を示す必要がある。 ③アカデミア創薬の場合は最終開発品まで至っていなくても、開発可能であることを示唆する説得力のあるデータを示すことにより企業との共同研究も可能になる。患者層別化
need to have
患者選択まで想定した計画を立案する
①患者リクルートが比較的容易であることが望ましい。臨床試験ではバリデーションレベルが高い手法が必要であるため、免疫組織化学(IHC)などのCRO等でも実施可能な簡便な方法という点も重要になる。
②そのメカニズムから最も効果を発揮する患者を選択できるバイオマーカー候補をアカデミア側(標的やメカニズムを提案する立場)から提示することが強く望まれる。適用拡大
nice to have
適用拡大の可能性がある場合は検討する
①希少がんに応用できる可能性が有る場合は、オーファンドラッグ指定による優先審査や高薬価の可能性があり、優先順位を上げると良い。
②適用拡大は化合物の承認後には必要だが、まずは最初の作業仮説が検証できるかどうかに絞ることが望ましい。
③将来の適応拡大の可能性を考えて、標的分子、作用機序から考えて対象がん種が広がる可能性がある場合には、対象がん種とアンメットメディカルニーズを調査しておくと良い。 -
Q
企業導出を進めるために、企業がアカデミアに期待していることは?>全モダリティ共通の回答
A企業導出
need to have
need to have
早い段階で企業との協業を行うことが、医薬品創出の近道である
①製薬企業との役割分担を考えて協業を行うことがより良い選択肢であり、できるだけ接点を増やせるように宣伝することも必要である。
②早期臨床試験に関しては、既存薬の適応拡大であれば、製造元企業の支援を受けて、アカデミア側で医師主導治験などを実施し候補品の価値を高めた後で導出を行うことも可能である。
③アカデミアと製薬会社の一番の違いは創薬経験である。特に、薬物動態や安全性試験のパッケージの考え方や各種レギュラトリー対応(当局対応)などは経験がないと難しい。
④臨床試験が小規模で行える疾患を選定し、主要学術誌に細胞・動物実験で著名な効果を示し、臨床試験を含めた実用化までのシナリオを提示していくことが、企業連携での主導権維持に大切である。
⑤創薬の実現化には、論文化を先送りにする、あるいは、あきらめるという割り切りも時には必要である。
⑥スタートアップの立ち上げに時間をとられるようであれば、最初から製薬企業と組んだ方が良い。創薬において重要なのは今苦しんでいる患者にできるだけ早く薬を届けることである。
創薬部分は製薬会社に任せ、アカデミアでは企業があまり力を入れていない基礎的な研究に専念するという考えもある
①協業のタイミングは重要。大学と企業のマッチングイベントもたくさんあるので研究成果を宣伝すると良い。コンタクトした企業に対し、ノンコンレベルでアップデートを知らせるなどの方法が有効である。
②意外性のあるモダリティの提案が可能であれば魅力的である。モダリティは海外からのアイデア導入・流入が多く、国内発の新規モダリティに関して聞くことは少ない。
need to have
がん治療では、「効果の強さ・切れ味」×「効果発現する患者の割合」(×「副作用軽減・件数削減、コンプライアンス改善」)を如何に最大化していくか?という視点を持つ
①企業への相談時には上記のうちどのポイントが改善されるポテンシャルがあるのか、ユニークなのかを主張できるデータを示すことが極めて大切になる。
②既存薬と比較し、臨床での差別化を期待できるだけのin vivoの直接比較データを取得する。
need to have
共同研究、導出それぞれに応じて求められるデータを収集しておく
①一般論としては、大学側が企業に何(お金・ヒト・設備・ノウハウなど)を求めるかによって変わってくる。共同研究レベルであれば独創的であり有効性、安全性の基礎データが有れば良い。導出になるとライセンス料、ロイヤルティの設定にもよるが、GMPやGLP、少なくとも信頼性基準に基づくデータ、例えば安全性を担保するデータ、類薬との比較データ、優越性・差別点を示すデータが必要である。
②いずれの場合も、先ず確かなin vitroデータが必要になる。バリデートされたin vivoモデルでの結果(その時の血中濃度測定は必須である。腫瘍内濃度、フリー体濃度の算出が望ましい)及び、簡易的な安全性データ(毒性で有効性が見られていないか)を示す。
