創薬企画・評価課 未診断疾患イニシアチブ(IRUD)

IRUDロゴマーク画像臨床的な所見を有しながら通常の医療の中で診断に至ることが困難な患者さん(いわゆる未診断疾患患者)は、多数の医療機関で診断がつかず、原因もわからず、治療方法も見つからないまま、様々な症状に悩まされています。

日本医療研究開発機構(AMED)が研究班と二人三脚で進める未診断疾患イニシアチブ Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases(IRUD) は、こうした未診断疾患患者さんの情報共有と診断確定、そして治療を見据えた病態解明やシーズ創出を目的として、「難病克服プロジェクト」のもとで平成27(2015)年から推進する研究開発プログラムです。

IRUDの推進には、日本全国の患者さん、ご家族、医師、医療スタッフ、研究者、研究支援者、助成機関、行政等多くの関係者の協力、さらに国際連携が必要です。そのためAMEDは

  • 臨床情報及び必要に応じて遺伝学的解析結果等に基づき総合的に診断を行う体制
  • 国際連携可能なデータベース構築等による積極的なデータシェアリングを行う体制

を構築し、厚生労働省が進める難病に対する医療提供体制や自治体の難病対策とも連携するなど、研究開発推進のための環境を整備しています。

IRUDで扱う研究開発における考え方

IRUDに関係する研究班・拠点病院・協力病院等は、以下の共通認識を持って、全国規模での診断体制構築、未診断疾患の原因遺伝子の同定や疾患概念の確立、データベースの構築等を推進します。

  1. 希少・難治性疾患分野での医療行政との連携を図ります
  2. 多様な疾患に対応可能な、全国で自律的に機能する体制の構築を目指します
  3. 地域の診断連携を意識した研究を推進します
  4. マイクロアトリビューション(microattribution)*を意識した研究を推進します
  5. 既存研究と連携し、新規疾患概念の確立等未診断疾患研究を継続します
  6. データ共有を進めます
* マイクロアトリビューション(microattribution)
研究を進めるにあたって、患者さん、ご家族、かかりつけ医や大学病院等の医師、看護師、研究者、遺伝カウンセラー等の診療スタッフや研究支援者等、その研究に参加する全ての方がそれぞれ不可欠な貢献を行っていることに着目して、その貢献を重要視し、敬意を表する考え方です。
IRUDの成功には、参加される全ての関係者の協力が必要不可欠であると考えています。

IRUDの成果
~全国の先生方、コメディカルスタッフ、患者さんとそのご家族のご協力によりIRUDは成り立っています~

未診断疾患イニシアチブ(IRUD) 6年間の実績

37のIRUD拠点病院を中心とする450病院からなるネットワークを活用し、これまでに9,500以上の症例(家系)の相談に対応

未診断疾患イニシアチブ(IRUD) 拡大する病院ネットワークが果たす役割

※画像をクリックすると拡大することができます。

IRUDの現状と成果は、AMEDの取組の中でも大きく紹介されています。難病・未診断疾患の確定診断には、患者さんが訴えている症状(表現型)を丁寧に把握するとともに、ゲノム解析によって得られた多数の変異情報の中から病気の原因に関わる変異(遺伝型)を特定することが必要です。表現型と遺伝型のマッチングによって確定診断に至るため、より多くの方々のご協力によって、いままで未診断であった患者さんたちにも正確な診断がより早くもたらされます。
このようにIRUDの研究は、ご参加頂いている患者さんとそのご家族、全国の先生方のネットワークにより成功を収めて参りました。皆さまのご協力に心から感謝の意を表しますとともに、これからもAMEDはIRUDのネットワークが発展するように支援して参ります。

本件に関するお問い合わせ:IRUDコーディネイティングセンター(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)

日本の未診断疾患イニシアチブ(IRUD):診断を求める終わりなき旅の終焉を目指して

このたび、平成27(2015)年のAMED発足当初から推進してきたIRUDの方針について執筆した論文(方針書)が、人類遺伝学分野の国際専門誌「European Journal of Human Genetics」に掲載されました。方針書では、個別研究の成果ではなく、難病研究の歴史など我が国の強みを踏まえた独自の「仕組み作り」について報告しています。詳細は以下のリンクをご覧ください(方針書は英語で記載されています)。

