創薬企画・評価課 新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業における平成28年度課題評価結果について
平成29年11月
国立研究開発法人日本医療研究開発機構
戦略推進部感染症研究課
平成28年度「新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業」の事後評価結果を公表します。詳細は各項目をご覧ください。
事後評価
1.事後評価の趣旨
事後評価は、研究開発の実施状況、研究開発成果等を明らかにし、今後の研究開発成果等の展開及び事業運営の改善に資することを目的として実施します。
新興・再興感染症に対する革新的医薬品等開発推進研究事業(以下、本研究事業)では、評価委員会を以下の日程で開催し、本研究事業における事後評価の評価項目に沿って、評価対象課題別に書面審査にて事後評価を実施しました。
2.事後評価対象課題
3.事後評価委員会
開催日:平成29年1月13日
4.事後評価委員
5.評価項目
- 研究開発達成状況について
- 研究開発成果について
- 実施体制
- 今後の見通し
- その他事業で定める事項
- 総合評価
6.総評
本研究事業では、感染症から国民及び世界の人々を守り、公衆衛生の向上に貢献するため、感染症対策の総合的な強化を目指します。そのために国内外の感染症に関する基礎研究及び基盤技術の開発から、診断法・治療法・予防法の開発等の実用化研究まで、感染症対策に資する研究開発を切れ目なく推進することとしております。
本研究事業事後評価結果について、平成28年度における評価対象課題を実施内容に基づき大きく以下のように分類(①感染症サーベイランス、病原体データベース、感染拡大防止策等の総合的な対策に資する研究、②ワクチンの実用化及び予防接種の評価に資する研究、③新興・再興感染症の検査・診断体制の確保に資する研究、④感染症に対する診断薬・治療薬の実用化に向けた研究、⑤新興・再興感染症に対する国際ネットワーク構築に資する研究)し、分類別の評価を記載いたします。
①感染症サーベイランス、病原体データベース、感染拡大防止策等の総合的な対策に資する研究
感染症サーベイランス、病原体データベース、感染拡大防止策等の総合的な対策に資する研究では、期待以上の成果が認められた課題と、期待通りには進展が得られなかった課題が認められました。高い評価を受けた課題として、感染症対策に資する数理モデル開発に向け全国レベルの研究体制を活用して重要な研究成果を得るとともに、当該分野に携わる若手研究者の育成等にも寄与したと判断されたもの、薬剤耐性菌の制御に向けたサーベイランスの実施及び薬剤耐性プラスミドデータベース等の構築に寄与したもの等が含まれていました。一方で、評価が低い課題には、基礎研究分野での重要な成果が認められたものの、計画された研究の一部について進捗が当初計画の目標にはやや到達していないとの評価がなされたものがありました。
②ワクチンの実用化及び予防接種の評価に資する研究
ワクチンの実用化及び予防接種の評価に資する研究では、高く評価された課題とやや評価が低い課題が認められました。高い評価を受けた課題として、マウスノロウイルス受容体同定やマウスノロウイルスVLP(ウイルス様粒子)の構造解明等基礎研究と、下痢症ウイルスサーベイランスに基づく流行予測プログラム開発等応用研究の両方で重要な成果が認められたもの、国のインフルエンザ対策に重要なワクチンの医師主導治験により免疫原性及び安全性に係る重要な知見を得たと評価されたもの等がありました。一方で、やや評価が低い課題として、ワクチン開発に係る重要な論文発表等の成果については高く評価されたものの、ワクチン交差免疫に対する検討が十分ではないとして総合的には低い評価とされたものや、ワクチン開発計画の進捗にやや停滞があり当初期待された研究開発代表者・分担者間の連携による相乗効果もあまり得られなかったと評価されたものがありました。これらの課題について一部で期待を下回る部分はあったものの、ワクチン開発に係る重要な成果の論文発表等の成果が認められ、総合評価として当初目的に対する一定の成果は得られたとの評価がなされました。
③新興・再興感染症の検査・診断体制の確保に資する研究
新興・再興感染症の検査・診断体制の確保に資する研究では、評価結果に差は認められましたが、大半の課題で概ね当初の計画に沿った研究が遂行されたと評価されました。高い評価を受けた課題として、原虫及び寄生虫に対するサーベイランス・薬剤耐性モニタリング体制の整備に資する質の高い成果が得られ、薬剤耐性機構解明や診断法開発等の研究においても着実な成果が認められると評価されたもの、HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)感染の診断法の標準化を図り国の感染症対策の強化に資する成果を得るとともに、国内のHTLV-1感染の疫学として水平感染に関する重要な知見が得られたもの等がありました。
④感染症に対する診断薬・治療薬の実用化に向けた研究
感染症に対する診断薬・治療薬等の実用化に向けた研究では、概ね期待通りの成果が得られたと評価されました。その中でも高い評価を受けた課題として、昆虫媒介ウイルス感染症に対する基礎及び応用研究が大きく進展し、論文発表、診断法・治療法・ワクチン等の開発に大きな進展が認められたものがあり、今後も継続的な検討による成果を期待したいとのコメントがありました。
⑤新興・再興感染症に対する国際ネットワーク構築に資する研究
新興・再興感染症に対する国際ネットワーク構築に資する研究に該当する課題は、全20課題を通じて最も高評価を受けました。当該課題では、3年間の研究開発実施期間を通じて個々に重要な論文発表等の成果が認められるとともに、論文等には直結しない部分でも日本とアジア地域の複数の国立感染症研究機関等との研修・交流等による連携強化の取組みが進展する等、当初の目的にかなう十分な成果が得られたと評価されました。
以上、平成28年度の事後評価対象課題については、①~⑤の分類全体を通じて概ね期待通りの成果が得られたと評価されました。今後も本研究事業の方向性として、重要性が高まる我が国の感染症対策に資する研究を、基礎研究・応用研究の両面から、短期的・長期的双方の視点に立ち推進していきます。また、引き続き、将来の感染症研究を担う若手研究者の育成、刻々と変化する感染症の状況に柔軟に対応する幅広い研究開発を推進していきます。
最終更新日 平成29年11月24日