③標的分子⇒vitro POM(下流シグナル変化)⇒vitro POC(がんならば、細胞増殖)⇒ vivo 層別化(recruitマーカー)⇒ vivo PD・POM(surrogateマーカー)⇒vivo POC(薬効)のストーリーをきちんと説明できることが必要である。
④導出の場合、デューデリジェンス時に企業側もコンセプトを確認するために候補化合物の効果を内部評価するため、ポジティブデータに加えネガティブデータも提示することが大事である。また、ポジティブデータの再現性を確認すること、ネガティブデータに関しては、その原因および対策が示されていることが肝要である。
need to have
企業ニーズ
need to have
ニーズは企業側の事情により様々であることを理解する
①製薬企業側のニーズは必ずしも固定しておらず、財務状況や事業戦略にも左右される(適応疾患や疾患領域をある程度限定していることが多い)。
②非常に早期のユニークな標的分子が同定された時点~臨床にある程度外挿可能なPOCが得られた時点~開発候補物質の目途がついている、など、ニーズとシーズのマッチングのタイミングは様々である。
アカデミアにしかできない研究によりデータを取得する
①薬効と言うよりは、ターゲット確実性を徹底的に証明するデータが最も重要。薬効はPDXモデルがあれば望ましいが、通常のゼノグラフト(xenograft)でも良いので企業に相談するのが良い。
②その標的が(論文のためではなく真に)科学者として自信をもって効くといえるデータを獲得すべきである。
③臨床におけるPOM~POCが見通せる非臨床試験成績、新しい考え方/ユニークな標的で、臨床での未解決課題を解決できることが見通せる成績を示すことが重視される。
④製薬企業がアカデミアに期待するところは、アカデミアでしかできない研究を徹底的に突き詰めることである。企業ができない、アクセスしにくい試料、技術を利活用して事業化を目指せるシーズ創出、ないしその技術自体に期待しており、アカデミアによるシーズ標的検証後は、企業が創薬研究を実施すべきである。
標的疾患の拡充
need to have
まずは開発候補がん種選定などがん領域に集中し、アンメットメディカルニーズを満たす治療効果が期待できる疾患を適切に選ぶべきである
①着目している標的が、がん細胞以外の病態に繋がる場合にはその疾患領域への応用は可能だが、抗腫瘍効果が期待できる成果が出ているのであれば、がん領域での開発を先行することを考える。
②がん領域は他疾患と比較して臨床試験の期間が短く、早期にヒトでの薬効試験結果が出る。
③抗がん剤であれば最小要求はtherapeutic index ≧ 1であるが、もし、抗がん剤以外を指向する場合には、安全性のマージンはより広くないと厳しい。 -
Q
企業導出を進めるために、企業がアカデミアに期待していることは?>核酸医薬に対する回答
A企業導出
need to have
導出先候補として核酸創薬に着手している企業にコンタクトする
①製造面でのナレッジが必要なので核酸医薬を製品化もしくは開発中の企業が候補となるが、企業の多くは核酸医薬に着手している。
②販売額が大きながん治療薬を有する企業は魅力ある共同研究先を探している。ASOによる標的分子抑制との併用効果を期待し高い評価をする可能性がある。
③ある程度、医薬品として開発が進み、薬効が十分にあるのであれば、核酸医薬に関して経験が無い企業でも興味を示す可能性があるが、大手製薬企業は技術的に突出したシーズでないと導入しないため、ベンチャー企業も含め相談するのが良い。
④DDSを活用する場合には、核酸医薬品のDDSに関する特許、製品を有する企業が導出候補先になる。 -
Q
併用薬としての開発を考えている場合に考慮すべきことは?>全モダリティ共通の回答
A併用
need to have
併用療法のストーリーを描く
①現在の抗がん剤開発はレジメンの開発であり、単剤ファーストライン以外は併用が前提になる。シーズが奏功しやすい変異などが明らかになれば自ずと併用薬も決まってくるので、メカニズムベースで併用意義を示すことが望ましい。
②がん種により効果がある、もしくは使用される薬剤が異なるため、がん種を拡大して検討した上で、併用薬の検討に移行した方が良い。PDXモデルを用いる場合は、既存薬耐性モデルで効果を示すかは検討事項の1つになる。