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診断体制

※平成29(2017)年2月現在。最新・詳細の体制についてはIRUD 未診断疾患イニシアチブ・ポータルサイトをご参照ください。

広報素材

IRUDを支えるAMEDの取り組み

平成27(2015)年度

  • 米国 Undiagnosed Diseases Network(UDN)との合同会議を AMED内で開催し(10月)、情報共有を図りました。
  • IRUD全体にかかわる運営方針等について検討・決定機能を担う「IRUD推進会議」を立ち上げ(12月)、IRUD企画書を研究班と共に作成しました。
  • 国際希少疾患コンソーシアム(IRDiRC)に加盟し(7月)、これ以降、国際連携のための最先端の情報を入手しつつ、IRDiRCの運営面でも継続的に貢献し存在感を発揮しています。(関連記事
  • 国立大学病院長会議、日本私立医科大学協会、医師会等関係団体に紹介し、かかりつけ医への広報も行いました。

平成28(2016)年度

  • IRUD企画書を公開し(4月)、これに基づき研究班とAMED間で理念の共有、認識の共通化を図りました。
  • Undiagnosed Diseases Network International(UDNI)の東京会議に参加しました(11月)。これ以降、本会には積極的に参加し、研究上の国際協力のほか、AMEDの国際戦略とも関連する国際的な活動にも取り組んでいます。
  • 二期にわたる全国調査をとりまとめ、IRUD推進会議で報告しました(2月)。IRUDの対象となりうる未診断状態にある患者数が数万人規模と推定されることなど、その調査結果は施策検討に活用されています。(関連記事

平成29(2017)年度

  • 小児IRUD研究班と成人IRUD研究班を統合し(4月)、統合プロトコールを作成し(4月)、中央治験・倫理審査委員会(CIRB)により条件付承認取得に貢献しました(2月)。
  • IRUDの成果を発展させる研究IRUD Beyondを立ち上げました(6月)。
  • 日本医師会のご協力のもと、「日医総研ワーキングペーパー」でIRUDを紹介していただきました(8月)。(関連記事
  • 国際希少疾患コンソーシアム(IRDiRC)総会を AMEDで実施し(11月)、IRUDの成果を共有しました。(関連記事
  • 海外の未診断疾患データベースのプラットフォームMatchmaker Exchangeに参加し、データシェアリングを進めるとともに、その意義の普及にも努めています。(関連記事

平成30(2018)年度

  • 公募・採択された解析センターや診断拠点をIRUDコーディネーティングセンターのもとに連携させるオールジャパンの研究体制を構築しました(4月)。
  • 拠点病院・協力病院の設置を進め、診断連携体制は全国438施設(7月時点)に達しています。

未診断疾患イニシアチブの成果を発展させる研究(IRUD Beyond)分野

希少・未診断疾患患者に対して、包括的診断体制の全国配置、次世代シークエンサーを含めた革新的検査の利活用、国際連携可能な臨床情報データベースの確立による診断確定を目指す基幹研究プロジェクトとして、未診断疾患イニシアチブ(IRUD:Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases)を推進しています。

その成果のさらなる発展を目的とした新たな研究分野として、「未診断疾患イニシアチブの成果を発展させる研究(IRUD Beyond)」が設定されました。

未診断疾患イニシアチブの成果を発展させる研究(IRUD Beyond)分野

研究班一覧

実施中の研究開発課題 ※平成30(2018)年12月現在

IRUD

「未診断疾患イニシアチブ [Initiative on Rare and Undiagnosed Disease (IRUD) ]:希少未診断疾患に対する診断プログラムの開発に関する研究」
研究開発代表者:水澤英洋(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)
※平成30(2018)年度から実施中;課題ウェブサイト(IRUDポータルサイト)