nice to have
併用薬を目指す開発は単剤と比較してハードルが高いため、専門家に相談しながら進めるく
①安全マージンの設定など併用薬に依存すると想定される場合にはTPPを定めることが難しいため、薬剤併用を必要としないパスウェイを解析し新たな創薬標的を同定することが実用化に近くなる。
②もし併用で進める場合には、併用での薬効評価の他に、安全性や薬物動態の考察も必要となり、ヒトへの外挿性も単剤よりもより難しくなることから、専門家と相談しながら進めることが望ましい。
③既に市販されている薬剤との併用で進める場合には、その薬剤を販売している製薬企業との共同研究を進めるのが良い。
④上市されていない(臨床開発がなされていない)薬剤同士の併用薬開発は基本的に不可能である。
nice to have
併用療法データを可能な範囲で収集する
①まずは単剤での用量反応性や最大薬効について評価を行い、単独でどの程度の有効性を期待できるのか早期に手応えを掴んでから、併用の検討に入るのが良い。
②既存薬とは異なる作用プロファイルを有するため、併用療法が有効となる可能性がある。既承認薬との組み合わせが、既存の組み合わせと比較し、どのようながんであれば有効性が高いか。既存治療方法と差別点を見出せると良い。従って、上市されている治療薬(抗がん剤、免疫チェックポイント阻害薬や血管新生阻害剤など)との併用により、転移性のがん種などに対する治療効果増強が示されると有望なシーズとなりうる。薬剤ポジショニングまで考察できているとなお良い。 -
Q起業して薬を作る際に考慮することは?>全モダリティ共通の回答A企業
nice to have
起業は可能だが、問題は資金調達、医薬品製造であるく
①出資者が見出せるのであれば、スタートアップを立ち上げるのが良いのは、言うまでもない。ただし、起業のタイミングと体制(人材)は見極める必要がある。また、起業した場合、ベンチャーキャピタル(VC)など複数の会社に権利が分散するのでパートナリングを考える企業としてはやりにくい面もある。
②製造については、製造受託会社(CMO、CDMO)も増えているが、安定供給、品質確保、副作用対応などを考えると、アカデミア単独での上市は難しいため、この点からも起業を行い、VC等からの資金を調達する必要性がある。
③起業をしても大学が知財を保有し続ける場合は、アライアンスは難しさが増す。大学側との権利の整理が重要である。
⑤臨床開発(医師主導治験)
-
Q
企業導出を進めるために、企業がアカデミアに期待していること>全モダリティ共通の回答
A企業導出
nice to have
各種試験データ収集については企業と共同で進める
①臨床試験に入るために必要な試験を各種ガイドライン(ICH M3など)を参照しながら試験パッケージ案(薬物動態、安全性)を策定する。
②標的分子の妥当性を証明する生物実験データ、薬効試験データ(in vitro、in vivo)、各種薬物動態試験及び安全性試験(in vitro、in vivo(げっ歯類、非げっ歯類の2種))、化合物の物理化学的評価(安定性など)が一般的には必要になる。しかしこれらは専門の部署を構えている企業が頼りになる。
③単独で臨床研究を実施する予定が無い限り、製薬会社と共同で進めるのが好ましい。 -
Q治験をスムーズに進めるために>全モダリティ共通の回答A規制対応
nice to have
規制対応についても早めに企業に相談する
①規制対応及び共同研究時のデューデリジェンス(適正評価)に備えて、ばらつきの少ない系の構築と再現性の確認、各種生データの確実な保管には留意する必要がある。
②薬物動態の評価やGLP対応の毒性試験実施など、前臨床試験として薬事的に必要な評価はアカデミアには対応が難しいので、早めに製薬会社に相談し、全体の課題等を把握するのが良い。
⑥知財取得
-
Q
知財を取得する際に考慮すべきこと>全モダリティ共通の回答
A知財戦略
need to have
先に学会や論文発表しないように注意する
①学会や論文として特許出願より前に公開された発明は原則として特許を受けることはできないので留意が必要(自己発表後1年以内の出願については、新規性喪失の例外規定の適用を受けることが可能)である。
②どのタイミングで出願し公表するかなどの戦略も必要になるため、知財戦略は、所属機関の知財担当部署、先生がパートナーとなる製薬企業に相談して決めた方が良い。 -
Q
知財を取得する際に考慮すべきこと>低分子に対する回答
A知財戦略
need to have
知財化のタイミングは早すぎると却って危険であり、化合物の合成展開方針が固まるなど候補の確度が高まってから出願する
①知財化は早すぎると商業化できてからの保護期間が短くなる。著しく競合が予想される場合を除いて、通常は臨床試験開始前後など開発候補が見出せる確度が高まった段階での知財化が一般的である。
②特許は戦略なしに慌てて取ると後で足かせにもなるので注意が必要である。排他性の高い化合物の構造や設計になっているか知財専門家の目も通して慎重に出願する必要がある。
③周辺化合物の範囲などは導出先との相談になる。
④特許出願のタイミングは、通常、1) 他の研究機関の参入を防ぐ目的でどのタイミングが良いか 2) 開発に成功した場合上市後の独占期間がどれだけ確保できるか、といった観点で判断する。
⑤協業などを考慮される際には、その前にビジネス交渉の根拠の一つとして権利化を進めるのも一つのやり方である。特許出願は、企業と共同研究を組む際の有力な武器になる。
⑥出した特許にデータを追加できる期間は1年間なので、最終的な化合物に対する合成展開方針を決め、さらに強力な阻害剤が得られるのはいつの時点になりそうかなどを考慮する。データ追加できる期間を過ぎると、新規特許が必要となり、過去の特許に対し新規性・進歩性の主張が必要となる(活性の低い化合物の構造を先にクレームした特許が、後に最終医薬品となる化合物の特許出願の足かせになる)ことに留意しなければならない。
⑦わざわざ早く特許を出して競合状態(出願1年半後に構造が公開となり、競合が入ってくる)を作る必要もない。特許に記載した化合物から、特許に抵触しない化合物を作り上げるのは、製薬企業のメディシナルケミストの力をもってすれば容易である。
nice to have
公開済みの公知化合物に対して最適化後の出願の場合には、効力の大幅な改善を示す必要がある
①物質特許を出願可能だが進歩性の明示が必要であり、in vitroでの効力差としては、それぞれの企業の考え方や、創薬標的によっても異なるが、数倍から10倍以上の改善が必要と考えられている。
②知財(物質特許)の進歩性を主張する際、例えば、薬効用量の低下(低用量で効果を示す)で進歩性を示すには、低用量化によるメリットを納得できるように説明する必要がある。例えば、毒性軽減などで進歩性を示すには、臓器内濃度(例えば中枢移行性など)だけでは不十分で、臓器内濃度が毒性の有無に直接どのような影響をあたえるかを納得できるように説明する必要があるため、一般的には拒絶される場合が多い。
nice to have
出願国によっては権利化の条件が異なることに注意する
物質特許の場合、出願国によっては開発化合物の実施例が含まれていないと権利化(開発化合物)が認められない場合がある。その場合(開発化合物を実施例に含めた場合)、出願特許が公開されると開発化合物が公知となり競合にさらされることになるため、引き続き物質特許の出願を継続する場合の特許戦略としては開発化合物の防衛特許的な出願(他社に特許を取らせないことが目的の出願。但し自らも特許を取ることが難しくなるため、引き続き物質特許の出願を継続する場合には望ましくない)になる。もしくは公開前ならば比較試験は必要ないが、出願から公開までは1年半しかない。
nice to have
特許のクレームは可能であれば優先権主張で広くする(初回の出願では、範囲を絞ったクレームに留めて早期に出願し、優先権主張までに実施例を追加してクレームを拡げる戦略が望ましい)
①基本的な発明の出願後に、その発明と後の改良発明とを包括的発明としてまとめた内容で、国内優先権の主張を伴う特許出願をすることができる(先の出願後1年以内)。ただし、後の出願の請求項に係る発明が、「先の出願の当初明細書等」との関係において、新規事項の追加されたものとなる場合には、国内優先権の主張の効果は認められない。
②後日特許抜けをされないという観点では、できるだけ網羅的に化合物を合成・評価して特許を出願するというのが業界の標準的な考え方である。自分たちが出願した先願によって後日自分たちの特許出願ができなくなるリスクもあるためどの時点で物質特許出願をするかは難しい課題である。その意味では合成展開を強力に進められる企業との提携は有効であるが、知財の専有は困難になるという面も注意が必要である。