IRUD Beyond

【Beyond diagnosis】「IRUD-Pで発見された希少疾患原因遺伝子のゲノム編集技術を用いた分子病態解明と治療・予防法の探索」
研究開発代表者:松原洋一(国立研究開発法人国立成育医療研究センター)
※平成29(2017)年度から実施中
【Beyond diagnosis】「ゲノム編集技術を用いた希少難治性神経発達障害の原因遺伝子変異ノックインマウスモデルの確立およびその解析による病態解明と新規治療薬探索」
研究開発代表者:才津浩智(国立大学法人浜松医科大学)
※平成29(2017)年度から実施中
【Beyond diagnosis】「脳クレアチン欠乏症の創薬・治療エビデンスの創出」
研究開発代表者:大槻 純男(国立大学法人熊本大学)
※平成30(2018)年度から実施中
【Beyond diagnosis】「CDC42阻害剤による武内・小崎症候群の治療法の開発」
研究開発代表者:武内俊樹(学校法人慶應義塾)
※平成30(2018)年度から実施中
【Beyond genotyping】「モデル動物等研究コーディネーティングネットワークによる希少・未診断疾患の病因遺伝子変異候補の機能解析研究」
研究開発代表者:井ノ上逸朗(大学共同利用機関法人情報・システム研究機構)
※平成29(2017)年度から実施中;課題ウェブサイト(J-RDMM)
【Beyond borders】「希少・難治性疾患、未診断疾患領域における研究開発成果の国際共有を目指す調査研究」
研究開発代表者:川本篤彦(公益財団法人先端医療振興財団)
※平成29(2017)年度から実施中;課題ウェブサイト(Orphanet Japan)課題ウェブサイト(Nan-Byo Research)

終了した研究開発課題

IRUD

「原因不明遺伝子関連疾患の全国横断的症例収集・バンキングと網羅的解析」(小児IRUD)
研究開発代表者:松原洋一(国立研究開発法人国立成育医療研究センター)
※平成27~28(2015~2016)年度実施(平成29(2017)年度は成人IRUDへ統合)
「成人における未診断疾患に対する診断プログラムの開発に関する研究」(成人IRUD)
研究開発代表者:水澤英洋(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)
※平成27~29(2015~2017)年度実施

お知らせ

過去のお知らせ

平成29(2017)年度

2017年12月26日
【平成30年2月9日開催】平成29年度合同成果報告会「疾患克服への革新と創造」開催のお知らせ
2017年11月16日
IRDiRC Consortium Assembly(国際希少疾患研究コンソーシアム加盟機関総会)をAMED本部で開催しました
2017年9月1日
AMEDシンポジウム2017開催レポート:成果報告(1)IRUD(未診断疾患イニシアチブ))(1~4)
2017年8月23日
IRUDが難病指定医研修テキスト(日医総研ワーキングペーパー)で取り上げられました
2017年7月6日
AMEDによる未診断疾患イニシアチブ<IRUD>の「仕組み作り」を国際誌で報告、更なる国際連携の出発点に—診断がつかないまま悩んでいる難病等の患者さんに光を—(プレスリリース)
2017年5月12日
スペイン王国のレティシア王妃陛下が、AMEDの主導するIRUD研究について、慶應義塾大学医学部を視察されました

平成28(2016)年度

2017年1月11日
【平成29年2月10日開催】難治性疾患実用化研究事業、免疫アレルギー疾患等実用化研究事業(免疫アレルギー疾患実用化研究分野)2016年度合同成果報告会「革新への挑戦—疾患克服を目指して—」開催のお知らせ

平成27(2015)年度

2015年12月15日
【平成28年2月12日開催】平成27年度AMED6事業合同成果報告会「疾患克服への挑戦 ライフサイエンスの現状と未来への展望」開催のお知らせ
2015年8月26日
日本の機関として初めて国際希少疾患研究コンソーシアム(IRDiRC)に加盟
2015年7月30日
全国の診断が困難な患者さんの診断に取り組む体制(IRUD)を構築—かかりつけ医と高度専門医療機関の協働により病態解明へ、22日キックオフ—

お問い合わせ先

宛先 創薬事業部 創薬企画・評価課
住所 〒100-0004 東京都千代田区大手町1-7-1
Tel 03-6870-2226
E-Mail irud”at”amed.go.jp ※E-mailはアドレス”at”の部分を@に変えてください。
備考
研究内容に関することは、IRUD 未診断疾患イニシアチブ・ポータルサイトをご参照ください。

最終更新日 令和5年1月18日