nice to have
コンセプト特許、用途特許、物質特許など様々あるため状況に応じて出願タイミングを検討する
①コンセプトが独創的で有益であればコンセプト特許として、当該メカニズムの実施例(ツール化合物を含む複数の手法でのPOC;proof of concept)を複数用意して出願し、開発品はツール化合物から新規性・進歩性・有用性(発明3原則)のあるモノを創出して物質特許を出願する(後半は導出先の企業の役割だが、コンセプト特許で出願すると、ハードルが高くなり導出困難となるリスクもある)。
②標的分子の用途特許は物質特許出願時にクレームとして立てて同じ特許に含めて出願することも可能である。
nice to have
知財調査は競合状況次第にはなるが高頻度に実施する
①知財部が簡易調査としてシード・リードが出た時点で実施し、開発品が得られた時点でフルの徹底した調査する。また、合成担当の研究者はデータベースを駆使して競合品の公開情報調査を日々調査した方が良い。
②市販のデータベース(特許出願や臨床試験、学会発表などに関するデータベース)では設定したキーワードに関して毎月レポートをメール送付してくれるサービスがある。
nice to have
競合状況が厳しい場合は早期に出願する
①知財は製品保護を目的に出願することが通常であるため、開発候補が見出されたタイミングに出願判断されるのが良い。競合が多い領域ではより早期の段階での取得も必要である。
②企業では開発候補化合物が出た段階で物質特許を第1国出願する。その後1年間でその開発品を守る化合物群を合成しクレームを広げて、第2国出願(国際出願)をする。競合が激しい場合は、リード化合物の取得後、開発化合物は決定していないがこの延長上に開発品が出ると確信できた時点で第1国出願することも稀にある。
③特許の第2国出願(一般的にはPCT出願)に関しては、どの国に出願するかに関する方針を決めておく必要がある。出願国を絞るか広く出願するか。また各国移行時に、翻訳版の提出が必要な場合もあり、費用はかなりかかる。
④ただし、プロトタイプで特許を取得した場合に、後に見出された開発候補化合物の新規性/進歩性が主張できないと企業としては事業化に踏み切れない困った状況になるので注意が必要である。
nice to have
競合状況が厳しくない場合は出願のタイミングをできるだけ後ろ倒しにする
①どの程度その化合物の物質特許有効期間が残っているかは企業としてシーズを判断する場合、重要な要素となる。極めてユニークで競合がない場合は、非臨床試験や臨床試験に用いる原薬をCMOなどで外注する場合は、外注前に、その周辺の構造も含む形で物質特許を出願するのが良い(上市後の特許有効期間をできるだけ長く確保するため、出願時期は遅いほど良い)。
②化合物の物質特許の出願をいつ実施するかに関しては、標的メカニズムと競合薬次第である。競合が少ない場合は、開発化合物を決定し、非臨床試験の実施が決まってからの時点で出願するのが物質特許の期間を最大限活用できる。非臨床試験で問題が発生した場合にも取り下げも可能である(出願から1年半以内)。
③知財戦略はポリシーによるが、臨床試験に入れると確信できるモノがとれた段階が良い。 -
Q知財を取得する際に考慮すべきこと/企業導出を進めるために、企業がアカデミアに期待していること>核酸医薬に対する回答A優位性・DDS
nice to have
核酸医薬の差別化ポイント及びデリバリーの課題克服につながる戦略を示す
①特定のがんに対しての局所集積性を示すデータ並びに当該核酸医薬が他の類薬、治療薬に比べ明確な安全性もしくは有効性での差別点があり、物質もしくは用途特許など排他的な特許成立があると、企業導出に繋がりやすい。
②狙っているがんへのデリバリーが難しいところが多いため、肺がん、すい臓がん、大腸がん等の固形がんへのデリバリーについては局所デリバリーを達成するためにDDS(drug delivery system)技術を有する研究機関・企業とコラボを検討することが望ましい。
③核酸医薬品(ASO、siRNA)の排他性のある物質特許の取得は難易度が高い場合には、DDSやフォーマットによる知財戦略も検討する。